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Louder Than Words : DRAWING AND MANUAL Documentary Series vol.2 Masaki Miyamoto 前編 | 語ること、語らせること


突然ですが、青年期の私のドキュメンタリー体験といえば、「ザ・ノンフィクション」。それまでの日本のドキュメンタリーは歴史的事象や人物、事件や事故を追う分析系が主流で、2000年以降に始まる「プロジェクトX」や「情熱大陸」といったいわゆる現場系ドキュメンタリーへの潮流となります。その狭間、1995年に始まった「ザ・ノンフィクション」は主題は同じくしているものの、毛色の異なる、いわゆる日の当たらない社会の歪みで生きる人たちの生活を、日曜の昼過ぎに淡々と流していました。そこには当たり前のはずの生活に奮闘する人たちのドラマと、決して簡単には拭えないであろう現代日本を取り巻く社会問題が垣間見えました。番組鑑賞後、私の頭は悶々とし、答えのないだろう疑問で溢れ、その体験は今でも忘れられず残っています。
DRAWING AND MANUALドキュメンタリーシリーズ第二弾は、ポールダンサーやスウェーデンのLGBTQパフォーマンス集団など、いわゆるマイノリティと呼ばれる人たちを撮影し、映像に映し出すことで光を当てることをライフワークとしている宮本正樹の仕事について訊いてみます。

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宮本 正樹 | Masaki Miyamoto
https://www.miymas.org/
https://vimeo.com/user2455532/review/355305618/62a9d778f1 (Reel)
1984年神奈川県生まれ。2011年 米Emerson College卒。ドキュメンタリー表現を得意とし、広告のみならず番組・MV制作など多く手がける。様々なジャンルのスペシャリストを追う自主制作映像も発表している。主な仕事に、NHK Foorin楽団 ドキュメントシリーズや「JAPANGLE 」、藤巻亮太 「Summer Swing」MVなど。


現場でしかみえないものを伝えたい

"A PORTRAIT OF POLE DANCE DUO - MANJYUSHAGE"

プライベートワークのひとつ、国内外で受賞多数のポールダンスユニット「曼珠沙華」のドキュメンタリー。海外では競技種目として認知度も高くエンターテインメント性の高いダンス競技として人気のあるポールダンスだが、日本ではまだ「夜の街」のイメージが強い。

「練習場所へ撮影に呼ばれたのがいわゆるSMクラブだったんで驚きました。世界大会で幾度もチャンピオンになっている人たちですら、東京でパフォーマンスできるロケーションがいわゆるクラブやバーばかりだと訊いて、ポールダンスを取り巻く状況が垣間みれました。取材の前には必ずリサーチをしますが、それだけだとみえてこないものが現場ではみえてきます。企画段階でもそれをしっかり念頭に置くようにしています。」

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官能的なダンス、性的イメージが強いポールダンスのドキュメンタリーだが、映像からは敢えてネガティブイメージ打破の主張は伝わってこない。ただ淡々と楽しくて楽しくて仕方がない、ポールダンスに取り憑かれた二人の女性の美しい肉体とそれに打ち込む姿が映っている。

「取材前に電話などで事前インタビューを重ね、綿密に方向性を考査します。基本的には短尺、大体5分くらいと決めて構成も考えてから撮影に臨んでます。もちろん現場に行って初めてわかることも多いので、編集時には現場の空気感を大切にします」


弁論部で、そして海外生活で培ったもの

大学で3年間、英語弁論部に所属。社会問題をテーマに7〜8分のスピーチをしていたと同時に映画制作の授業で脚本の書き方やストーリー制作を学んだという。元々外国語学部の英語学科でジャーナリズムのクラスを多く選択していたことから、自然とドキュメンタリー映像制作へとつながった。

「高校で留学したウィスコンシンの学校が貧しい地域の人を全額無償で受け入れるクリスチャンの学校で、生徒の半分以上がいわゆる貧困層のマイノリティ。学校行くかギャングになるかの二択みたいなところで、問題を乗り越えようとしてる人たちの人間ドラマに惹かれ、問題を伝えることの意義を感じました。日本の大学を卒業後、ボストンにある映像に強い学校の大学院へ進学し、コミュニケーションやマーケティング・リサーチ、トリートメントの作り方などを学びました」


そして、現場で培ったこと

帰国後2年は週末に映像制作。DRAWING AND MANUAL入社後はアシスタントディレクターとして多種多様な現場に行きプロの粘り強さや真摯な姿勢、現場での心遣いや、クライアントとの良質な関係性をつくるコミュニケーション能力を学んだという。

DRAWING AND MANUALで初めて監督したドキュメンタリー映像は北陸新幹線開通記念に催された、当時では日本最大級のプロジェクションマッピングイベントのメイキング映像。DRAWING AND MANUALで企画から携わった2年目のこの年から、聴覚障害者にもイベントを楽しんでもらおうと、振動で音を伝える機器「Mute Converter」が開発された。石川県立ろう学校で繰り返し行われた実際の対象者とのフィードバック、人の声だけで構成された音源の制作や地元加賀友禅特有の色味を映像で再現する様など、この企画に盛り込まれたたくさんの工夫が4分の映像にギュッと詰め込まれた。

この映像を観た21_21 DESIGN SIGHT(*) プログラムマネージャーが次の企画展「活動のデザイン展」で、「修復と改良」を奨励し人々の身の周りの問題を解決していくFIXPERTSというプロジェクト内でぜひ展示して欲しいと連絡をしてきた。

* 21_21 DESIGN SIGHT(トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト)
http://www.2121designsight.jp/
六本木の旧防衛庁跡地に建てられた複合施設「東京ミッドタウン」の敷地内に、安藤忠雄の設計によって建てられたデザインの展示施設。2007年3月30日、東京ミッドタウンのオープンと同時に開館した。
デザインには、ものごとを見極める力、洞察力が欠かせない。21_21 DESIGN SIGHTは、日常的なできごとやものごとに改めて目を向け、デザインの視点からさまざまな発信、提案を行っていく場として、開館した展示施設である。


Nabowa | 夢の欠片 feat. TOSHI-LOW (Official Music Video)

初のクライアントワークでのドキュメンタリー映像は京都を拠点とした4ピースのインストバンド、NABOWAのMusic Video。同じドキュメンタリーでもメイキングやインタビュー収録には撮り回しの良いズームレンズが重宝されがちだが、Music Videoではシネマライクな画を撮りたかったので、短焦点レンズの Carl Zeiss Planar T 1.4/50 を選んだ。アウトドアイベントでのライブとメンバーのプライベート映像を密着して撮影するため単焦点でも比較的重量の軽いこのレンズが現場に馴染んだ。ボケ足も美しく柔らかい質感の映像は京都の情景やアウトドアの緑に溶け込み楽曲に寄り添った。


続く。


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