食べる機能の獲得が難しい子ども❺
過敏って?
食べる機能を獲得することが難しい子どもたちについて、なぜ食べる機能を獲得するのが難しいか❶から❹まで書きました。
食べる機能の獲得が難しい子ども❶で書いた、過敏、について書こうと思います。以下、食べる機能の獲得が難しい子ども❶で書いた、過敏についてを引用します。
ここで言う過敏は口の中に入る触覚に対しての過敏です。過敏かそうでないかの見極めは非常に難しく、いつ誰に触られても触ったところを中心に緊張していく、力が入ってしまう様子を子どもの食べることに関わる人は過敏と呼んでいます。私が触ると力が入ったりひどく嫌がるけれど、親御さんが触ると何ともない、と言う様子なら過敏とは呼ばずに心理的拒否と呼んでいます。
過敏があると口の中に入った食べ物の固さを見極める事が難しく、固さに応じた動きを引き出す、食べる機能を獲得する事が難しくなります。また、顔まわり口周りに過敏があると、口の使い方を身につけていくいわゆる訓練を行う事が難しいのです。そのため過敏がある場合は、脱感作と言う方法で過敏を取り除きます。脱感作については、日本摂食嚥下リハビリテーション学会訓練法のまとめ、をご覧下さい。(食べる機能の獲得が難しい子ども❶から)
過敏と心理的拒否の見極めは難しいです。過敏は、いつ、誰が、その場所を触っても触った所を中心に緊張が出るのが過敏。
朝触ると力が入る(緊張が入る)けれどお昼頃は大丈夫、私が触ると緊張が出るけれど、保護者の方が触ると平気、だと心理的拒否。
触ると力が入ったり緊張するので、ずっと過敏を取るための練習(訓練)脱感作をしていて、なかなか食べる練習に進むことができなかった方にお会いしたこともあります。
食べる練習を始めよう、摂食指導を始めよう、摂食嚥下リハを始めよう、というときに過敏の有無、を調べます。過敏の探し方は、以前は手の平でお子さんの手をしっかり触り、そこを中心に緊張がでなければ、手首に近い腕(前腕:手首から肘までの部分)、肩に近い腕(上腕:肘から肩までの部分)、肩、首、顔まわり、口周り、口の中は指の腹でしっかりと触って、触った場所を中心に緊張が出たらそこが過敏のある場所、として脱感作という過敏を取る練習をしていました。脱感作の方法も過敏がある場所の一つ手前からしっかり触って触ることに慣れる、という方法です。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(食べること飲み込むことが難しい患者さんについて研究をして発表したり考えたりする学問を行う集まり)では、この過敏を探す方法と脱感作の方法では、最初に手を触ると、過敏なのか手の平をぎゅーっと握る反射なのか見極めが難しいなどの理由で、過敏の探し方や脱感作の方法を図の様に変更しました。
過敏の探し方:手の平で肩から触ります。触るときは手の平でしっかりと触り、揉むようにマッサージしたり、トントンたたいたりはしません。肩がなければ腕、腕がなければ手、と触っていきます。次に肩、首、顔、口周り、を同じ様に手の平でしっかりと触って過敏があるか探します。口の中(主に歯ぐき)は指の腹でしっかり触ります。キュッキュとこすったりしません。触ったところを中心に緊張する、力が入るところが過敏のある場所です。
過敏の取り方:見つけた過敏のある場所の一つ前に触った場所(顔に過敏があれば首から)手の平でしっかり触ります。過敏があるとお子さんは力が入ったり、ぶんぶんと身体を動かしたりしますが、慌てて手を離さずに力が緩む、身体の動きが止まるまで触り続けます。手のひらを当てたまま、口の中なら指は当てたまま、でこすったり、動かしたりしません。動きが止まったら手のひらや指を静かに離します。
過敏は、触られることに慣れる、ということでなくなっていきます。腕時計をつけたときや眼鏡をかけた時には、着けている感じがわかりますが、着け続けるとつけていることを忘れてしまいますよね、それと同じことを目指します。
正しく触っていけば短い時間でなくなっていくことが多いです。なくならない場合は、方法を確認してみましょう。しっかりと、小動物を抱くくらいの力で触ります(恩師の金子先生は鳩を抱くような力で、とおっしゃいましたが私は鳩が苦手なので、猫を抱く様な力で触ります)。
過敏があるのか、脱感作の方法は正しいか、専門家に確認することも大切です、自己流での判断はなかなか難しいのです。
参考文献
金子芳洋編:食べる機能の障害、医歯薬出版
日本摂食嚥下リハビリテーション学会HP 訓練法のまとめ