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『日常と非日常を行き来する』参加者レポート(4)

レポート作成者:アラキミユ

 演劇の舞台は観に行くけれど、演劇はやったことがない。けれどやってみたい。そんな気持ちがあって今回WSを受講した。
今回は作家・演出家・演者を体験するという内容で進行がされていった。


【シアターゲーム】
⚫︎同時進行型ゲーム
関連するワードを一人ずつ述べていく。順番に述べ自分の発した単語と、その順番を記憶する。を4セット行う。
記憶力と、空間把握、タイミング読みのマルチタスクだった。
同時多発のシアターゲームは自分の所属するカンパニーでもよく行なっているが、「言葉」のみがあちこちで飛び交うタイプは初めてだったので、かなり頭はパニックだった。
自分の発した言葉と、誰かが発した言葉がごちゃ混ぜになって、何をやっていたのか忘れてしまうことが何度かあった。
また、その同タイミングでぬいぐるみを投げているので、このぬいぐるみが、なんの単語をリレーするものだったか、を一瞬考えて止まってしまうような時間があって、余計に脳みそがバグった。


【ワーク①】
⚫︎台本作り
台本の穴埋めを行う。Aが何を求めているのか、そしてCが何者なのかを埋める。
数分間で、登場人物たちの関係性をかんがえて、書き出すのは本当に大変だった。
AとBの関係も、人によって考えることが異なるから、「あぁ、この人はこんなことを考えているのか、なるほど、家や職場の近くにワゴンカーの飲食店があるのかな、、」などと、台本を読み取るWS参加者の生活も見えるような気がした。

⚫︎台本チェンジ
作った台本を実演、だと思っていたら、別グループの台本を実演することになる。
さっきまで妄想していた人間関係が一旦ぶち壊れる。うわあああ!、、できるのか?と思った。
自分たちが想像していた関係性の面影があるなかで、新しい関係(しかも本当の正解はわからない)を想像することはなかなか難しかった。
Cよ、お前は一体誰なんだ!? とこちらが問いたくなる気分。
答えが見つからない中で、頑張ってキャラクターを作り上げてみる。

⚫︎実演・鑑賞
同じ台本でもシチュエーションが全く異なる作品になった。
・犯人逮捕の直前
・離婚をしたいという告白
・AV男優のオファー
9割8分のセリフは同じなのに、一部が変わるだけでどこまでもシチュエーションが変化する。
自分たちが台本を書いた「AV男優のオファー」は、自分たちの想像以上の作品になっていた。
Cの正体が誰かの母親になっている、という設定。
漠然としていた【母親】という存在が、【人生経験豊富なグイグイくるタイプのいそうでいない母親】になっていた時は本当に驚いた。
なるほど、文章上で【母親】だったり【AV撮影】というのを理解するのではココは足りないのか、と知った。人間のバックグラウンド、その上での性格、「そういう奴だったら、こうするかもね」「こういう感じのお母さんあるある」みたいなものを濃縮させた濃ゆいキャラクターが爆誕している状態が尋常じゃなくかっこよかった。
また、小道具はおにぎりに限ったものではなかった。空間とそこに置かれているものをうまく利用して、そこがあたかもその現場なんだ!見せるのが演劇か、と学んだ
例えば、ダンスでは【お茶の間】を建設して踊ることはあんまりない(バレエの幕物なんかはあるかもだけど)。【お茶の間の雰囲気】を掻き立てるダンスはあるかもしれないけれど。
人々がいて、個人個人が生活をしている。そのなかで、どんな関係が構築されているのか、というのをダンスでは曖昧にするし、視覚化すること自体が必須ではないから、生活空間を作り出すという演出が私にはまだできなかった。


【ワーク②】
⚫︎少し長いテキストに穴埋めをする
今回は主な役割は決まっていて、先生の行動を穴埋めする、というワークになっていた。
【お客さんにその関係性が見えるように】構成する、というのが今度のワークのミソだった。
【分かりやすく見せる】と【チープになりすぎないの隙間を取る】ことってなんて難しいのだろう、と思った。
ダンス公演でも、これはまた明らかに明示させるようなことはあまりないので、その間をつくる方法が、私はまだうまく思いつけない。

⚫︎立ち稽古
短い分数の中で立ち稽古を行う。
女子高生の日常会話なので、即興で場当たりなどをしたが、個人的に感動したのが日常の仕草の中に演劇・舞台らしい効果を使用することだった。
椅子の上に登り、高さに差をつけることでその場の空気感を変化させ、空間を広くする。このような演出があったときにとても感動した。
ああ、これはダンスの舞台とも通じる演出だ、、!しかも映像ではなく、舞台演劇だから利用できる効果だ、、!と思った。
今まで、日常生活(教室内)を再現しようとしていた舞台から、教室という意識が外れ、役と会話だけに集中する瞬間。そんな効果があるのかもしれないと思った。

⚫実演・比較
相手の作品と比べながら実演をする。
相手グループの作り出すキャラクターと、こちらグループのキャラクターがこれまた全く異なるのが本当におもしろい。同じ会話でも、イントネーションと目線、動きが違うだけで言葉の意味合いが変化してくるような感覚がある。

踊りももちろん、それぞれの踊りの癖があり、それを少しずつ修正していくのだが、言葉や視線、キャラクターのフィックス、そして修正の方がはるかに難しいんじゃないか、、?と思った。
自分の記憶やイメージから生まれた女子高生像と、演出家、または他の演者が想像する女子高生像は絶対に異なる部分がある。その中で、全員が納得する、そして自分も納得する女子高生を体に宿す、というか、役に入る、というのはとんでもない至難の業ではないだろうか、、
今回は立稽古も短時間なのでそこまでの修正はしなかったけれど、長編作品、大きな公演であれば絶対にそれが必要になるだろう。役者さんって職人だな、、すごいなあ、と脱帽する。


【まとめ】
 今回のWSを経て、少しだけではあるが役者体験ができたことが本当に嬉しかった。
 こんなにたくさんの役者さん、演出家さんと集まって作品を一緒に作ることができ、とてつもなく贅沢な時間を過ごさせていただいたと思う。
 今まで踊りしかやったことがなく、大学を卒業してから初めて演劇の舞台を観た。観劇するのが本当に楽しくて、現在は踊りの舞台だけでなく、演劇の舞台にいつか立ってみたいと思えるようになった。そう思えるようになったのは、舞台を上演する方々の絶え間ない努力と緻密な稽古のおかげなんだろう、と改めて感じた。
 だからこそ、簡単に「演劇がやってみたいんだよねえ」と軽々しく口にすることはできないぞ、思えた。私はまだ観ることしかできない。実演するには、演劇の知識と技量が少ない。少しずつではあるが、WSをはじめとする演劇に対する稽古・勉強(?)を進め、いつか演劇の舞台にも立てるように日々過ごしていきたい。

【その他】
演劇役者のみなさんって、日々どんな稽古、自主練習をしているんでしょうか?
踊りはレッスンに通ったり、筋トレをしたりしますが、、、
そんなところも気になるので、そんな人のための稽古講座、なんてのも開催していただけると嬉しいです。

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