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『技のデパート』参加者レポート(7)
レポート作成者:谷田部美咲
WS名:『技のデパート』
講師:石崎竜史さん
参加日:2023年10月27日(金)15:00~19:00
当日参加人数:10名(+界隈の2名)
●参加の理由
今回の「ドラマチック界隈 #ex 」は、これまで実施した全5回の総集編。実施概要には、「過去5人のファシリテーターの方々から学んだアイディアを強引に『技』として名付け、シェアし、次々に試着のように実践してきます」とあった。
これまでも演劇のWSに参加する機会は多々あり、それを自分の「技」(ここでも強引に技、と呼びます)として応用していきたいと思うものの、劇団に所属しているわけでもないのでアウトプットの機会がなくモヤモヤしていた。そのため、他人の「技」を応用したときに、「技」はどのように形を変えていくのか、または変わらないのかを観察したく、参加を決めた。
あとシンプルに、以前参加した#4池田亮さんの回がとてもとても面白かったことも参加の理由のひとつ。WS内容もさることながら、ドラマチック界隈がとてもフラットなWSの場を生み出していたため、また#4の直後には次の参加日を検討していた。
ちなみに、竜史さんが「#ex(イーエックス)」と言うたびに少し恥ずかしそうにしていたが、レポートを書くに当たって調べてみたところ、exにはextra(余分の、追加の)という意味の他にもexecutive(方針を策定する)やexample(例え)、exercise(練習)を表すこともあるらしく、解釈がさまざまなことも含めて良いなあと思った。
●メニュー概要
・一言自己紹介
・漫才で自己紹介
・ボールまわし
・劇場の観察
・シーン作りと発表(同テキストを使用し、合計3回の発表)
2人組になり、ひとつのテキスト(竜史さん書き下ろしのワンシーン)からシーンを立ち上げる。
※WSに没頭しすぎてメモ忘れが多く、抜けているメニューがあるかもしれません。
●感想
自分達でシーンを立ち上げる、という最終ワークに向かって、たくさんの技を手に入れながら進むことができた、充実した4時間だった。
技の効果をまとめると以下の通り。(個人的な分析です)
・役を演じようとする時の表出度合いの変化(メモ:人前に出る時に、状態が変わる。この時の役=自分、だけど、素ではなく、自分と役の中間地点。)
→演じる際の、表出の変化の種類(メモ:感情を作る表出、動作表現による表出の変化、相手との関係性による表出の変化)
→演じる際の、場所の確認(メモ:自分がいる場所や空間を無視しない)
→シーン作り①(メモ:テキストから広がる表現を体感)
→シーン作り②(メモ:関係性の変化による表出の変化)
→シーン作り③(メモ:上記で体験した技の効果を自由に取り入れ、最終発表。★多分これがラスボス★)
WS終了直後の感想は「演出脳を鍛えた〜!」だった。
俳優に求められる力は様々だけど、今回のデパートで扱っていた技の種類は「演出系」の技だった。5人の技の担い手が演出家だったから当たり前ではあるけれど、テキストからのシーンの立ち上げを実践すると、やはり俳優にも演出的視点や思考が必要不可欠であると痛感した。
そして、このような技の数々は、演出をつける際の大きな手助けとなる。
シーン作りが停滞してるな…と思ったそんな時。例えば、今回使用した技のひとつ「関係性を変える」を使ってみる。テキストから親しい間柄だと想像していたけれど、実はすごく仲が悪いのかも?とか、恋人かと思っていたけど親子だったら?とかとか。自分が想定した範囲をぴょんと越えるサポートを、その技はしてくれるかもしれない。
個人的に一番の収穫は、即興演劇をしなくても演出脳を鍛える技がたくさんあると知ったことだった。
即興劇には様々な効果があるが、演出力(ここでいう演出力は、発想力という意味合いが強い)を鍛える目的で、即興劇のワークを使用する機会にたくさん出会ってきた。即興劇を用いることで、テキストから離れた自由度の高いシーン作りができる。しかし、テキストから離れるからこそ、演技のよりどころが自分自身になってしまい、結果として自分の発想の範囲を超えた演出を自分自身につけることがとても難しいと感じていた。また、十分な思考を通さないまま、その場の勢いで出た言動の中には、演じているその人自身の本音や思想が見えてしまうこともあり、そのような「無理やりさらけ出される感」にある種の暴力性を感じてもいた。(繰り返すが、演出力を鍛えるという目的での即興劇ワークについて個人的な感想。頭を柔軟にして演劇を楽しむという点で、即興劇はとても効果があると思うし、そういう即興ワークは見るのも楽しい)
…ということで、即興劇を用いずとも、効果的に演出脳を鍛える経験を今回のWSで体験できたことは、非常に良い学びになった。
講師の竜史さんは、WS進行中、各メニューの前後にどの講師の技を用いたか、それがどのような意図で使用されていたか、今回はどういう意図で取り入れたかを説明しており、技を伝授してもらった講師へのリスペクトを感じた。
唯一参加した#4池田亮さんのワークも一部取り入れられていたが、竜史さんが作ったWSのなかにぴったりとはまっていたため、他の講師の技も含めてツギハギ感は全く感じなかった。これが技を使うということなんだなぁとすごく勉強になった。
これでシーズン1は終了になるということですが、ドラマチック界隈のシーズン2を心から待っています。そして、自分もドラマチック界隈のような風通しの良い演技研究の場を作っていけるように頑張りたいと思います。
ありがとうございました!
そして、ここまでご精読ありがとうございました。