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極私的オタク論〜カラクリとの出会い

COLOR CREATIONという、男性5人組ヴォーカルグループを知っているだろうか?

2017年8月にインディーズデビュー、2018年5月にメジャーデビューを果たした、新進気鋭のアーティストである。ファンの間では略して「カラクリ」と呼ばれている。

カラクリに出会った日は、今でもはっきりと覚えている。2018年10月30日だった。LINE MUSICを開いた時に偶然見つけ、試しに聴いてみたのだ。そして衝撃を受けた。

初めて聴いた曲は、発売直後だった2ndシングルの1曲目「I'm Here」だった。アップテンポともバラードとも言い難く、それでいて絶妙に元気が出る曲調と、メンバー5人の圧倒的な歌唱力。一瞬にして心を奪われた。
数回リピート再生したのち、配信されている曲すべてを聴いた。どれも僕好みの曲ばかりだった。「久しぶりに出会った」。そう感じた。

カラクリは男性5人組のヴォーカルグループだ。
イケメン集団だが、俗に言うアイドルではない。
ダンスやパフォーマンスを披露したりはしない。
メンバー5人が、ただひたすらに歌い、ハモる。

メンバーは総じて、非常に高い歌唱力を誇る。
まさに歌で勝負しているアーティストなのだ

思えば、僕が男性アーティストにここまでハマったのは初めてのことだった。

僕が最初にハマったアーティストは、Every Little Thingだった。小学生の頃に観ていたドラマ『シバトラ』の主題歌『あたらしい日々』をきっかけにハマり、それ以来、ELTの歌は常に僕を励まし、そして癒し続けてくれた。
だが、ELTが絶大な人気を博した世代は僕よりも一回りほど上。同年代の友達はまったくと言っていいほど、ELTの曲を知らなかった。だから僕は、その喜びを誰とも共有することなく、ELTの曲を聴いていた。

中学生の時は家入レオやTaylor Swiftの曲を、高校生の時はmiwaやSEKAI NO OWARIの曲をよく聴いた。これらのアーティストは同世代にもファンが少なくなく、友達とその話をしては盛り上がっていた。

だが、僕はこの頃から、あるコンプレックスを抱えるようになった。

それは、同世代の友達みんなが知っているような流行りの音楽を全然知らないということだった。

友達とカラオケに行っても、友達の歌う曲が全然わからなかった。
必ず誰かが歌うような、RADWIMPSやBUMP OF CHICKEN、back numberの定番曲を知らなかった。
邦ロックをまったく聴かなかった。
アイドルもほとんどわからなかった。
K-POPもちっとも知らなかった。

周りは盛り上がっているのに、自分だけついていけない。
でも、定番曲を知らないことがバレて仲間外れにされるのが怖いから、つい知ったかぶりをしてしまう。

音楽の流行についていっているみんなと、ついていけない自分。
流行っている音楽の情報を集めるスキルが、自分には欠けているのだと思った。

好きなアーティストを聴かれても胸を張って答えられず、知ったかぶりばかりしてしまう。そんな自分が嫌だった。

つまり、僕はオタクが羨ましかったのだ。

僕にとってのオタクとは、自分の好きなことに関して、豊富な知識と無上の愛を持つ人間のことだ。

そしてオタクに必要な要素は2つあると、僕は考えている。
一つは、好きなことに関する情報の収集能力が高いこと。
そしてもう一つは、「自分はこれが好き!」と堂々と言えること。

当時の僕には、どちらの要素も欠けていた。

だがカラクリは、そんな僕をオタクにしてくれた。

カラクリと出会ってすぐに、僕はカラクリのメンバーすべてのSNSをフォローした。Instagramをまともに使いこなせていなかった僕がインスタライブなるものを観たのも、カラクリの配信が最初だった。初めてCDのリリースイベントなるものに行った時は、女性ファンがほとんどの中、にわかファンでありながら男一人で来ている自分が気恥ずかしくて、すぐに退散してしまった。けれど、自分が少しずつ変化していることを、確かに感じていた。

カラクリと出会って2ヶ月が経った12月に、初めてライブに行った。それは、カラクリがメジャーデビューして最初のワンマンライブでもあった。始まる前、「ノリについていけなかったらどうしよう・・・」という不安があった。だが彼らの生の歌声を聴いて、そんな不安は吹き飛んだ。抜群に上手い歌を耳にして、背筋が何度も震えた。やっぱり自分はカラクリが好きなんだと確信した。

新年が明けて早々に、僕はもう一度リリースイベントに足を踏み入れた。そして、ライブで特に好きになったメンバー・TAKUYAとの個別握手会にも参加した。女性ファンがずらりと並んでいる列に男一人で並んだのだから、緊張感は相当であった。僕の順番が回ってきた時、TAKUYAも少しびっくりしているようだった。けれど、「男の子が来てくれて嬉しい!ありがとう!」と両手で握手をしてくれた。その言葉が純粋に嬉しくて、帰り道にその喜びを噛み締めた。そして、そんな「オタク」な自分がまた嬉しくて、もう一度喜びを噛み締めた。

それ以来、僕はカラクリのオタクを続けている。
SNSはこまめにチェックしているし、メンバーが出演したテレビ番組も録画して保存してある。イベントやライブにも何度か行っている。
もちろん、僕よりもはるかに熱狂的にカラクリを応援しているファンはたくさんいらっしゃるはずだ。

それでも僕は、自分がカラクリのオタクであると、胸を張って言える。

カラクリを好きになってから、周りの人と音楽の話をする機会が増えた。
それは、自分の推しのアーティストについて堂々と語れるようになったからだ。
おかげで、逆に相手が推しのアーティストを語ってくれるようにもなり、僕が知る音楽の世界はぐっと広がった。
COLOR CREATIONの名の通り、カラクリはモノクロだった音楽の世界を、色とりどりに飾ってくれたのだ。

だから今では、友達が紹介してくれたアーティストの曲は必ず聴くようにしている。

また新たな推しのアーティストと出会えることを期待して。


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