京都芸術大学オンライン説明会で講師が凍りついたの巻
デザイン科合同入学相談会でのことである。
事前に質問を受け付けていたので、いくつかの質問をメールで送っていた。
なにしろ芸大の授業って全くわからないことだらけなので、聞きたいことはくだらないことからわたしにとってだけ大事なことまで山ほどある。
自分の質問がいきなりパソコンの画面でテキスト化されてドーンと出たのには少々驚き、おもはゆい気持ちになるもんであるが、そのひとつにグラフィックデザインコースへの質問として
「卒業制作をせずに1年でやめてもよいのでしょうか」(3年編入の場合)
というのがあった。
わたしにとっては素朴な質問である。
だって職業デザイナーになりたいわけではなく、ポートフォリオも必要ない。
ただ他のレクチャーでは学べない、大学ならではの知見を学び、スキルを身につけたいのであって、、、
などともっともらしい理由はあるが、卒業制作にのぞんで卒展などということろに格調高く飾られるシロモノができる自信がないというのも大きい。
「お目汚しではございますが」とおずおずと差し出す自分の姿を想像するだけで穴があったら(作品を)放り込みたい。
今までのみんなの卒業制作の作品を見ると自分が卑屈になるのも致し方ないくらい立派なのである。
そんなわけで
別にそれでもいいんじゃないかと軽い気持ちでした質問がいま、
ドーンと画面に映し出され、それを見た講師が細くて眠たげだった目を見開いて
「こ、これは想定外の質問ですね、、」と声を絞り出すように唸ったのである。
しかも、その説明会に参加されていた他のコース、ランドスケープや建築デザインや空間デザインの講師の方々からもどよめきが、、、
「これは、、理由を聞いてみたいですな」といかにも重鎮風の講師のひとりが言い、進行役の人が乗らなくてもいいのに
「そうですね、この質問された方いらっしゃいますかー?」
と煽ってきた。
要するに「こんなバカな質問するのは誰じゃい、出てこんかいうりゃ」と広島だったらこう言われてるようなもんである。
柚月裕子の「孤狼の血」の世界である。
一同シーン。。
ここで名乗り出る勇気があったらあたしはもっと何者かになっていたに違いない。
え?あたし何かマズいこと言いました?
この妙な空気感を置き去りにして、知らん顔を決め込んだ。
だが、他の質問が続くうちに自分が世紀の卑怯者呼ばわりされてるような気がしてきた。一応両親には厳しく育てられたつもりである。卑怯者の汚名を被ったままではご先祖様にも申し訳なく死ぬに死ねない。
ああ、屠殺場に連れて行かれる豚の気分だ。
「他にオンラインでも質問のある方いらっしゃいませんか?」を合図にわたしは勇気を出して手を挙げた。他の質問をし、そのついでに、という体裁で
「えー先ほどの卒業制作をせずに1年でやめてもよいのかという質問は実はワタクシです」と名乗り出たのである。
講師は「え!?」という反応とともに「ほおう」という顔になった。
驚きから聞いてやろうじゃないかという挑戦にも似た顔になった。
わたしはさっき書いたようなことを一生懸命説明した。そして職業デザイナーのためにあるような「グラフィックデザインコースの敷居の高さ」みたいなことも正直に伝えた。
わたしのような志の低い、というかブログのバナーや年賀状程度しか活用例がなさそうな人がこのコースを受けてはいけないんじゃないか、、そんな小さな不安がこのような不躾な質問をしてしまった要因なのですよ、と何なら泣いて見せてもよかったくらい。
最初はこの質問に凍りついていた講師の方々は、内心呆れていたのかもしれないが口々に「卒業生制作をやってこそ大学で学んだ意味がある」「卒業制作こそが楽しいのに、いや『たのくるしい』んだけどそれがいいんですよ」と力説した。
『くるたのしい』んじゃなくって?と聞き返そうとしたがやめておいた。
講師として、生徒を卒業させるという崇高な使命の柱をハナからへし折ったこの女が恨めしかったに違いないし、他の入学志願者が同じように思ったらどうするんだという思いもあったであろう。。
ここら辺でこの質問はお互い忘れた方がいい、と咄嗟に判断した。
結果的には答えはその人の判断による、なんですがね。
かくしてわたしはオンライン説明会にドン引きの爪痕を残したまま退出した。
今年の4月からわたしはイラストレーションコースを専攻する。
でももしイラストレーションコースを無事卒業することができたら、このグラフィックデザインコースにも挑戦してみたくなるかもしれない。
なんだかそう思えてきた。
グラフィックデザインコースの説明会でのいい言葉。
「欲しい未来は自分でつくる」
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