見出し画像

福永裕基 ルーキーが見せた「中日に必要な素質」【2023ドラゴンズ個人成績分析 - 06】

皆さんこんにちは。ドラスタ | Dragons Stats (@dragons_stats) という名前で中日ドラゴンズの試合データなどを発信しています。プロ野球がより一層面白くなるようなデータを分かりやすい形で提供できるように頑張ります。良かったらぜひフォローして頂けると嬉しいです。

Follow me! --> https://twitter.com/dragons_stats

個人成績分析企画の第6弾はオールドルーキー・福永裕基選手です。プロ1年目のシーズンは、同じくルーキーの村松選手とセカンドのポジションを分け合いながら多くの期間を1軍で過ごしました。本記事では福永選手のルーキーイヤーについて分析していこうと思います。

本記事のデータは、主にNPB公式および日刊スポーツ様から集計しています。独自集計のデータがほとんどですので、一部実際の数値とずれている場合があるかもしれませんがご容赦ください。もし見つけたら教えて頂けると助かります。



2023シーズン成績まとめ

福永選手の2023シーズン成績は以下の通り。

福永裕基 2023シーズン主要スタッツ

打率や出塁率などは、リーグ平均ぐらいの成績が残せています。1年目からこれだけやれれば十分と考えて良いのではないでしょうか。春先はかなり良い成績を残していたのですが、疲れがあったのか夏場以降で調子を落としてしまいました。来季は1年通してどれだけ調子をキープできるかが課題となりそうです。

ストレート/変化球別スタッツ

続いて、シーズン成績を対ストレートと対変化球に分解してまとめました。

福永裕基 対ストレート/対変化球別スタッツ

特に目立つのは、対ストレートの成績です。Whiff%(空振り率: 空振り数/スイング数)はリーグ平均を大きく下回る一桁台の数字ですし、打率・長打率・OPSすべての数字が高水準です。福永選手はストレートに相当強い打者と言えます。

一方で、変化球への対応は課題と言えます。Whiff%はリーグ平均程度の数字ですが、打率・長打率・OPSいずれもリーグ平均を下回っています。この課題を克服できれば、福永選手は大きく飛躍する可能性があるのではないでしょうか。

ストレートにめっぽう強い

ストレートに強いというデータをもう少し深堀りしてみましょう。対ストレートのゾーン別打率を、リーグの右打者の平均と比較してみます。

福永裕基 対ストレート ゾーン別打率
リーグ右打者平均 対ストレート ゾーン別打率

ほとんどのゾーンでリーグ平均を上回る打率をマークしていることが分かります。アウトローは若干苦手にしていますが、他のゾーンであればストレートは大好物といった感じです。

この高打率の要因となっている要素について探ってみましょう。下の図は、対ストレートのゾーン別Whiff%です。こちらもリーグの右打者平均と比較して示します。

福永裕基 対ストレート ゾーン別Whiff%
リーグ右打者平均 対ストレート ゾーン別Whiff%

ほとんどのゾーンで福永選手はリーグ平均に比べてWhiff%がかなり低いことが分かります。特にストライクゾーンではほとんど空振りをしていません。インコースに至っては一度も空振りをしていないようです(笑)確かに試合を見ていても福永選手はインコースの捌きが非常に上手い印象を受けましたが、実際にデータにもそれが現れています。いや、このデータめちゃくちゃスゴイですよね?(笑)

変化球には弱い?

一方で課題は対変化球にありそうでした。では、変化球のうち結果球になったボールの打撃結果をまとめたピッチチャートを見てみましょう。

福永裕基 対変化球 打撃結果ピッチチャート

主にアウトローゾーンでの三振が多いようです。スライダーや落ちるボールへの対処が課題と言えるでしょう。このあたりはルーキーの多くがぶち当たる壁なので、仕方ないと言えば仕方ないですね。来季以降どう対処してくるか楽しみです。

ところで、本当に変化球が「打てていない」のでしょうか。ストレートと同様に、変化球についてもゾーン別Whiff%をリーグ平均と比較してみます。

福永裕基 対変化球 ゾーン別Whiff%
リーグ右打者平均 対変化球 ゾーン別Whiff%

データを見てみると、ストライクゾーンに限って言えば実はリーグ平均よりも低いWhiff%を示しています。要するにゾーン内に来た変化球は問題なくコンタクトできているわけです。すなわち、課題は変化球を捉えることと言うよりは、ボールゾーンに対する選球眼と言うべきでしょう。

課題は得点圏

最後に、得点圏と非得点圏に分けてスタッツを比較してみます。

福永裕基 ランナー状況別スタッツ

Whiff%やK%の数値がほとんど変わらないにもかかわらず、得点圏打率は.100と非得点圏を大きく下回る値になっています。この原因の一つにBABIPが挙げられます。BABIPとは、フェアゾーンに打球が飛んだケースのみを母集団として算出した打率です。このBABIPは多くの場合で.300前後に収束することが知られています。ところが福永選手の場合、対象の打席数が少ないとはいえ.116はあまりにも低すぎです。要するに「運が悪い」わけです。これは沖縄でお祓いしてもらった方がいいかもしれません。

ただし、単に運が悪いだけと片づけてしまっていいのかについては一考の余地があります。試合を見ていると、チャンスの場面において福永選手が投手のストレートに対して明らかに振り遅れのタイミングでバットを出してファールにしているシーンを何度も目にしました。これは福永選手以外の右打者(木下選手など)でも良く見られたシーンでもあります。これはあくまで推測ですが、福永選手の得点圏BABIPは、「過度な右打ち信仰という間違ったチーム方針によって弱い打球しか飛ばせなくなってしまった」という要因も含まれているのではないでしょうか。ストレートに強いという彼の良さが消されてしまったわけです。

福永選手は普通に振ればストレートを捉える能力に優れ、かつ広角に強い打球を飛ばせるバッターなので、チャンスでも自由に打たせてあげて欲しいですね。

まとめ

ここまでご覧頂きありがとうございました。
福永選手の2023シーズンをまとめると、

  • ストレートにめっぽう強い

  • 変化球への対応が課題

  • ストレート、変化球によらず、ストライクゾーン内のボールに対するコンタクト能力が高い

  • 得点圏での打撃が課題、とりあえずお祓いに行こう

こんな感じでしょうか。

2023シーズンは中盤以降失速した感が強いですが、それでもセカンドの中では屈指の打撃成績を残しています。ドラゴンズはチーム全体としてストレートを打てていないので、福永選手のような打者はチームにとって稀有な存在と言えます。

にもかかわらず、2024シーズンにおけるセカンドのレギュラーの筆頭候補として福永選手の名前がなかなか上がってこないのは疑問です。

秋キャンプあたりからサードを守ることが増えているので、コンバートの可能性が高いのかもしれません。彼のように打撃に優れる選手がセカンドを守ることのアドバンテージは大きいと思うのですが…

というわけで、福永選手が「打てるセカンド」として台頭してくるのを楽しみにしつつ、キャンプやオープン戦を見ていこうと思います。

もしこの記事が面白かった!という方やドラスタを応援してくださる方は、フォロー・お気に入り・拡散等して頂けるとすごく励みになります。多くのファンの方の議論のタネになればいいなと思っています。

Xのフォローもぜひお願いします! -> @dragons_stats

いいなと思ったら応援しよう!