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柳裕也 7色の変化球を操る男【2023ドラゴンズ個人成績分析 - 13】

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個人成績分析の第13弾は心のイケメン・柳裕也投手です。
2023シーズンは総合的に見ると素晴らしい1年だったと思います。前半戦は特に立ち上がりに苦しむことも多かったのですが、後半戦以降は支配的な投球を続けていました。今回は、柳選手が好成績を残すことができた理由に迫っていきたいと思います。

本記事のデータは、主にNPB公式および日刊スポーツ様から集計しています。独自集計のデータがほとんどですので、一部実際の数値とずれている場合があるかもしれませんがご容赦ください。もし見つけたら教えて頂けると助かります。



2023シーズン成績まとめ

柳投手の2023シーズン成績は以下の通り。

柳裕也 2023シーズン主要スタッツ

Whiff%(奪空振り率: 空振り数/スイング数)、K%(奪三振率)、WHIP等の数値はリーグ平均と同程度ですが、被打率や被OPSなどはリーグ平均をアウトパフォームしています。

打たせて取るタイプの柳投手にとって、BABIP(フェアゾーンの打球のみを母数として算出した打率)がリーグ平均を下回っていたことは大きかったですね。運や味方の守備にも恵まれていたということです。

球種別スタッツ

次は球種別のスタッツを見てみましょう。なお、被OPSについては、リーグの先発右投手の平均をカッコ内に並べて示しています。

柳裕也 球種別スタッツ

ストレートを含め、なんと8種類の球種を操っていました。まさに7色の変化球というやつです。

注目すべきは、そのほぼすべてでリーグ平均よりも良い被OPSを記録していることです。すべての球種が一級品と言っても過言ではありません。

1球種だけ、シュートはリーグ平均よりも被OPSが悪くなっていました。ただし、この球種についてはシーズン途中から投球数を減らしていたようです。(詳しくは後述します。)

各球種の対左右別Whiff%

それぞれの球種をもう少し深堀していきます。下の表は、各球種の対左右別のWhiff%です。

柳裕也 各球種の対左右別Whiff%

いくつか左右でWhiff%の数値が異なる球種がありますね。特にスライダーやカットボールは対右打者で、フォークは対左打者で有効なボールになっているようです。右投げの柳投手の場合はいずれも打者から逃げていくような変化になります。これらの球種はウイニングショットになりうるボールです。

そこで、これらの球種について、対左右別に打撃結果のピッチチャートをまとめてみました。まずはフォークから。

柳裕也 フォーク 打撃結果のピッチチャート [対右打者]
柳裕也 フォーク 打撃結果のピッチチャート [対左打者]

投球数が少ないためはっきりとした傾向はつかみにくいですね。ただ、対左のフォークはアウトコースにかなり良くコントロールされているように見えます。これがWhiff%の数値の違いに出た可能性はあります。対左の方が投げやすいボールなのかもしれません。

続いてスライダー。

柳裕也 スライダー 打撃結果のピッチチャート [対右打者]
柳裕也 スライダー 打撃結果のピッチチャート [対左打者]

こちらは割とはっきり傾向が見えますね。対右のスライダーはアウトコースに良くコントロールされており、多くの三振や凡打を奪っています。

一方、対左ではスライダーをバックフット(インローのボールゾーン)に投げ込むことは難しく、真ん中あたりのボールが多くなっています。その結果、ホームラン含む長打が多くなってしまっています。対左のスライダーは要注意のボールと言えそうです。

これらのデータから、柳投手は対左右で強みとなる球種が異なると思われます。ただし、球種の多い柳投手の場合他の球種で十分カバーできそうです。

投球割合の推移

では続いて、これらの球種をシーズン通してどのような配合で投げてきたのかを調べてみます。下図は、登板ごとの各球種の投球割合をプロットしたグラフです。

柳裕也 登板ごとの球種投球割合の推移

シーズン後半からカットボールの割合が跳ね上がっていますね。一方で、一つだけ被OPSの悪かったシュートはシーズンが進むにつれて割合が減っています。また、後半戦から新たにシンカーとフォークを投げ始めていますね。

後半戦から成績が大きく向上したことを考えると、これらの変更はかなり良い方向に影響していそうです。シュートについても完全に投げるのをやめたわけではなく割合を減らしただけなので、後半戦では「投げるタイミングや相手が分かってきた」ということかもしれません。

シンカー?フォーク?

併せて各球種の平均球速の推移を見てみます。

柳裕也 登板ごとの各球種の平均球速の推移

恐るべき球速の安定性ですね(笑)多くの球種を1年通して同じクオリティで投げ続けています。このタフさには脱帽するばかりです。

この中でやはり気になるのは、シーズン途中から投げ始めたシンカーとフォークでしょうか。シンカーを一時期投げていて、その後フォークに切り替わっています。そしてこれらの球種はほとんど球速帯が同じです。このことから、これらは本当は同じ球種を指しているのでは?と考えています。

柳投手のチェンジアップの握りはほぼシンカーらしいので、(本人はチェンジアップで「抜く」感覚が分からないらしく、シンカーの握りで「回転をかけて」打者のタイミングを外しているそうです)おそらく新たに投げ始めたシンカーは、水平方向の変化が比較的大きなフォークが「シンカー」と誤検出されたものと思われます。その後フォークに修正された、という流れではないかなーと予想しています。

こんなマニアックな話、誰が興味あるんだ?とは思いつつ、一応書いておきました。

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございました。
柳裕也投手の2023シーズンをまとめると、

  • 7色の変化球ほぼすべてがリーグ平均を上回る一級品

  • 対右打者はカットボールやスライダー、対左打者はフォークが有効

  • シーズン後半からカットボール増・シュート減・シンカー/フォーク追加で成績大幅UP

  • 実は6色だった?

こんなところでしょうか。

まあ普通に2024年もエース格の投球を見せてくれるだろうと思っています。23年はシーズン序盤に苦労しましたが、後半戦のパフォーマンスを1年通して維持することができれば沢村賞も見えてくると思います。今年は栄冠を期待したいですね。

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