こどものころのおはなし
私が小学校高学年のとき、我が家が新しくなることが決まった。
家が建ち、そこに引っ越すことになる。
「転校」の2文字が頭をよぎったとき、私は不安に包まれていた。
ちょうどその時期に見ていた戦隊ヒーローが
「海賊戦隊ゴーカイジャー」だった。
ゴーカイジャーの第40話「未来は過去に」
親の仕事の都合で転校を繰り返す少年に
ゴーカイシルバーの伊狩鎧がこう告げる。
『確かに自分じゃあどうしてもできない事もある。それでも自分にできる事を探してやってみれば、自分の明日位変えられる』
鎧自身も少年の頃は転校を繰り返していたが、
その度にたくさん友達ができたという。
鎧の言葉を受けて、少年はアメリカに転居する決意を固める。
鎧に救われたのは物語の中の少年だけではない。
決意を固め、前を向くことができたのは
視聴者である私も同じだ。
ずっと支えにして走り続けてきたのだ。
裏切られた気分だ。
たとえヒーローとしての姿が偽りであったとしても、他人を苦しめるような罪に手を染めてほしくはなかった。
伊狩鎧というキャラクターとの美しい思い出に
泥を塗られたような気がして悲しかった。
思い出は消えない。罪も消えない。
私が彼の明日を待つことはもうないだろう。