193DAY -2022奥多摩見聞録 其の5 -
3日目の早朝。自分は裏庭で草を抜く。一年の歳月が経ち、雑草が乱立する裏庭は、昆虫と湿気の宝庫と成り果てている。裏庭には、珊瑚荘の元所有者の一族の墓が立っているが、そこまでの道も、雑草によってすでに見えない。自分も奥多摩に泊まるスタッフとして、「彼ら」がかつて住んでいた珊瑚荘へ行けるようにしてやりたい。
作業は四時間ほど。焚き火周りも含めて行った。太陽が登ってしまうと、体感温度が跳ね上がる。そのため、できるだけ早い時間に行わねばならない。作業着と刈り込み道具、タオルを持ち、地面の草どもを薙ぎ払う。芝刈り機でもあればいいが、ガソリンがないので動かない。除草剤を使うと、周りの自然に影響する。人の手で、一本一本、「二度と生えるな」という思いを込めて抜いていく。
作業が終わって、汗だくの体をシャワーで流す。汚れ切った作業着を洗い、乾かす。今日もばっちしの晴天なので、すぐに乾くだろう。参加者の様子はというと、やはりこんな猛暑で数時間連続で勉強するのはきついのか、集中を切らしたやつがちらほらいる。仕方ない。自分もそうだった。
合宿で重要なことは、課題を終わらすことよりも、この経験自体である。だからと言ってやることをしないという意味ではないが、こうして自然のイントネーションが満ち満ちるこの環境で作業をする。こんな経験など普通学生ができることではないはずだ。その証拠に、彼らが発する音読の声や、じゃれ合う時の声は元気に溢れている。この貴重な環境に充実した気持ちを、感じることができる。
自分はもう疲れ果ててしまったので、もう帰るまでゆっくりする。だが参加者は勉強の疲れなど知るところなく、昼ごはんを待ち遠しく感じているに違いない。
昨日の午後の文章も載せる。(昨日投稿し忘れた。)
昼ごはんはカレーだった。全員舌鼓を打った。合宿の楽しみの一つだからである。朝ごはんから六時間以上経過して、生徒達の空腹は頂点に達していた。それだけに、およそ20分ぐらいで彼らは完食していた。
そして生徒達は、何よりも川に遊びに行くことが楽しみで仕方がないという様子だった。彼らは昼ごはんを食べ終わると、すぐに川に入るための服装に着替えた。「早く行くぞ!」という声が、合宿の中で放たれた声の中で音読の時並みに活気に溢れているようだった。
奥多摩メンバー御用達の河原は、広いスペースに恵まれ、川の水深も比較的浅く、対岸の岩から飛び込みができる。飛び込むところは、水流の影響でそこだけ水深が深い。川に遊びに行くときは、ほぼ全員が飛び込みをする。川の中は涼しく、この猛暑日が続く中では天国のような環境だ。
川から帰ると、全員川での活気が嘘のように萎びていた。全員畳に転がり、寝ているやつもいる。松永先生の差し入れのアイスを食べることで少し元気が出たやつもいたが、結局全員寝てしまった。
15時頃になって、勉強を再開する。一日のうち最後のラストスパート。これが終われば、美味しい晩御飯と焚き火が待っている。今日はスーパームーン。この天気もようなら、きっとすごい月が見えるだろう。