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おばさんだけど、シャーマンです: 龍神と私の物語 第11章

第11章  大きな呪い

「呪いを跳ね返すんだ。お前ならできる。」久しぶりに聞いた龍神の声だったのよ。「お前はトラップにも引っかかったし、大きな呪いも受けている。私を無視するのは良いが、自分を大切にしないのは違うぞ」

え? トラップに引っかかった? 大きな呪い? なんだろう…

足のために施術を受けに行った時に 思い出した事があったの。
いつだったか、この医院に入ってスリッパに履き替えた時に 足に糸のような何かに引っかかった気がして、その後遠くで鈴の音を聞いた気がしたのよ。でも「あれ?」と思って確認したけど糸ゴミもないし ましてやここのドアには鈴も付いてないから、「疲れてボーっとしてるんだなぁ、私」って そのまま気にしなかったのよ。
今日も院長先生の施術を受けながら、「そういえば、良く同じ時間帯に来ていた 若い女の子、この頃見かけないわねぇ。」「あぁ、あの子は転職しちゃった先生の追っかけだったんだよ。それもとてもしつこかったらしい。なんでも、『私は黒魔術をやっているから、あなたは私から離れられない』って、施術中に言われたららしいよ。彼は相手にしてなかったらしいけど、お母さんと揉めた理由のひとつかもね。」
あぁ、そうよね。もし、あれがトラップだったとすれば この医院をよく知っていないとできないトラップよ。私は黒魔術は知らないけど、基本 見えない世界の事、私が考えるのと同じような「意図設定」でエネルギーを使うとしたら、例えば意図付けを「彼とプライベートで仲が良い。彼が気を許している」等としていたとしたら、それは私は簡単に引っかかってしまう………。 でも、これぐらいのきっかけで、こんなに身体に支障が出るくらい悪さができるのかしら……。

夜、動かしやすくなった足で 犬のお散歩コースを以前回っていたのとおなじ、少し長い距離を歩いていた時、また、不意に太ももに鋭い痛みが走ったの。まるで全身を貫くかのような激しい痛みが一瞬で駆け巡り、その痛みと同時に、強烈な圧力が足を捉え、足元から全身が動かなくなった。「これは..何!?」
痛くて目を閉じた瞬間、頭の中に恐ろしい叫び声が響いた。「私から息子を引き離したねえ...!」その声は、執念と憎悪が凝縮されたようなものだった。同時に、私の視界の中に現れたのは、乱れた髪を振り乱し、憎悪に満ちた目でこちらを睨む女の姿。まるでメドウサのような恐ろしさだったわ。
「やっぱり彼の母親だったんだ!!」
そう思った瞬間、私の太ももには巨大な蠍の尾が深々と突き刺さっていたの。毒が熱を持って身体に入ってくるのがわかって、私は息もできないほどの痛みに苛まれた。意識が遠のきそうになる中、必死に心の中で叫んだわ。「私は屈しない...!私も子供を持つ母親よ!あなたの歪んだ愛情には決して屈しない!!」
その叫びと共に、突然私の背後から眩い青い光が溢れ出したの。その光は一瞬のうちにメドウサの姿を包み込み、彼女の怨念を打ち砕くように、勢いよく飛びかかったわ。光が彼女に触れた瞬間、彼女の叫び声が恐ろしいほどの苦痛を帯び、蠍の尾からも金属が軋むような悲鳴が響いた。世界がその叫び声に包まれ、私の中の全てが震えたわ。

光はさらに強く輝き、周囲を支配していた呪いの力を次第に消し去っていくようだった。どれほどの時間が経ったのか分からないがけど、気づけば青い光の中に立っていたのは私だけで、太ももにはまだ蠍の尾が刺さっていたのよ。しかし、その尾も手で引き抜くと、まるで幻のように消え去ったけど、現実に戻った時も太ももの激痛は残っていたのよ。

帰り道、足が動かないほどの痛みと腫れを感じながら、なんとかタクシーを捕まえて帰宅したの。その夜、無駄だと分かりながらも、太ももを冷やして眠りにつこうとしたけれど、痛みは深く、意識が朦朧とするほどだった。そんな中、再び龍神の声が聞こえたのよ。
「でかした。上手くやれた。呪いは消し去ることができた。」

その声は、私を優しく包み込むようで、深い安堵感が体中に広がり、ようやく私は、戦いが終わったことを実感できたわ。「あの青い光は…龍神だったのね」と、私は静かに、安らぎの中で眠りにつくことができたわ。

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