ヘッドフォーン

 弘法筆を選ばず。でも、気に入った良い筆で物を書くのはとても楽しいことだろう。

 妻の誕生日。僕の兄から僕の妻にヘッドホンがプレゼントされることになり、日本橋(大阪)のイヤホン・ヘッドホン専門店に夫婦で連れて行ってもらった。
 新品、中古、3000円台のエントリーモデルから15万円以上もする高級なものまでずらりとヘッドホンが並ぶ。ほぼ全て試聴可能で妻は持ち込んだ音源(スマホに入れた圧縮された曲)で聴きまくる。聞き慣れた曲で聴き比べた方が良いとの兄のアドバイスで、妻はファンであるCHAGE&ASKAの『DO YA DO』をサンプルに、店員さんにも相談しながら、店内を何度も往復し、様々なヘッドホンを試す。僕もちょくちょく聴き較べる。正直、言ってはっきりと何が違うとわかるほど僕の耳は良くない(itunesで圧縮された音源を僕の大したことないスマホで聴いているという限界もあるかも知れない)。でもそれぞれ何かが違うし、高級なのを試してもこれはあんまり好きじゃないなというのもあった。
 妻は店員さんにも相談しながら二時間かけて、SHUREというメーカーのモニターヘッドホンを選んだ。価格は9000円ほど。
 モニター用というのはリスニング用というよりは業務用で、音をチェックするのにプロが使うもので、音の解像度が高く、低音や高音を特段強調したりということもなく、フラットで素直な音がするという。
 僕と妻はCDを作る人はおそらくベストなバランス(このバランスで聴いて欲しいという思いが込められてるはず)で録音してるはずで、それをそのまま出せるならそれ以上は無いんじゃないかと、そして選んだやつは同価格帯のうちでは最も解像度が高いということで言うことなしだと判断した。
 
 今僕はそのヘッドホンで音楽を聴くのがちょっとした楽しみになっている。元々持ってた4000円程度のヘッドフォンと聴き比べたりしている。やっぱり何かが違う。
 元々持ってたオーディオテクニカのヘッドホンの方が空間的な広がりを感じるような気がするけどやや音がぼやける印象。
 モニターヘッドフォンは空間的というよりも、立体的でありながら、耳のすぐ近くで音がなっている感じ。そして、とてもすっきりはっきり音が聴こえる。
 僕はビョークやアトムスフォーピース(レディオヘッドのトム・ヨークの別バンド)なんかが特に心地よく聴けたし、持ってたヘッドホンとの違いも感じれた。妻はCHAGE&ASKAではボーカルが発音するときの舌使いを感じたという。
 こういう風に音楽を聴くのも楽しいもんだと思った。いかに自分の感性に音が届くかということにもつながる。音楽の聞き方が少し変わるかもしれない。こんなに楽しいのなら良いヘッドフォンをもっと早くに手に入れとくんだった。(小川)

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