転がり込んできた幸運との一時、そして別れについて
文章を書く、というのは私にとって割と難しい作業だ。どうにも向いていないように思える。
しかし、今回ばかりは書かねばなるまい。繰り返す日常の中で特別なことがあった。そしてそれは「唐突に終わってしまった」。
今から丁度1ヶ月前、9月23日の事だ。私(平凡な中年サラリーマンだ)は、仕事を終え、いつも通りぼんやりとPCを眺めていた。すると、ベランダで「ガタン」と大きな音がしたのだ。
まず脳裏に思い浮かんだのは野良猫の侵入。しかし、ここは安アパートとはいえ3階だ。猫が迷い込んでくる可能性は低かろう。次に思いついたのは……まあ、不審者だ。これが女性なら下着泥棒等もありうるだろうが、中年男性の家のベランダに忍び込むのなら、も少し害意のあるタイプだろう。強盗とか。
怖いので、少しの間息を殺し、眺めてみたが窓が開く気配はないし、音もしない。スマートフォンで緊急通報の準備をしたのち、コロコロ棒の柄でカーテンをそっと開けてみる。
結露した摺ガラスの向こうは、鈍く、金色に光っている。窓を突いても、特に動きがないのを確認して、恐る恐る窓を開けると、そこには人の背の高さほどの薄く、楕円というか、長方形というべきかわからない光る棒が転がっていた。そして創英角ポップ体で「当たり」と書かれていたのである。
(続く)