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最新Topics / 老化細胞除去治療


【”最新Topics”について】
”最新Topics”シリーズでは、医学学会の会報誌や、医学雑誌、またメディアによる医学情報などで発信された情報を、なるべく一般の方にも分かりやすくまとめてお伝えします。客観的で中立な情報発信を心がけていきます。

【テーマ:老化細胞除去治療】

出典:日本抗加齢医学会『Anti-Aging medicine 2024年6月号』掲載
「老化細胞除去治療~セノリティクス~ by 須田将吉ら」

▶老化細胞とは?


 人間は老化すると、色々な病気にかかりやすくなったり運動能力が低下したりしますが、こういった加齢現象の背景には、細胞レベルでの老化があります。細胞は分裂して増殖しますが、一定以上繰り返すとそれが止まってしまい”老化細胞”として体に残ってしまいます。
 体に残った老化細胞はさらに、体の再生力を低下させ、炎症性物質(病気や老化のもと)を分泌し、ますます老化を促進してしまう、という性質があります(=Geroscience仮説)。

▶老化細胞に着目したアンチエイジング方法


 細胞が老化するのを防ぐ方法があればアンチエイジングにつながると考えられてきましたが、近年、その老化細胞そのものを体内から取り除いてしまうという老化細胞除去治療=セノリティクス(Senolytics)が開発されました。

◎いつまでも増殖できるようにするとどうなる?
 細胞が老化すると細胞が分裂・増殖できなくなることから、いつまでも増殖できるようにすればいいのではないか?という考えがありましたが、老化した細胞を無理やり増殖させると、癌が増えてしまうことが確認されたのです。老化と癌化は表裏一体。

▶老化細胞の悪い働きを緩和させる試み


 老化細胞が悪い物質(炎症性物質)を分泌するのを抑制する薬剤がまずは注目されました。これをセノモルフィクス(Senomorphics)と呼びます。糖尿病薬のメトホルミンや、免疫抑制薬のラパマイシンなどにその作用があることがわかっています。
 この分野はまだ研究中ですが、問題点としては、老化細胞が体に蓄積してしまっている限りは悪い物質を分泌しつづけるので、結局は対症療法に過ぎないということです。また上述したように、老化と癌化は表裏一体です。そこで、老化細胞そのものを殺してしまおうという考え方が出てくるわけです。

▶老化細胞を除去する原理


 通常、ダメージを受けた細胞は、癌になってしまうのを防ぐために、自然と死ぬようにできています。そして自然と死ぬことができなかった細胞は、老化細胞となり体に残ってしまいます。残ってしまう老化細胞には特徴的な分子があり、それをターゲットとする薬剤(=セノリティクス)があれば、老化細胞を殺すことができるというわけです。

▶セノリティクスを探せ!


◎世界初のセノリティクス
ダサチニブ(Dasatinib):白血病などの治療薬
ケルセチン(Qercetin):食品などに含まれる天然フラボノイド
D+Qを組み合わせたカクテル療法による実験で、世界初のセノリティクスとして報告されました。

◎現在では、数十種類のセノリティクスが報告されています。
・フィセチン:天然フラボノイド
・ジギタリス:心臓病治療薬
・SGLT2阻害薬:糖尿病薬
など

▶セノリティクスのこれから


老化細胞そのものを除去するという考え方での探索にはさまざまな方法があり、今後も多くの薬剤の報告がされることと考えられます。その中にはワクチンなどもあり、またまだ安全性などの研究が必要なものも多いです。

【日常生活での老化細胞除去治療(セノリティクス)の取り入れ方】


▶老化細胞を体から取り除いてくれる物質を摂取する


現在報告されているところだと、病気の治療に使う本格的な薬剤の他に、天然フラボノイドであるケルセチンやフィセチンがあります。それらのサプリメントも販売されていますが、食品から直接摂ることもできますね。

★ケルセチン
◎ケルセチンを多く含む食品
玉ねぎ、ブロッコリー、りんご、モロヘイヤなど

★フィセチン
◎フィセチンを多く含む食品
玉ねぎ、イチゴ、りんご、カキ、ブドウ、きゅうり、など

 

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