形成外科1年生〜まずはここから、おすすめの本〜3.腫瘍
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形成外科という分野は大学によっては授業がありません。
研修医でも、その研修病院に形成外科がない病院や、医師がいても非常勤のこともおおく、形成外科を研修医の間にローテーションできない人もいるでしょう。
そうした、形成外科に入る前の学生時代や研修医の頃は触れる機会の少なかった分野ですが、専門とするのなら自ら勉強していくしかありません。
皮膚科に関しては大学で授業があったと思いますが、実臨床で必要な知識をさらに肉付けしていく必要があります。
今回は患者さんの多い腫瘍について、押さえておきたい勉強すべき点や、おすすめの本をまとめていきます。
皮膚腫瘍を診察するシチュエーション
形成外科では、皮膚科の疾患つまり皮膚腫瘍なども治療を行います。
皮膚科で診断を受けてから形成外科に紹介されて手術となる方もいれば、形成外科に直接いらした患者さんは診断から形成外科で行います。
腫瘍と言っても、良性か悪性かでかなり治療法や気をつけるべき点が異なります。
まずは、悪性を見分けること、「これは悪性かもしれないから慎重にみなきゃいけない」という嗅覚が最も大事です。
そのためには、まずは皮膚科の知識をつけておく必要があります。
『あたらしい皮膚科学』この本は皮膚科のバイブル的な本と言っても良いと思います。
私が研修医の時皮膚科を回った時も、今アルバイト先で診断に迷って皮膚科専門の院長に相談した時も、
これだよ!っとパッと開いて疾患の写真と、解説を見せてくれます。
皮膚科全般のことが載ってますが、皮膚腫瘍についても概要を理解する上で写真を見ながら学ぶことは大変重要です。
見た目や経過で悪性かもしれない
と疑うことが何よりも重要なのです。
そうでなければ、診断のために必要な検査につながらないのです。
まず外来中でできる検査としてはダーモスコピーがあります。
ダーモスコピーを見れるようになるには時間がかかります。しかし、診察の時に必ず患者さんの病変をダーモスコピーでみて、次に教科書をみて一つづつ所見を確認して、実際の手術後の病理での確定診断で答え合わせをするという経験を繰り返すことが重要と考えます。
そのうちAIに取って代わる技術かもしれませんが、
皮膚の病変も均一ではないため一部だけの画像で良性と判断してしまうことがないように、やはり人間側の目も引き続き重要であると思います。
皮膚腫瘍で悪性を疑っている時は、
診察時にはリンパ節の腫脹の有無も確認することが重要です。
他の検査としては、皮膚を一部とる生検があります。
生検も検査で判断に役立つ部位を選ばないと、検査自体に意味がなくなってしまうことがあるので、形成外科の最初のうちは病変全体のうちどの部位を検査に出したほうが良いか上級医に確認したほうが良いです。
また病理の先生と話す機会があれば、直接どのような検体がよいかお話しを伺うことも大変勉強になります。
実際に病理結果が返ってきて、有棘細胞癌、基底細胞癌、メラノーマなど悪性の場合
それぞれガイドラインによって切除の幅が異なったり、リンパ節転移のスクリーニングに関して画像検査を行ったりする時もあり、ガイドラインをよく読んで必要な検査、治療をすることが重要です。
リンパ節転移を疑う場合はセンチネルリンパ節生検や、転移を認めればリンパ節郭清が必要となります。
腫瘍の種類と、ステージにより治療が異なりますので、専門の医療機関での治療が必要です。
今回の記事では、具体的な治療法を書くことはしませんが、そう言った全体像を含めて形成外科医師として勉強しておく重要性をお伝えしておきます。
診療ガイドラインは日本皮膚悪性腫瘍学会のホームページで見ることができます。
切除マージンやセンチネルリンパ節の検査を行うかなどは、各科のカンファレンスで必ず検討が行われるべきと思います。形成外科の専修医で勝手に判断することはないとは思いますが。。。
ガイドラインは改訂されることがありますので、常に情報はアップデートしましょう。
アルバイト先でも悪性の皮膚腫瘍の患者さんがいらっしゃることもありますので、初期の医師の判断で、患者さんの治療の不利益になることがないように、常にその腫瘍が悪性の可能性の検討をしなくてはなりません。
いざ手術となった時に役立つ本
良性、悪性の腫瘍ともに切除の際、切除後の皮膚に余裕があり一直線に縫合できる場合が1番方法としては簡単です。
場所によっては、単純には縫えない場所があります。
まず顔です。
顔の場所によっては皮膚に余裕がなかったり、口や瞼、鼻などパーツごとの形が腫瘍切除によって損なわれてしまうことがあります。
このような時に、形成外科の役割が1番重要となってくる場面だと思います。機能と整容の再建が私たち形成外科の根幹の仕事だと思っています。
その時の手術の計画に役立つ本を紹介します。
こちらは古くからある本ですが、一つの部位の皮膚や組織欠損について複数の局所皮弁のデザインが載っています。患者さんごとに、腫瘍のある位置や大きさはことなり、一定の術式では解決できないので、こういった本や過去の論文から患者さんに適した再建方法を考える必要があります。
また、足や手などで、皮膚腫瘍が深くなり切除すると骨や腱が露出する場合は、再建方法も工夫が必要です。
そうした時は、
こちらの本が参考になります。複数の手術症例の写真が載ってるので、自分の症例と近いものが参考になります。手術をこの本をみただけではできませんので、具体的な手順については、術式を別途論文で検索して、方法を学ぶ必要があります。
やさしいと本のタイトルにはありますが、全然手術内容はやさしくはないです。
また比較的新しい本では、
そもそも局所皮弁とはなんぞや!から学ぶ場合におすすめな本は、こちらの本です。
1巻から3巻まであり、2巻は手、3巻は足についてです。
自分が担当した症例に関係する部分を読むと役に立つと思います。
形成外科の本は値段が高いので、医局に共有の図書が置いてあれば、まずその本を読んでみるのがおすすめです。
最後に、形成外科だと再建の方に目が行きがちですが、やはり診断が1番重要です。
診断を行い、適切な治療の1個の方法として切除の手術とそれに伴う再建があるという順番です。全体での治療には、正しい知識を身につけることは怠らないようにしましょう。
番外編血管腫
腫瘍の項目の中には、血管奇形や血管腫も含まれます。血管腫は種類によってレーザーの治療が適応だったり、塞栓療法が適応だったり、手術が適応だったりします。
血管腫、血管奇形の分類を理解し、それぞれに適した治療を学ぶことが重要です。
血管腫を勉強するのにおすすめの本はこちらです。
まずは分類から学ぶことができ、診断、治療法まで、それぞれの疾患ごとに整理されています。
塞栓療法の注意点も学ぶことができ、血管腫を理解するのに役立ちました。おすすめの本です。
形成外科専修医プログラムでは、形成外科として学ぶべき項目が定められています。
1.外傷
2.先天異常
3.腫瘍
4.瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイド
5.難治性潰瘍
6.良性変性疾患
7.美容(必須ではない)
8.その他
https://jsprs.or.jp/member/committee/wp-content/uploads/2024/05/03_nin_kai_32.pdf
それぞれの項目についておすすめの本を今後も紹介したいと思います。
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