受難の時代を、リハビリ職の力で切り拓こう

勤務医をしながら、産業医・労働衛生コンサルタントの事務所をしています。

COVID-19については労働衛生の方面ではTwitterでコメントしたりしていましたが、リハの文脈ではあまり触れたことがありませんでした。

ちなみに産業保険方向でそこそこ読んでいただけたツイートはこちらです。

今回はリハビリセンター長というポジションで勤めている病院の話をしたいと思います。

主に現状と、自院でスタッフに伝えていることです。

自院の環境

当院は感染症医療の第一線にはありません。ただ入院患者の多くは高齢で、一度感染が広がれば大きな問題になります。地域には対応している医療機関が複数ある中、日々患者がリハビリを求めて転入院してきます。対岸の火事ではなく隣り合わせであり、一線の機関を支援するための連携も重要な努めです。

リハ療法士など、職員の反応

感染症禍の情報は複雑で変化も激しく、リハビリ専門職にとってもキャッチアップは簡単ではないようです。パニックにはなっていないものの、危険に近いと危機感を募らせている方はいます。私だって未体験、気持ちはよくわかるつもりです。

或いは仕事を「不要不急」と自分で思っている者もいるのか、特に感染を疑われてもいないスタッフが「自分が治療に関わることで感染を広げるのではないか」と不安がっているケースも水面下ではありそうです。これも必要な視点ですね。

一番大切なこと

まず個々が己の身を守ることは何より重要です。我々の生存なくして、患者への価値還元もありません。以下のすべての記述は、仕事ができる限りにおいて、という前提にたってのことです。

大原則の元での優先事項(立ち返るべき基本)

1 方々で言われているように、感染拡大を食い止めねばなりません。これは説明の必要はないかと思います。

2 一方で、我々は入院患者の対応を途切れずに行う責務があります。患者はメリットがあって入院しているはずで、対応しないという選択は、リスクの回避を多少可能にするかもしれないですが、本来の動機を果たせないという状況を作ります。その時には退院という選択肢も含めて検討せねばなりません。

指導的な立場において

毎日実際治療に当たるべきなのかを評価しながら対応を続けています。

続けていくべきと判断した局面では、自分たちの仕事の意味を改めて伝え、関わりを止めることで失うものも大きい、とも言っています。今まで無かったリスクが急に増えたわけではないのです(元々あったのが、見えるようになっただけということも往々にしてある)。

今はまだ、インフルエンザのように、起きた時は対策する「隣人」としては扱えませんが、いつかはそうなるかもしれません。それまでは。

テクニカルな話を少しだけ

なるべく特定少数の患者を担当するよう、リハ療法士、病棟スタッフ、その他あらゆる職種の動線を整理しています。
喉の粘膜への積極的な接触など、避けた方が良い手技・介入もあるので、そこは閉じたりしてます。設定、運用の面でも、経鼻胃管の抜き差し対応を避け代わりに抑制を行うなどの対応も考えられます。

リハビリの精神と難局対応

長期戦がほぼ確実な状況では、サバイブ後のリハビリテーション=生活再建が非常に重要です。持久戦では心身の疲弊をできるだけ防ぐことが求められます。リハビリと言うと手術の後から始めるイメージがあるかも知れませんが、実際の医療でも手術や化学療法の前にも体力づくりを行うことがあります。

今回の問題も同様と考えています。その点、外出は何から何まで自粛するなどというのは問題だと思います。(すでに触れたようにリスクが増えることは何もしない、というのは短絡的で、何もしないことの問題も吟味しないといけません。)

リハビリ医療は答えの決まっていない問題を限られたリソースでスピーディーに解決に導く営みであり、我々リハ医療のプロは問題解決の専門家であるはずです。

難しい問題には違いありません。安心材料も乏しく、患者どころか自分たちを安心させるのも厳しい状況ですが、我々には戦う素地はあるはずです。

リハビリテーション医療の力を信じています。

謝辞

病院のみんな、いつもありがとう。

トップの画像は以下のサイトからお借りしました。ありがとうございます。

OTナガミネのリハビリイラスト集


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