
インフルエンザの診療
昨年12月からインフルエンザの流行が続いています。
当地もインフルエンザ陽性患者の受診が目立っています。
インフルエンザは感染力が高く、特に冬季には多く遭遇する感染症です。
今回はコモンな疾患であるインフルエンザの診療におけるポイントをまとめてみました。
ハイライト

2024-25年の流行状況
12月に入り各メディアでインフルエンザの流行が報道されるようになりました。国立感染症研究所のデータでは、2024年第50週の定点当たり報告数は19.06(患者報告数94 259)であり増加傾向、25の都道府県で警報レベルを超えていました。
インフルエンザの診断
インフルエンザでは「突然の発熱」+「咽頭痛、咳嗽」+「筋肉痛、関節痛」が典型的な症状です。これら以外にも、下痢や嘔吐、頭痛、倦怠感といった非特異的な症状を呈します。特に小児では下痢や嘔吐といった消化器症状が10-20%ほどと、成人より多い傾向にあります。以下にインフルエンザの症状における精度を提示します(JAMA. 2005 Feb 23;293(8):987-97. PMID:
15728170)。

上記の通り特異的な症状はほぼなく、曝露歴や流行状況を含めて総合的に判断します。インフルエンザ迅速検査は診断において有用ですが、発症早期では感度が悪く絶対的な指標にはなりえません。
超急性期では、咽頭後壁にイクラのようなリンパ濾胞(インフルエンザ濾胞とも呼ばれる)が見られ、悩んだ際に参考となります(日大医学雑誌 72 (1), 11-18, 2013)。

インフルエンザ迅速検査の意義
インフルエンザ迅速検査の精度はメタ解析で以下のように示されています。

別の研究では陽性的中率は流行期(有病率が15%以上の場合)では80%ほどとされています(Pediatrics. 2007 Jan;119(1):e6-11. PMID: 17200259)。
特に発症早期では偽陰性が増えるとされており、病歴からインフルエンザが疑わしい場合にはみなし陽性として対応します。
結論からいえば検査の結果が陽性/陰性のいずれであっても、インフルエンザへの対応は変わりません。外来の逼迫状況を考慮しながら、検査の結果にかかわらず対応はかわらないことをお伝えし、検査をするか確認しています。
抗ウイルス薬の適応
健常な成人では抗ウイルス薬は必須ではありません。リスク因子がない症例では、1日ほど発熱期間を短縮しますが、重症化は抑制しないと報告されています(Cochrane Database Syst Rev 2014 Apr 10; (4):CD008965. PMID: 24718923)。原則は対症療法を行います。
ただし、以下の場合では症例によって抗ウイルス薬を考慮します。
-発症後2日以内の外来患者
-リスク因子を持つ人と同居する家族、ケアする医療従事者
インフルエンザにおける合併症のリスク因子は以下のものが提示されています。

上記のリスク因子を参考に、以下の症例では抗ウイルス薬が推奨されています。
-インフルエンザで入院したすべての患者
-重症あるいは症状の進行する外来患者
-インフルエンザの合併症のリスクが高い外来患者
-2歳未満の小児および65歳以上の高齢者
-妊婦および産後2週以内の患者
抗ウイルス薬はオセルタミビル(タミフル)が推奨されています。
オセルタミビルは妊婦でも使用可能です。ただし、腎機能障害の場合には調整が必要ですので確認して処方しましょう。

抗ウイルス薬の副作用としては10%ほどで嘔気があるとされています。事前に伝えておきましょう。
またインフルエンザ罹患した患者の異常行動(特に小児)は抗ウイルス薬の有無にかかわらず増えないことがわかっています。インフルエンザ罹患自体が異常行動を引き起こします。投薬の有無によって左右されないと理解してください。
最後に
今回はインフルエンザの診療に関してまとめてみました。
誰もが遭遇するコモンな疾患ですので、この記事を通してポイントを押さえ日々の診療に活かしていきましょう。
参考文献:
一般社団法人 日本感染症学会.日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ約の使用について~」(2024.12.25閲覧 https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37)