見出し画像

凍傷へのアプローチ

凍傷は低温曝露による組織障害と定義されます。
当地も冬季は積雪が多く、スキー場が複数あり遭遇する可能性があります。
寒冷地域だけ以外でも、アイスパックや液体窒素などで凍傷は生じます。
今回は凍傷の診断や治療に関してまとめています。

ハイライト


凍傷の定義

凍傷は前述の通り、低温に曝露し生じる組織障害と定義されます。
よりミクロな視点でみると、微小血管閉塞、末梢循環不全が主病態です。

凍傷はその深度によって大きく浅在性、深在性に分かれます。
また以下のように4段階で分類されます。
 第1度:紅斑を伴う表層の損傷 感覚鈍麻を伴う
 第2度:水泡形成を伴う 解凍時に疼痛を感じる
 第3度:赤黒く深部に及ぶ水泡を形成する 皮下組織まで障害されている
 第4度:筋肉まで到達 解凍後も疼痛がない 
      真皮を超えて下部組織まで障害される

凍傷の深度、重症度は当初の状態より悪化する可能性があります。復温までは判断をしないほうがよいです。復温後に判断し、症状に応じて逐一評価することが肝要です。

凍傷のリスク因子

凍傷に至るリスク因子は以下のものがあげられます。
 ‐ 高齢者
 ‐ 精神疾患
 ‐ ホームレス
 - アルコール常飲
 ‐ 末梢血管疾患、糖尿病
 ‐ 喫煙者
また男性、30-49歳の成人に多く発症すると言われています。これは凍傷の多くは雪山での受傷であり、登山ができる層に多く見られるのだと考えます。

凍傷の症状

凍傷が起きやすい部位としては顔や手足の末端があげられます。
これは防寒具がなく低温に曝露されやすい部分であること、血管攣縮を受けやすい末梢の部位であることが理由として考えられます。
初期では患部を刺すような痛み、感覚鈍麻を訴えます。
皮膚は最初は白色に変化して見えます(よく蝋にたとえられます。)
深い深度では解凍後に水泡を形成します。

病院到着前の治療・ファーストエイド

応急対応に関してはInternational Commission for Alpine Rescue(ICAR)による勧告が参考になります。一部抜粋して以下に提示します。

International Commission for Alpine Rescue(ICAR), Alpine Emergency Medicine Commission:On Site Treatment of Frostbite for Mountaineers,2000.より一部改変
International Commission for Alpine Rescue(ICAR), Alpine Emergency Medicine Commission:On Site Treatment of Frostbite for Mountaineers,2000.より一部改変

少し冗長なのでポイントをまとめると以下の通りです。
 ‐ 患部が腫脹することを考え、外せるものは外す
 ‐ 低温曝露のある場所では急速加温はしない
 ‐ こすったりマッサージしたりしない、水泡も基本は破らない
   (組織損傷を悪化させる)
 - 足の凍傷ではむやみに歩かせない

病院到着後の治療方針

初期治療として以下のことを行います。
プレホスピタルでの注意事項は引き続き意識して治療に当たります。

再加温後に凍傷の重症度を評価します。
この時tPAの適応になるか、以下のアルゴリズムで治療方針を立てていきます。

Burns. 2017 Aug;43(5):1088-1096. PMID:28159151を参照し一部改変
Burns. 2017 Aug;43(5):1088-1096. PMID:28159151を参照し一部改変

tPAの適応としてはほかに以下の項目があげられます。
 ‐ 多数の指、足趾が凍傷
 ‐ 複数の四肢におよぶ凍傷
 ‐ 切断リスクが高い症例
American Burn Associationガイドラインによれば
「末節骨より近位にチアノーゼがあり、復温後も中節骨より近位に灌流がない場合にはtPAを考慮する」との記載があります。

切断の有無に関しては専門の外科医と相談し方針を決めます。
凍傷の治癒に時間を要するため、数日-数週間にわたり評価する必要があります。
血流障害に関しては血管内治療も考慮されるため、可能な施設への移送も考慮されます。

最後に

今回は凍傷に関してまとめてみました。
通常の創傷治療とは異なり、凍傷に特有の注意するポイントが多数ありました。最初にも伝えましたが、寒冷地域以外でも液体窒素などで凍傷が起こる可能性があります。どの地域でも知っておいて損はないと思います。
この記事が皆様の学びの一助になれば幸いです。

参考文献
・Up To Date.”Frostbite: Acute care and prevention”.最終更新 2024.7.1
・日本救急医学会.改訂第6版 救急診療指針.

いいなと思ったら応援しよう!