World Cup is over.

Noteの更新をもっともっとまめにしようと意を新たにしたものの、2つ目のブログが7月20日で、そこから全く更新のないままに早や11月になってしまった。その間、いろんな事が起きたが、今日は先週末に終わったラグビーワールカップについて感想などを書こうと思う。

古くからの友人は知っているが、僕は高校時代は弱小ながらラグビー部に所属して、ほぼ毎日グラウンドで土まみれになっていた。今回のワールドカップでのピッチのような綺麗な芝生なんて全く縁がなかったし、試合だって学校のグラウンドがほとんどだったので土のグラウンドだった。なぜ始めたかというと、中学時代は野球部だったが、入った高校に珍しく野球部がなく、そうなるとサッカー部かラグビー部かで悩んだのだが、楕円球に惹かれてラグビー部にしたような気がする。

もしかすると、当時、作家の野坂昭如氏が「俺はバレーボールはどうも好きじゃない、1点入るたびに大男がいちいちはしゃぐなんてみっともない。そこへ行くとラグビーはトライを取っても本人は喜ばず、周りだけが喜んでいる、というのがいいじゃないか」というのを聞いていたおかげかもしれない。本当に当時の日本ラグビーは激しさの中にそういうストイックさを持っていたような気がする。

さて、そこからの自叙伝を紡ぎ出すとえらく長くなるので今回は割愛するが、まずはワールドカップの盛り上がり、日本代表の快挙、フィールド以外での様々な出来事が世界中に伝わって、大会が成功裏に終わったことは喜ばしい。そして、SNSにおける情報伝達が良い方向に向かっていたことも収穫の1つだろう。日本人には結構あっているスポーツだと再度認識した。

ラグビーを語るにおいてよく比較されるのがサッカーだが、もともとラグビーのルーツがサッカーであるがゆえに当たり前のような気がするが、本国イングランドでの扱いは全く違っている。それを認識したのはロンドンのパブで聞かされた話だ。

初めてロンドンに行ったのは仕事がらみではあったが1996年だった。その時はJリーグの某サッカーゲームの実況音声を作る仕事をしていて、その評判が良かったので欧州版を作るということになり、ロンドンでの英語版収録に立ち会う名目であった。ちょうどサッカーの欧州選手権がイングランドで行われており、それも観戦させてくれるというラッキーもあったのだが、それよりもロンドン市内にある学校であろうか、いろんな場所で広い天然芝のグラウンドにラグビーポールが立っている光景を目にして、ラグビーの本場に来たという高揚感の方が先に立ったのを覚えている。

ところが、5月〜6月だったせいなのか一向にラグビーをプレーする場面に巡り合わない。テレビでもサッカーばかりである。そんな折、現地で僕のアテンドをしてくれていたゲームサウンド担当の英国人とパブに行く機会があった。彼はあまりスポーツには明るくなかったのだが、パブでは折しも行われているサッカー欧州選手権の試合のライブやダイジェストがテレビで放映され、ビール片手に客たちが声を上げて観戦している。

試合が一段落した頃に、それまで持っていた疑問をパブで隣り合った客に訪ねてみた「僕はサッカーはもちろん好きだけど、昔ラグビーをプレーしていて、イングランドに来たらラグビーも見られるかなと思っていたんだけど、あまり見られないし、公園でサッカーをしているのは見るけど、ラグビーは見ないね」と。僕は、今はシーズンじゃないとか、そういう答えが帰って来るかと思ったのだが意外な答えが返ってきた。

「そりゃそうだよ、ラグビーは上流階級のスポーツさ。俺たちにはあまり縁がない・・・」

翌日、ゲーム会社の現地法人の日本人に聞いたら、詳しいことは知らないがラグビーはやはりイングランドでは上流階級のスポーツらしい。当時がようやくプロ化が始まってワールドカップも3回目が終わった頃でまだまだアマチュアが多い時代だった。そういえば、昔のイングランド代表の職業は医者とか弁護士とか先生とか多かったな・・・と思い出した。

そう考えるとラガーマンの心の余裕というのか、相手への敬意や、スタンドで観戦するのにどちらのファンもごちゃごちゃに座っていたり、ラグビー場は一種の社交場なのかもしれないなと思う。サッカー場ではなく、むしろ競馬場に近い雰囲気なのかもしれない。ラグビーファンでフーリガンというのもあまり聞かないし、いい話も決定的にラグビーに多いような気がする。ちなみに当時、欧州選手権でイングランド対スコットランドの試合を見たいとサッカーアナウンサーの重鎮、金子勝彦さんに相談したら「むらさきさん、見るならメインスタンドのすごくいい席にしなさい!ゴール裏なんて絶対行っちゃだけですよ!もし手に入るチケットが立ち見とかだったら絶対にやめなさい!命に関わります。」ときつく言われた。

もちろん、ラグビーもプロ化されてきた今は今後どうなるかわからないが、元々、都市間、国家間の代理戦争のような様相だったサッカーは代表選手はその国の国籍がないと資格がないし、また仮に帰化しても基本的には他の国の代表に一度なったら違う国の代表にはなれない。そして選手も代表になるということは、すなわち国を選択するということだ。サポーターもそれに連れ偏りが極端になるだろう。しかし、ラグビーの場合は一定期間その国にいてその国のラグビー協会に所属していれば代表チームに入ることができる。だから、今回も外国籍の選手が日本代表として戦ってくれたし、将来は日本国籍でありながらイングランドやニュージーランドの代表になる選手も出てくる可能性がある。

これをどう見るかは人それぞれだろうが、今の世界がナショナリズムを中心に自国第一主義に傾倒している昨今、このラグビー的考え方は面白いのではないかと思う。ワンチームならぬワンワールドだ。ただし、これは気持ちに余裕がないと実現しない、それは経済的こともあると思うしいわゆる幸せ指数の高さなのかもしれない。だが、我々も目指すべき方向はそこにあると感じる。

そういう意味では自国以外の国家を覚えて歌うなんて発想は日本以外ではほぼありえないだろうし、明治以来内戦もなく、70年以上戦争に参加をせず、また実は好奇心が旺盛でノリのいい日本人には良いイベントだったのだろう。また、まだラグビーがメジャースポーツではなかったのも幸いしたかもしれない。自分自身もスタジアムには行けなかったが、パブリックビューイングや地元飲み屋のテレビ観戦で十分楽しめたので良いイベントだったと思う。

ただ、一点気になるのは、日本代表選手の連日のテレビ出演とマスコミ各社がまるでバラエティータレントように扱っているところだ。幸い、やはりハイソなスポーツなのか、各局のアナウンサーにラグビー経験者がいるので専門的な話題にもついて行ってるのが救いにはなっているが・・・。2011年の女子サッカーのなでしこジャパンがワールカップで優勝した時のはしゃぎぶりと被っているように思うことが杞憂に終わることを切に祈る。

さてさて、野球、サッカー、バスケ、そしてラグビーと徐々に世界に通用する球技が増えてきて、プロ化も進んできた。次はぜひアメリカンフットボールといってほしいものだ!

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