亜鉛欠乏は新型コロナウイルス感染症の重症化に働く
こんにちは
亜鉛の欠乏はすべての免疫細胞の数の変化と機能不全を引き起こします。そのため、亜鉛が欠乏していると感染症、自己免疫疾患、癌のリスクが増加します
論文紹介
新型コロナウイルス感染症で、亜鉛欠乏は重症化のリスクファクターでした、という論文のご紹介です
J Infect Chmocher 2024 Mar 8:S1341-321X(24)00082-5.
DOI: 10.1016/j.jiac.2024.03.007
今回、岡山の津山中央病院に2020年3月から2021年4月までCOVID−19に罹患し、入院となった患者さん60名を対象とした調査結果が報告されました
入院時の血清亜鉛値を測定し、亜鉛欠乏症(<60 μg/dL)がある場合に、COVID-19 治療開始後に病態がどれくらい悪化するかを解析しました
亜鉛が体内で欠乏していると、COVID-19に 罹患した際に適切な治療を開始しても酸素投与が必要な肺炎(中等症Ⅱ以上)に悪化しやすいことがわかりました (調整オッズ比は7.29[95%CI: 1.70-31.18]。
COVID-19で入院した時に血清亜鉛値が正常範囲の場合だった人は25人で、そのうち中等症まで重症化したのは10人 (40%) でした。一方、入院時亜鉛欠乏症(<60 μg/dL)の人は35人で中等症まで重症化したのは31人 (88.6%) でした。
潜在的な交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルで解析した結果、亜鉛欠乏は、調整後オッズ比7.29(95%信頼区間:1.70~31.18)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症度のリスク増加と関連していました (表)
これは亜鉛欠乏がCOVID-19重症化における独立した危険因子であることを示しています
亜鉛欠乏_実践編
以上、ご紹介した論文の結論は、亜鉛が欠乏していると新型コロナウイルスの肺炎が中等症以上に重症化しやすい、でした。
亜鉛欠乏症の頻度ですが、上記論文で津山中央病院に期間中にCOVID-19で入院したのが60人。そのうち亜鉛欠乏症 (<60 μg/dL)は半数以上の35人 (58%) でした。意外に多い。
亜鉛が欠乏しやすい病気と食事
1. 慢性肝疾患
2. 腎臓関係 (糖尿病、ネフローゼ症候群,腎不全、透析)
3. キレート作用物質関係 (薬剤、*食物)
*食物中のキレート作用物質で有名なものにフィチン酸があります。玄米に多く、豆類などにも含まれます
亜鉛の補充 (新型コロナウイルス感染症にも)
亜鉛の多い食材をとるのがおすすめです。食材の具体例は健康長寿ネットに詳しくあります
そうはいっても、新型コロナウイルスに感染して症状がきつい、などの時は市販のサプリメント服用可です。推奨量は大人は8mg/日、妊婦さん10mg/日、授乳中 12mg/日です。健康長寿ネットに表が掲載されています。
低所得国の小児は呼吸器疾患や下痢症の罹患率が高く問題となっています。コロンビアで生後6~12ヶ月の健康な小児集団に12ヶ月間毎日5mgの亜鉛を補給した亜鉛補充群は対照群と比較して有意に、呼吸器疾患や下痢症の罹患率が減少しました。小児でも有効です
原著訳 明日掲載します
ミネラルはバランスが重要なので、漠然と長期にわたり亜鉛補充することはお勧めしません。だめです
最後まで読んでくださいましてありがとうございました