【高校サッカーレポート】細田学園高校vs武南高校(第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント 準々決勝)
第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント
準々決勝
細田学園高等学校 vs 武南高等学校
日時:2021年10月31日(日)11:05キックオフ
会場:浦和駒場スタジアム
天気:曇り時々雨
気温:15℃
湿度:65%
風:微風
ピッチコンディション:良好
試合結果
細田学園 0-1 武南
(前半 0-0)
(後半 0-1)
細田学園はSリーグ参加校のため、決勝トーナメントからの登場。初戦の浦和北戦では4-2、二回戦の東農大三とのゲームでは3-0と勝利。続く三回戦ではインターハイベスト8の浦和西と激突すると、延長戦までもつれる展開に。100分に渡る熱戦は細田学園が決勝点を挙げ、準々決勝の切符を勝ち取った。
一方の武南は高校総体県予選ベスト8によるシード校のため、決勝トーナメント三回戦からの登場。初戦となった春日部東戦では9-0と完勝し、順当に準々決勝へ駒を進めている。
年間を通して行われるリーグ戦は、細田学園がS2Aリーグで暫定(※2021年9月26日更新時点)2位、武南はS1リーグで暫定(※2021年9月26日更新時点)7位に付ける。
FW金子をはじめ強烈な攻撃陣を擁し、Sリーグでも好調の細田学園を、スタメン7名が1,2年生と若いメンバー主体の武南がどのように攻略するか注目された。
両校スターティングメンバー
細田学園(4-4-2)
武南(5-4-1)
前半
両チームとも様子を見ることなく、入りを意識した積極的な立ち上がりとなった。前線からプレッシャーを掛けてボール奪取を狙う細田学園と、後方から高いスキルで組み立ててゴール前まで確実に運んでチャンスを狙う武南。攻守が頻繫に入れ替わるハイテンポな試合展開となった。
ファーストシュートは細田学園。5分、左サイドのショートコーナーから変化を付けてクロス、中の選手が頭で合わせるもゴール上に大きく外れる。
対する武南もすかさず反撃。直後の6分に得た左45度からのフリーキック。エースのMF松原史季が右足で入れたボールをファーサイドから折り返し、中にいた選手が合わせてネットを揺らす。応援席では武南の保護者が歓声を上げ、先制点かと思われたシーンはオフサイドの判定。ゴールとはならない。続く8分にも武南は、相手のビルドアップをカットしたFW櫻井がドリブルで持ち込んでシュートを放つもGK正面。これ以降も前半から1年生エース松原を中心に、サイドと中央からの突破を効果的に使い分け、細田学園の守備陣を混乱させる。
一方の細田学園も最前列の選手が降りてボールを受けると、両サイドの選手が高い位置を取るといった、前線4枚が効果的にポジションを入れ替えながらボールを前に運ぶ。特にFW金子は個人で局面を打開し得る強さと技術を高い次元で兼ね備えており、裏抜けやポストプレーで非常に上手くボールを収めるなど、キーマンとしての役割を果たす。
細田学園の持ち前である積極的な守備がチャンスを作ったのは11分のこと。武南がGK前島へバックパス、このトラップが大きくなったところを細田学園の攻撃陣が見逃さずボール奪取。武南GK前島が取り返そうとした際に細田学園の選手を倒したように見えたが、主審はノーファールの判定。武南はあわや失点のピンチを招くが、ここは細田学園による前線からの高い守備意識が生んだチャンスと言えよう。
両チームとも足元の技術、視野の広さに裏打ちされたハイレベルなボール回しを披露。加えて中盤での激しいボールの奪い合いは両者一歩も引けを取らない。細田学園がセットプレーやショートカウンターからチャンスを演出すれば、武南は巧みなボール回しとドリブルを使い分けて崩してみせるなど、一進一退の攻防が続く。どちらが得点しても不思議ではない展開が続いたが、スコアレスで前半終了のホイッスルが鳴る。
後半
後半も激しいボール奪取の応酬と、奪ってからの素早い攻撃が続いた。いずれのチームに言えることは、非常にコンパクトで距離感が良い。それによって特に攻撃時のサポートの早さが見られ、守備ではチャレンジ&カバーが徹底されているなど、スムーズな試合運びが実現されていた。選手達の戦術理解度と、組織として非常に鍛え上げられている証左であろう。
35分、細田学園がこの試合で最大のチャンスを迎える。左サイドのドリブル突破からパスを受けたFW金子が強烈なヘディング、これは一度クロスバーに弾かれるが、こぼれ球を細田学園が再びシュート。しかしまたしてもクロスバーに阻まれる。直後の36分にも中央の縦パスからFW金子が抜け出しゴールへ迫るが、ここはGK前島が好判断で飛び出して捕球。細田学園が千載一遇のチャンスを逃してしまう。
このまま延長戦突入が想定された40分。武南DF重信が中盤から前線へ浮き球でパスを送ると、ペナルティエリア正面外やや左でボールを受けた武南のFW櫻井が縦に仕掛けて勝負。この突破から左足一閃、ニア上を破ってついに武南が先制する。この時間帯での得点に、武南イレブンと応援スタンドは大いに盛り上がる一方、耐えてきた細田学園は大きく肩を落とした。
諦めない細田学園は終盤に猛攻。獲得したコーナーキックではGK浅倉も攻撃参加をするが、得点には至らず。結局このまま武南が守り切って試合終了。武南が劇的勝利を収めた。
細田学園は前後半ともに決定機を数多く演出し、武南に全く引けを取らないゲーム展開を繰り広げた。この試合を通じて、改めて組織と個のバランスが取れた非常に良いチームの印象を残してくれている。それだけに試合終盤でのクロスバー直撃が連続するシーンをはじめ、チャンスで一本でも決めていればと悔やまれる。この借りは来年以降、更なる成長を以て返すことを期待したい。
武南はこれで準決勝進出が決定し、次戦は西武台との一戦を迎える。1、2年生主体のチームでありながらベスト4の現実は、未来を見据えても明るい材料だ。その彼らが視界に捉えた全国の舞台を掴み取るためにも、西武台は乗り越えるべき優勝候補の一角。ニューヒーローとしてではなく、武南の名を再び全国へ轟かず一歩目となるか。王座復活に向けた真価が問われる準決勝となりそうだ。
ULTRA FOOTBALL Journalの活動にご賛同いただける方へ、記事のサポートでのご支援を賜りたく存じます。 今後の事業拡大や取材費用の資金として活用し、手厚い情報やコミュニティ提供といった、より大きな形で還元いたします。