顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)
・疾患の特徴
FSHDは顔面,肩甲帯,上腕にアクセントのある筋力低下と筋萎縮が特徴的で名付けられているが,体幹や下肢にも症状は生じる.
病状は長期間にわたるものだが,症状が安定している時期は長い.ただ,急激に機能低下がおきることも多い.症状の程度は個人間,個人中の筋肉間でまちまちだが,20%は車椅子が必要となる.
遺伝形式としてはADをとるが,10-30%ではde novo変異によって新規に生じる.
発症は幼児から高齢まで取りうるが,多くの場合15-30歳で生じる.10歳以下の発症である場合,重症であることが多い.早期発症のFSHDはのうち重度の筋力低下や筋外症状を特徴とする群を乳児型FSHDと呼ぶ.筋外症状としては,感音性難聴・網膜血管症・右脚ブロック・拘束性肺疾患・認知障害・てんかんなどの筋外症状を伴う.通常のFSHDでは筋・呼吸症状はまれであり,余命としてもさほど短くなるわけではない.
・FSHD1とFSHD2
FSHD1はD4Z4リピートの短縮(1~10)によって起こるが,FSHD2はD4Z4の制御に影響するクロマチンリプレッサーの1つに変異が生じることによって起こる.
・対処法
治療方法は現時点で存在せず,対症療法が主となる.背部の補助をするコルセットや下垂足への装具は有用である場合があり,軽い有酸素運動は疲労感などにも効果的である.
・参考文献
Tihaya, M. S. et al. Facioscapulohumeral muscular dystrophy: the road to targeted therapies. Nat. Rev. Neurol. 19, 91–108 (2023).