帝王切開の麻酔 2024~嘔気嘔吐を防ごう 概要~
こんにちは。
産科麻酔科医ドクターまるです。
だいぶ時間が空いてしまいました。。。
今回は帝王切開の麻酔管理による ‘嘔気・嘔吐’の予防についての概要をお話しします。
発生頻度
帝王切開での発生頻度は
嘔気:約80% 嘔吐:約40% と言われています。
そもそも、麻酔管理中の嘔気嘔吐のリスク因子は
・女性 ・手術(婦人科、腹腔鏡手術など)
・使用する麻酔薬の種類
・嘔気既往ありor乗り物酔いしやすい
・非喫煙者 ・麻酔時間 ・若年者
・術後の麻薬の使用
と言われており、
このうち帝王切開を受ける妊婦さんは少なくとも4つは当てはまっているため、嘔気嘔吐を起こしやすい方が多いと言えます。
嘔気嘔吐は、妊婦さん自身のつらさに加えて
・手術操作に影響
・誤嚥の可能性
・術後の回復に影響 することから、予防をすることは帝王切開麻酔の管理で重要な1つとされています。
発生する原因
主な原因は4つ
①低血圧 ②痛み ③薬剤 ④手術操作 です。
①低血圧
帝王切開の麻酔方法は、基本脊髄クモ膜下麻酔です。
脊髄クモ膜下麻酔では、約75%に低血圧が起こります。
それは、広範囲な交感神経遮断による血管拡張が起こるからです。
低血圧が起こると、
1)直接的:嘔吐中枢が活性化
2)間接的:消化管のセロトニン分泌を介して1)もしくは、脳の化学受容体を経由して1)を刺激することで
嘔気・嘔吐が起こります。
②痛み
術中に痛みを感じると、術中の嘔気嘔吐に影響します。
③薬剤
嘔気嘔吐に注意が必要なのは、子宮収縮薬ですね。
オキシトシンは、低血圧
メチルエルゴメトリンは、消化器でのセロトニン分泌を介することで嘔気嘔吐の原因となります。
子宮収縮薬の投与方法については、別で記事にまとめようと思いますので、そちらを参照してください。
ポイントは、投与方法です。
④手術操作
手術操作で術中の嘔気嘔吐のリスクを高めると言われているのは
1)子宮の腹腔外挙上
2)腹腔内洗浄
この2つです。
それぞれルーチンで行うことは推奨されていません。
以上が、帝王切開の麻酔管理による嘔気嘔吐の予防のお話でした。
次回は、それぞれの原因ごとの対策について記事にする予定です。
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