帝王切開の麻酔 2024~子宮収縮薬の投与方法~
こんにちは。
産科麻酔医ドクターまるです。
前述の嘔気嘔吐の話にもつながる、子宮収縮薬の投与方法についてお話します。
↓嘔気嘔吐の回↓
子宮収縮薬の種類
帝王切開で使用される子宮収縮薬は、主に2つ。
オキシトシンとメチルエルゴメトリンです。
それぞれ、どのような特徴があり、どういった場面で使うのかを簡単にまとめます。
オキシトシン
帝王切開時、児娩出後に子宮を収縮する目的で、まず初めに使われるのが、オキシトシンです。
オキシトシンの、持続時間が短いこと、子宮筋に対して特異的な作用を持つこと、安全性が高いことが、その理由です。
オキシトシンの持続時間は、長くて数十分程度ですので、持続投与や反復投与に向いています。
比較的安全に使用することができますが、副作用として
低血圧・頻脈・悪心嘔吐・心電図ST低下・低Na血症が挙げられます。
メチルエルゴメトリン
続いて、第2選択薬のメチルエルゴメトリンは、同じく子宮を収縮させる作用を持ちます。
しかし、持続時間が数時間と長く、血管にも作用するため、オキシトシン投与後、さらなる子宮収縮が必要な場合に使用されます。
メチルエルゴメトリンの副作用としては、
高血圧・頭痛・悪心嘔吐・血管攣縮などが挙げられます。
投与方法
地域や病院によって様々な使われ方をしているのが、現実だと思いますが、投与する際のポイントは、副作用を少なくすることです。
オキシトシンは、比較的安全に使用でき、持続的・反復的投与に向いている薬剤ではありますが、使用量が増えると副作用も増加します。
そのため、少ない量かつ効果的な子宮収縮を得られる十分量である必要があります。
また、オキシトシンは、反復投与により受容体のダウンレギュレーションが起こります。
そのため、帝王切開が'予定'なのか、それとも'分娩停止'によるものなかによっても使用量は異なります。
選択的帝王切開の場合
① 1U ボーラス投与
例)オキシトシン 5U/ 1ml+生食 4mlで、1U/ 1ml
② 2.5~7.5U 持続投与
例1)オキシトシン 5U/ 1mlをそのままシリンジポンプで投与
例2) オキシトシン 5U/ 1ml+生食 500mlを1-2時間で持続投与
③ 子宮収縮不良であれば、2分後に 3U追加ボーラス
④ 第2選択薬(メチルエルゴメトリン)の投与を検討
(参考:下の表の左側)
分娩停止による帝王切開
① 3U ボーラス投与(30秒かけて)
例)オキシトシン 5U/ 1ml+生食 4mlで、1U/ 1ml
② 7.5~15U 持続投与
例1)オキシトシン 5U/ 1mlをそのままシリンジポンプで投与
例2) オキシトシン 10U/ 2ml+生食 500mlを1時間で持続投与
③ 子宮収縮不良であれば、2分後に 3U追加ボーラス
④ 第2選択薬(メチルエルゴメトリン)の投与を検討
(参考:上の表の右側)
メチルエルゴメトリン
メチルエルゴメトリンを使用する場合は、妊娠高血圧症候群などがない事を、事前に確認しましょう。
使用する場合は、少量ずつ緩徐に投与しましょう。
いかがだったでしょうか。
施設によって様々だと思います。
場所によっては、外科医が子宮に直接投与しているところもありますよね?
上記の方法は、筋肉に直接注入する場合と同等の子宮収縮を得られることがわかっています。
オキシトシンを急速に大量投与したことで、不慮の事故が起きた報告もあります。
ただでさえ、妊婦さんが不安になりがちな帝王切開では、妊婦さんの安全や管理の質を上げるために、細かな配慮を意識できたらと思います。