帝王切開の麻酔 2022~ERAC: 血圧管理①Norepinephrine? Phenylephrine?~
こんにちは。
産科麻酔科医ドクターまるです。
前回の記事で、ERACで推奨される帝王切開の麻酔管理の概要について触れました。
その中から、血圧管理について。
昇圧薬の使い方が、治療的使用から予防的使用にシフトし、
今は、昇圧薬の選択、
特にNoepinephrine とPhenylephrineについて話題になっていますね。
まずは、2015年のAnesthesiologyから
予定帝王切開でその両者を比較したランダム比較試験を。
Phenylephrineのα作用によって、
徐脈から妊婦のcardiac outputが低下することに着目し、
primary outcomeを心拍出量(cardiac output: CO)としています。
ASA、体重、週数、合併症などの基準をもとに除外し、
予定帝王切開の正期産の妊婦104人をランダムに
Norepinephrine郡、Phenypehrine郡に分け、比較検討しています。
入室後、基準とするSBP、HR、CO、SV(stroke volume)、SVR(systemic vascular Resistance)を測定。
SSS(single shot spinal)で高比重ブピバカイン2.2mlとfentanyl 15㎍を注入。
輸液は晶質液をcoloadで投与。
coloadとともに昇圧薬開始。
Norepinephrine郡は5㎍/ml、Phenylephrine郡は100㎍/mlの組成で、30mlhrで開始。
そのあとは、基準のSBPを保つように、計算式に従って流速変更。
結果、統計学的に有意な差が示されたのは、
Norepinephrine郡でHRは高く、COは大きく(上記A)、
体血管抵抗(Systemic vascular resistence; SVR)は低かった(上記C)ということ。
徐脈(HR< 60)の発生頻度はPhenylephrine郡で高かった。
ephedrineが第一選択だった時代から、phenylephrineに代わり、
そのマイナス点である徐脈の発生とそれに伴う心拍出量の低下を
Norepinephrineはカバーできる、という結論になりました。
次は、Norepinephrineの使い方についてを紹介します。