帝王切開の麻酔 2022 ~ERAC~
こんにちは。
産科麻酔科医ドクターまるです。
今回は、医療者向けの投稿です。帝王切開の麻酔にかかわる方。
2021年にSOAPからコンセンサスステートメントが発表されました。
Society for obstetric anesthesia and perinatology: consensus statement and recomendations for enhanced recovery ahter cesarean
過去にERASで出ていた選択的帝王切開の管理は、麻酔の領域に関するものが不足していたため、今回はそこに焦点を当てたものになっています。
その中で、術中管理の推奨について抜粋します。
①低血圧の回避
・嘔気嘔吐予防、子宮胎盤血流を維持するため
・妊産婦のベースの血圧を維持する
・予防的に昇圧薬(phenylephrineやnorepinephrinen)を使用する
②体温維持
・妊産婦の感染のリスクの軽減や入院期間の短縮、胎児の臍帯動脈pHやアプガースコアの改善に効果的
・温かい輸液、加温ブランケットを使うなど
・部屋の温度を23度以上にする
③適切な子宮収縮薬使用
・弛緩出血を含む産後出血(PPH)を減らすため
・子宮収縮に効果的な最小限の投与で、副作用を回避する
・大量のオキシトシンを急速に投与するのは避ける
④抗生剤投与
・ACOGのガイドラインでは、第一選択薬はcefazolin
・皮膚切開までに投与終了する
⑤IONV/PONV対策
・麻酔導入に伴う低血圧を回避
・脊椎麻酔にフェンタニルを使用
・子宮の腹腔外へ挙上する手技は、術中の嘔気嘔吐につながり、術後腸の機能回復に影響するため、見直す
・腹腔内の生食による洗浄の見直し
・複数の制吐剤の使用
⑥多角的鎮痛
・脊髄幹麻酔に長時間作用型の麻薬を使用する
・手術室内で非オピオイド鎮痛薬を開始
・代替策として神経ブロックも積極的に用いる
⑦母と子の絆形成の促進
・できる限り早くskin to skinをする
⑧術中輸液の適正
・適切な輸液管理の指標は確立していない
・低血圧の管理は、昇圧薬投与がメイン
・通常の帝王切開管理では、3L以内に納める
⑨臍帯結紮を遅らせる
・30~60秒ほど遅らせる
次回以降の記事で、
個人的に気になる項目を深堀していきます。
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