思い出をよこに、育ってゆく
きみは母を 思い出の中に 置いてゆくのか
動画アプリを 繰り遊びながら
おもちくんの好きなテレビ番組。
といえば、『緑色の耳をした犬の番組』であったのだ。
ほんの2ヶ月ほど前までは。
いつしか、10分ほどのアニメ番組を続けて見られるようになり。
いつしか、DVDの再生ボタンを押せるようになり。
いつしか、扇風機の風量が最大になる換気ボタンの場所を覚え。
最後のはちょっと違うが、いつの間にか、『あんぱんの妖精』の番組、更に映画まで、見るようになった。
緑耳犬の番組も、やっていれば喜んで見るのだが、見ながらも、ふと我に返り、
『ぱん?あんぱん?』
といってリモコンを持ってくる。
そして、録画したあんぱんの妖精の勇姿を見せるよう、迫ってくる。
嗚呼。
嬉々としてあんぱんを眺める横顔は、すっかり少年のそれではないか。
全身のフォルムもほっぺたも、赤ちゃんのままのようなのに、まだたっちもできないのに、きみは、どんどん育つのか。
まだ、ママ、犬のダンス、完璧におどれるよ。
母は、緑耳犬と小さなおねえさんたちに後ろ髪をひかれつつ、居間のおもちスペースがどんどん赤と黄色と茶色で埋め尽くされていくのを横目で眺めつつ、きっといつか、ごく自然に突然にあんぱんも卒業していくのかな、とぼんやり思うのだった。
秋の空模様と相まって、すこしばかりセンチメンタルに。