【渡米3ヶ月前の不運】レールが歪み始めた話
当ブログ第1本目の記事では、私の経歴を簡単にご紹介しました。
その中でも特に多くの方が関心を寄せてくださっている
米国の高校を2週間で中退
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ホームスクーリング
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2学年分飛び級
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高卒認定試験合格
という過程について、3本立てでより詳しくご紹介していきたいと思います。
【2013年5月】思ったより早く終わった日本での高校生活
東京の中高一貫校に通っていた私は、2013年3月に中学の課程を修了後、同級生達と共にそのまま高校に進学しました。
当初の計画では、そこに6月初旬頃まで通った後、中退し、渡米して9月の新年度開始に備えるはずでした。これは、高校レベルから欧米で長期留学を開始する生徒の間ではよくあるパターンのようです。偶然にも同じ年に同じアメリカの高校の同じ学年に入る予定だった子も、このルートを選んでいたと記憶しています。
ところが、春休みが明けて間もない頃に私の身体を異変が襲いました。
就寝後、眠りに落ちるまでの間に、左の肩から脇腹にかけて痛みを覚えるようになったのが始まりでした。ただ、最初の数日は、翌朝になるとそのことを完全に忘れており、また1日が終わってベッドに入った後に
「そう言えば最近なぜか肩のあたりが痛いな」
と思う程度でした。
程なくして、日中にも同じ症状が出るようになりました。特に強い痛みを感じたのが、登下校時とその直後だったため、
「高校に入って教科書が増えたから、鞄が重すぎるのかな?」
と考え、鞄は常に右肩に背負って左半身への負担を極力軽減しようと試みました。
それでも症状は悪化を辿る一方で、日常の何気ない動作に伴い、チクチクとズキンの中間くらいの痛みが左胸に走るようになりました。
ゴールデンウィークが目前に迫る頃、起床した時点で既に強い痛みに襲われていた私は、限界を感じて学校を休み、病院で検査を受けました。
医師の口から告げられた病名は、自然気胸でした。
気胸とは、肺に穴が開いてそこから空気が漏れる病気で、主な治療法は以下の3つです:
(1)安静にする(軽度の場合)
(2)胸腔ドレナージ:胸腔にチューブを挿入し、漏れた空気を抜く
(3)手術
私の場合、(2)のドレナージのみでも回復の見込みはあったようなのですが、渡米を控えていることもあり、再発リスクを下げるため手術に踏み切ることになりました。
3週間に及んだ入院中に手術を受けた私は、5月末に退院し、自宅療養を始めました。そして二度と高校の門をくぐることがないまま、日本での学生生活最後の登校日になるはずだった日を迎えていました。
尚、この自宅療養中は、英語圏の子ども達が使う問題集・参考書や無料でアクセスできるオンライン動画などを活用し、渡米後に履修することになる教科(主に理系)の予習をしていました。それが私の将来を大きく左右することになります。
【2013年8月】魔女裁判の街へ
アメリカの学校では、新年度のスタートが8月下旬〜9月初旬です。5月下旬〜6月初旬にその年度の課程を修了した子ども達には、約3ヶ月もの夏休みが待ち受けています。日本の子ども達にとって夢のような年間スケジュールに見えますが、その3ヶ月間を遊んで過ごす訳ではありません。多くの子ども達が、サマーキャンプやサマースクールで有意義な経験を積みます。
サマーキャンプとは、自然豊かな環境で生活しながら、趣味や特技のスキルを磨いたり、普段は経験できないことにチャレンジして視野を広げたりできるプログラムです。映画『ファミリー・ゲーム/双子の天使(原題:The Parent Trap)』や『キャンプロック(原題:Camp Rock)』などで描かれる夏期プログラムがまさにそれです。
サマースクールは、日本の塾などの夏期合宿に近いです。とはいえ、スポーツや芸術関連の課外活動の機会も豊富なのが一般的で、その点ではキャンプに行くのと似たような経験ができます。大自然に囲まれて勉学に励むプログラムもきっとあるでしょうし、両者の明確な境界線はないと理解しています。
私が進学先に選んだマサチューセッツ州のCushing Academyも毎年、独自の夏期プログラムを開催しています。元々、ボーディングスクール(寮のある学校。但し、周辺地域に住んでおり自宅から通う生徒もいる)のため、そこで夏期休業中も生徒を受け入れ、授業や課外活動を実施するのです。
在校生やこれから入学予定の新入生・編入生のみならず、他校に通う生徒(約6週間の短期留学に来る生徒も含む)も参加できます。これからCushingの一員になる留学生が参加すると、
(A)ネイティブスピーカーの英語に触れ、本格的な授業の開始前に耳を慣らせる
(B)キャンパスの構図を把握し(アメリカの多くのボーディングスクールに共通することですが、キャンパスが非常に広大です)、カフェテリアや図書館等の施設の利用方法も覚えられる
(C)同級生達や先生方と交流し、お互いをよく知ることができる
など、メリットが盛りだくさん。私もその年の6月から8月に参加予定でした。
ところが、気胸からの回復を待ってからの渡米では、プログラムの終盤に滑り込み参加する形になってしまうため、あえなく断念。それでも、渡米後いきなりの高校入学というシナリオに不安を覚えた私は、上記のうち少なくとも(A)だけはなんとか達成したいという思いから、代替案を検討しました。
結果、選んだのは「教師宅ホームステイ」でした。
これは読んで字の如く、英語教師としての資格を持つ先生の家庭にホームステイし、マンツーマンで英語を教わるプログラムです。多くの留学エージェントが取り扱っており、夏休み・冬休みに1週間単位で参加可能なケースもあります。
留学先で現地の一般家庭に受け入れていただき、そこで日常生活を送るというだけでも語学力向上にはなりますが、それに加えて、自らのニーズに合わせてカスタマイズされたレッスンを毎日受けることで効率的な学習が可能になります。短期留学をご検討中の方におすすめのオプションの一つです。
実は、私にとって教師宅ホームステイというのはこれが初めてではなく、中学3年生の夏、ちょうどアメリカ高校受験に本腰を入れていた頃に、すでにサンフランシスコで経験済みでした。それが大変実りある滞在となったので、予定より大幅に遅れてしまった渡米日から次年度開始までの数週間を有意義に活用したいと考えた結果、このプログラムが最適だと判断するに至りました。
ちなみに、大学1年目と2年目の間の夏休みには、フランス・スペインでも同様の経験を積んで現地語を学びました。その一部始終は、いずれこちらのブログに綴ります。
土壇場での申し込みにも関わらず私を受け入れてくださったのは、「魔女裁判」で有名なマサチューセッツ州・セーラム在住のファミリーでした。私自身がこの街をピンポイントで選択した訳ではありませんでした。母に聞いてみたところ、利便性などの観点からCushingにできるだけ近い地域を希望したところ、エージェントから提案されたのがたまたまこちらだったとのことです。
3人のお子さんがいらっしゃるホストマザーが2週間に渡ってレッスンを施してくださいました。日々のレッスン後には、子ども達とおつかいに行ったり、地元の観光スポットに連れて行っていただいたりしました。
話が逸れますが、セーラムでは、17世紀末に行われた「魔女裁判」が地元の観光業の基盤を築いています。「魔女博物館」をはじめとする観光名所の見学を通じて、思いがけず訪問することになったこの街の歴史を学ぶと共に、現代の日常生活ではまず目にしない単語や表現を学ぶことができました。
一方、この街にまつわる史実と、フィクションにおける魔女や魔法の描写とを結びつけ、エンターテイメント性を持たせて商売に利用している店舗や飲食店が散見されるのが心に引っかかりました。そうして実際に起きた悲劇を商業利用する街の方針に、ホストマザーが不快感を露わにしていらしたのが記憶に残っています。
それでも、病み上がりの私の体調を気遣いつつ、短期集中型のレッスンを進めてくださったホストマザーのお陰で、サマースクール参加断念により同学年の新規留学生達との間に生じてしまっていた差を少しでも埋められたことの有り難みは今でも忘れていません。
そして、2週間に渡るホームステイだけでもこれだけ多くの学びがあるのなら、今後3年間の高校留学でどれほど成長できるのだろう、と期待に胸を膨らませていた私でしたが、入学直後に出鼻を挫かれることになります!
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お読みいただきありがとうございました。
私のアメリカでの経験にご興味を持っていただけたら、ぜひ次の記事「留年勧告を無視した話」(※近日中に公開予定)にお進みください。