とある勇者は救えるか?
「クレヨンしんちゃん」という作品の歴史はとても長い。
その中にある「劇場版クレヨンしんちゃん」というジャンルというか、存在も当然長く、老若男女問わず色んな人たちがそれぞれ好きな「劇場版クレヨンしんちゃん」を持っていると思う。
そこで今回私が語りたいのは人生をかけて大好きな1995年に公開された劇場版第3作目、「雲黒斎の野望」――ではなく、
劇場版第16作目、
「ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」について語っていきたいと思う。
グーグル先生に「金矛の勇者」と入力しただけで、サジェストに「つまんない」と真っ先に出てくるこの黒歴史の1ページのような作品を、私は今まで「金矛?好きですよ、いいですよね」と公言してきた。
なぜなら、悪役のキャラデザと背景美術が好きだから、という単純な理由を持っていたからだ。
そのせいで私は、「金矛ってつまらんと言われているけど、本当はちょっと隠れた名作だったりしないか?」なんて勘違いを思い込むようになっていた。
その勘違いが正しいのかどうか、本当に劇しんとしての見所はあるのだろうか、今回数年ぶりに金矛を真面目に見ながら書いた感想文を発表します
――まずはウェキペディア先生で情報収集――
なにごとも事前にしっかり情報を知っておくのは大事だと思い、まずはみんなの大先生ことウェキペディア先生に金矛について聞いてみた。
すると、この金矛という作品は、
「双葉社創立60周年記念作品」として作られたことが分かった。正気か?
「本郷みつる氏が劇場版の監督をするのは、『ヘンダー』以来の12年ぶり」
「キャラデザ担当は湯浅氏」
……正直もうここで胸が痛くなってくる。
そう、この作品はあの名作「ヘンダーランドの大冒険」と酷似している点が多いのだ。
・「人間界を支配しようとするラスボス」
ヘンダーというよりはファンタジー作品の定番だが、今作のラスボス「アセ・ダク・ダーク」は最初は白と黒を併せ持つ1体がプラナリアの如く2体に分裂、そして襲いかかってくる様はいつもべったりとしているマカオとジョマを思う出すような……。
・「マック・ラ・クラノスケとプリリンという幹部ポジションの悪役2名」
マックは見た目も態度も紳士的、だけどしんちゃんへの要求が通らないとすぐにキレて襲いかかってくる上に、ひろしとみさえを強制的に動けなくさせた状態で夜中に家に入り込んでは襲ってくる――クレイ・G・マッドとス・ノーマン・パーに似た性格と戦略を取ってくるのが好きです。
夜中に家に上がり込んでくる悪役って子供からしたらマジで怖いでしょうね。(大人だって怖いわ)
プリリンは直球色仕掛けで来るタイプの劇しんお馴染みの「悪いおねいさん」ポジションですね。
チョキリーヌみたいなセクシー悪役ボインおねいさん好きです。
・「なんでも変身できるマタ・タミというキャラ」
お人形みたいに可愛い系のキャラデザ、劇しん定番の「お助けキャラ」なトッペマちゃんとスゲーナ・スゴイデスのトランプを合体させた感じでしょうか……。
うーん……。
私の気のせいだと思いたいんですよ。
でもちょいちょいヘンダーを思い出してしまうような設定が散らばっている上、「監督、本郷みつる氏」「キャラデザ、湯浅氏」という情報が、きっとどうしてもクレしんファン的にはヘンダーレベルの期待を掻き立ててしまうと思うんですよ。
これが劇場で公開された当時のクレしんファンの心情を思うと内心お葬式モードになります。
きっとある意味ちょー嵐を呼んだことでしょう。
(悪い意味で)
友人曰く、「ヘンダーを5千回煎じた残りカス」
らしいですが、ヘンダー風味の展開と設定なのにめちゃくちゃテンポが悪くてつまらなく感じるので、まぁそう言われてもしょうがない気はするんですよね。
でも私は先ほども書いた通り、「金矛ってつまらんと言われているけど、本当はちょっと隠れた名作だったりしないか?」と思い込んでいるので、それが正しいのかどうか、正直な感想を箇条書きにして以下に綴っておきます。
箇条書きは本編冒頭から時系列順になっています。
もしその中にちょっとでも気になる部分があればぜひ金矛を見てください。
ぜひ私と一緒に上映時間の93分を虚無に捨てましょう。
(ちなみに93分あれば、今流行りのPUIPUIモルカーがだいたい37回見れます)
――実際に本編を見てみる――
・今回はネトフリさんで見てみる。
「地球に暗黒の世界が迫っている。でもそのことに気がついているのは、しんちゃんだけ。謎の少年マタと力を合わせて、いざ地球を救うために立ち上がれ!」
……ネトフリさんに出てくるあらすじはマシな気がする。
逆になんでこれで盛大に事故ったのか。
・とりあえずCV銀河万丈氏なラスボスは大好き!
・いややっぱり本郷みつる氏が作ると聞いて期待しまくったファンを思うと泣いてしまう……。
・ダーク様登場のシーンのカメラワークめっちゃ凝ってんじゃん。
・まずは影だけすっと出てくる軽い不気味ジョブかましてくるマック最高ー!!
こういう演出があるから嫌いになりきれない。
(ひろしとしんちゃんがお風呂で遊んでる辺り)
・というかここぐらいの日常パートはマシじゃない?
まぁみんなちょっとイライラしてるけど……。
・なんで送りのバスが家の前じゃなくて道の途中なのか?
(途中で「クロ」を拾わないといけないというメタは分かるが、そこはもうちょっと頑張って……)
・シロとクロは可愛い。
・いくらみさえに煽られたからって見栄でペット増やす部分にはめちゃくちゃ個人的にもやっとしてしまう……。
・(夜中に鐘が鳴るシーン)
はい神タイムスタート!!
(というかここから少しがこの作品のピークとも言える)
・自分の家でも夜中だと少し不気味という子供目線良いぞーこれ。
・明るくなっているドアへ向かうところのアングル好き、良いぞ。
・背景が完全にティム・バートン。
そして隠しきれないヘンダー感。
ティムバ大好き人間なのでここたまらない。
(私が推せる金矛の中で数少ないオススメポイント)
・ティムバって「うずまき」を多用するんだけど、横断歩道のシーンでも「うずまき」が多いので、やっぱりティムバをイメージというかオマージュしているのだろうか。
・マックーーーー!!!!!!(CV宮本充)
壁から出てくるの本当に最高すぎる。
長いネクタイがマジでベネみのベネ、
針金みたいな長身痩躯マジで性癖、
あまり目立たない薄いカラー入りのレンズ最高、
アシメなデザインのスーツほんと大好き、
正直こいつ見るためだけに金矛見てる。
・「驚かせてしまったかなぁ坊や、ごめんなぁ」
って言うマックの「ごめんなぁ」の言い方がほんっっとうにあ~~~~~CV宮本充氏ありがてぇ~~~~~ってなる。
・「イタチのチタイ」をしんちゃんに可愛くないと言われてちょっとむっとするマックめっちゃ好き……可愛い……好き……。
・この「回文好き」とかいう設定いるか?
・この懐中時計を懐から取り出す時の細くて長くて関節が綺麗な手と指を見てくれ~~~~~!!!!
・なにが「ちょうどいい」のか分からないがこの歌はもう本当にめちゃくちゃ大好き!!
(作詞、本郷みつる氏)
・このマックのミュージカルシーンがこの作品の頂点にしてピークだよ!!!!!!
・なんとなくディ◯ニー映画の「プリンセスと魔法のキス」のヴィラン、ファシリエを思い出した。
紳士的に相手を騙そうとしたり、針金みたいな細い身体、金に執着していたり……。
(「プリンセスと魔法のキス」は本当に素敵な作品なので、金矛見る時間あるならそっち見てほしい)
・力ずくではなくちゃんと契約書を求める紳士。
(なおその後)
・私はね、一人称「オジサン」と言う悪役が大好きなんだよ!!!!!
・紳士ぶってる癖に短気だからすぐぶちギレちゃうの可愛すぎる。
(私の記憶が正しければ、確かマンガ版だとミュージカルシーンがカットされているので、しんちゃんに1回断られただけですぐにぶちギレていてより短気になっていた)
・「そっちも暗くしてやろうか?」という謎の脅し。
・初見の時はまさか小島よしおが再度劇しんに出てくるとは思わなかったな……。
・このみんなイライラからのぶちギレ不穏みたいな流れ、急すぎるけど必要なんだろうな……。
・紳士的(笑)悪役がダメだったので次に色仕掛けしてくるの、ヘンダーすぎてもう逆に好きだよ。
プリリンちゃん可愛い。
・レンタルビデオ屋のセンス好きだよ。
・これで「扉」が開けるんだったら契約書なんてわざわざいらなかったのでは?
マック無能説。
・夜しか活動できないお助けヒロインキャラ……ヘン……いや、これは金矛だ……。
・天井を逆さに歩くマック最高~~~~!!!
お前はネウロか?
ネウロでオタク性癖拗らせたから、こういうさらっと人外なことやっちゃう奴大好きなんだよ……。
・2度目の「そっちも暗くしてやろうか?」頂きました~~意味は分からん。が、そこが良い。
・夜の自宅に忍び込んで大人を強制的に眠らせ、それからしんちゃんへ襲いかかるのはどこぞの雪だるまがやっていましたね……。
・「お、このマックと隠れんぼしたいのかい?」あたりのBGMめっちゃかっこいいんだよね~!
・マックのキャラデザを見てると「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のジャック・スケリントン、「コープスブライド」のヴィクター・ヴァン・ドートーを思い出す……やっぱり金矛はどことなくティムバっぽい雰囲気あるんだよな、そこが好き。
・さっそく回文好きとかいう謎設定なくなってんじゃねーか。なんだったんだあれ。
・「大きな大人として小さな子供をいじめるのが好きなのさ」
は~~~~~そういう悪役の定番セリフ大好き!!!!ありがとうございます!!!!!!
もうこの辺りで金矛の旨味はなくなります!!!!
(個人的感想)
・マックとマタのヘンジル勝負……うーん、
背景がただただずーーーっとまっピンクのままで本当につまらない。飽きる。なんだこれは?
序盤にあったティムバ的背景はどこにいった?
・しかもなんにでもなれるヘンジルなんだから色々なものになればいいのに、これもまたずーーーっとお互い飛行機のままなので、設定の無駄遣い感が否めない。
ひたすらまっピンクのままの背景、単調なバトル(笑)、これが面白い訳がない。
ここから続く長い長いグダグダパートが、「金矛はつまらん」と言われてしまう一因だと言っても過言じゃない。
・それにマタの歌唱シーンも唐突な感じが否めない。
ヴィラン(悪役)のマックの歌パートに対し、今作のヒロインであるマタの歌もあるというディ◯ニー映画的な構図にしたかったのだろうか……だったらもっと色々頑張ってほしい。
・マックに散々やられたのにあっさりプリリンのことを信じちゃうしんちゃんェ……。
(ヘンダーではすぐにチョキリーヌのことを悪い奴だと分かっていただけに違和感が凄い……)
・いきなり治安がめちゃくちゃ良くなったという違和感バリバリのTVニュースの世界改変感は、雲黒斎の第2ラウンド開始感あって好き。
・なんだかよく分からんがとりあえずアクション仮面さんから微分積分教わりたい。
・いきなりの劇画タッチの意味……。
(家族会議シーン)
・さっきの背景まっピンクオンリーに比べればまだ若干マシか?というレベル。
とりあえず「マッハ・GoGoGo」のパロがやりたいのは分かった。
(できているかどうかは別として)
・彗星の煌めきの如くプリリンが死ぬシーンのスピード感、もっと他に活かせや。
・野原家のくそダサヘンジルフォーム……もう泣きそうだよ、勘弁してくれ。
・今回の前半はあまり「野原家!」って感じじゃなかったのに、なんかこの段階になってから急に「家族の絆ですよ~!!」って感じにされても置いてけぼりなんですよね……。
・正直もうここら辺でメンタルがキツくなってくる。モルカー見たい。
・「(ごく一部の)背景とキャラデザは良いし、実は金矛って隠れた良作なのでは?」と思っていた自分を殴りたい。正気に戻れ。
本当の良作っていうのはそもそも隠れないんじゃ。
・(マタが石化する辺り)
背景にあるタンスや掛け軸など、家具のパースや数、構造がめちゃくちゃに崩れているのは大好き。
そう、こういうダークファンタジー的なものが見たいんだよ!!!
・(ダーク様からしんちゃんが逃げる辺り)
背景にぐちゃぐちゃと高く詰まれたイスのシルエット大好き~~~!!!
ずっとこういうのだけ見ていたい!!!!
・やっっっっっとアイテム回収ですねぇ……ここまで長い道のり(体感時間)だった……。
・キンキンの見た目ちょっと怖くない?
完全にミギーやんけ。
・2分割されてそのまま2体になるダーク様、いつ見てもプラナリアか?
・今 作 の オ カ マ 枠 (道具)
・正直「やっと終わったか……」という疲労感しかない。
例えるならペ◯ングのアップルパイ味を残さず食べきったような達成感(?)
思わず誰かに「褒めてくれ」と言いたくなってしまう、それはもう映画として良いのか?
――本編終了、そして結論――
(あくまで私個人の感想として)
金矛というこのクセがありまくる作品は、誰彼構わず「面白い劇しん」としてオススメして良いものじゃないと思ってしまった。
背景が良い、キャラデザが良い、ゲスト声優さんがキャラに合ってて良い、そういうピンポイントな部分に気になる要素があるなら見てみるのもいいんじゃないかな?程度のオススメはできるが、私個人としてはこれを見る時間あるなら雲黒斎見てくれとなってしまう。あとモルカーも見てくれ。
グーグル先生のサジェストに真っ先に「つまらない」と出てきてしまうのも納得できてしまう。
感想の中にもちょいちょい出てきたように、私はティム・バートン作品が大好き。
その独特な世界観に影響を受ける作品は多いため、私はそういう作品を見るのも好きです。
なので正直な話、金矛から「ティムバっぽい雰囲気」という「ピンポイントなオススメ」を抜いてしまったら、多分ここまで熱心に感想書いたりしてないし、そもそも1回見て「あっ……(察し)」ってなってそれ以降触れなかっただろう。
今回たまたま「(一部)ティムバっぽい雰囲気のある金矛」が、「ティムバっぽい雰囲気のある作品が好きな自分」にちょっと好みが合っていただけで、ストーリー全体が「劇しん」というジャンルの中で人気かどうかという話になれば「否」になってしまう……。
結論を言うと、この箇条書きにした感想文の中に少しでも気になる、好きな部分がなければ美味しいお茶でも淹れて、ゆっくりした気分で別の劇しんを見たほうがいい。
私から言える金矛のオススメできるところ、ちょっと……なところは、大体余すことなく書けたと思います。
金矛のことはもう任せました。以上です。
クランケ友太郎。
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