脱炭素ビジネスで世界経済を動かす「グリーン・ジャイアント」が日本には存在しない
自分がカーボンニュートラル(CN)の勉強を始めたばかりの素人なので,内容を評価はできるわけではないのだが,よくまとまっていて読みやすい.この界隈の勉強をしようと思っている人が最初に読むには良い本だと思う.
エネルギー業界において,20世紀は石油メジャーが世界経済を牛耳っていた.その代表格がエクソン・モービルだが,アメリカの地方電力会社であるネクステラ・エナジーがエクソン・モービルの時価総額を抜くという事態が起こった.2020年10月のことだ.ただの地方電力会社にすぎなかったネクステラ・エナジーは,再エネ事業を買収しまくり,企業価値を着実に高めてきた.ネクステラ・エナジーの他,イタリアではエネルが石油企業エニを時価総額で抜き,スペインではイベルドローラが石油・ガス企業レプソルを捉えた.EU全体でも,デンマークのオーステッドが英国BPを抜いた.このような地殻変動,グリーン・ジャイアントの台頭が世界中で起きている.
ところが,残念なことに,というか,いつものように,日本にはグリーン・ジャイアントがいない.再エネブームで太陽電池があちこちに敷き詰められたが,環境破壊以外の何物でもなく,しかも太陽電池は中国製だった.洋上風力発電は欧州企業が押さえており,日本企業に風車を設置できる企業がない.原子力にしても,安定して設置運営しているのは中国や韓国の企業であって,日本では昔話となっている.そんな日本が活路を見出そうとしたのが高効率石炭火力であり,東南アジア諸国への導入を目論んだが,所詮は石化燃料を燃やす類いのものであり,国際的に顰蹙を買っている.電気自動車でも中国の後塵を拝している.
そのような現実を直視しつつ,著者は,国内ではレノバやJERAに注目している.しかし,とにかく日本にはビジョンがないのが問題である.原子力発電にしても,結局,古い設備の延命に頼るだけで,最終処分をどうするかすらまったく目処が立たないままだ.
本書「グリーン・ジャイアント」を読むことで,世界の流れが掴めるものの,その流れに乗れない日本に落胆せざるを得ない
© 2022 Manabu KANO.