「顔面移植」をうけた21歳の女性が提起する数々の課題
自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから」ーNewsweek日本版
脳の損傷を避けたケイティは一命をとりとめるも顔の大部分を失っていました。太ももの皮膚やスネの骨で顔を再建しましたが「人の顔」ではありません。顔面移植の機会を手に入れ、一大決心をして踏み込むことになります。顔の皮膚だけではありません。上顎、下顎、軟口蓋、歯列も含まれるのです。
彼女のストーリーが雑誌で記事になりました。「ナショナルジオグラフィック」です。日本版(2018年11月号)とオリジナル版(2018年9月号)があります。オリジナル版のほうが写真の量は2倍あり、かつ刺激的な写真が多いです。
オリジナル版では、臓器提供者から切り離された顔面がトレーに乗って天井を向いています。執刀医を中心にギャラリーが取り囲み、写真や動画を撮影しているひとコマです。ある種の倫理観からか?動揺を覚えることを禁じ得ません。
科学技術の進歩と限界
無事に移植は成功。リハビリテーションと修正手術を重ねて彼女は一歩一歩前へ進んでいます。応援したい気持ちで感極まります。
しかし「顔面移植」といっても空想の世界のそれとは大きく異なり、「整った顔」には残念ながらなりません。顔の動きもぎこちなく、臓器提供者の顔の雰囲気は微塵も残されていません。顔面神経をつないでも元のように自在に動かすことは不可能(現在の医療技術の限界)。移植前は幾分かの喜怒哀楽の表情ができましたが、移植後は仮面の様になります。このことは移植前に十分に説明されていました。
今後は拒絶反応を抑える治療を継続する必要があります。それでも拒絶反応や感染症、発がんのリスクは隣り合わせ。舌の動きもまだまだの様子。眼球の位置の修正も必要。闘病は永遠に続きます。
さて、どのような結果になったかは以下のYoutube(クリーブランドクリニックの動画とナショナルジオグラフィックの動画)をご覧になってください。どんな感想を持つかは個人それぞれでしょう。
一方同じように顔面移植を受けた患者と面会する場面があります。同病を持つ人と情報を共有する機会を持つのは大変心強いものだろうと想像します。
この記事が提起する問題
問題は「科学技術」だけではありませんでした。
銃の問題:身近にそれがあるということ
自殺企図の患者:ふたたび自殺を企てる可能性は?実際に過去に顔面移植を受けた人が自殺している
ドラッグの問題:臓器提供者は薬物中毒だった
医療費の問題:保険は適用されない。今回は軍がサポートした
今後も周りのサポートが必要:彼女が天寿を全うするまで
刺激的な内容を記事にすること:切り離された顔が写真で掲載されている
プライバシーの問題:移植を受ける患者と臓器を提供する人のプライバシー
これらの課題に対する「正解」はありません。国が違えば状況も全く変わるでしょう。が議論は継続する必要はあるでしょう。
医療の進歩には少なからず犠牲や混乱、議論の衝突はつきものかもしれません。今は黎明期。10年後の未来はさらに成熟した医療が提供されているでしょうが、「今」があってこその未来。だから「今」を否定できません。
これだけのコンテンツを盛り込めるナショジオ社、感服します。
ここからは個人的な勝手な「邪推」になりますが、もしか、万が一、ナショジオ社が直接的もしくは間接的に彼女に資金的な援助を行なっている可能性です。「ジャーナリズム」が「一個人の人生」への影響を与えるとなると果たして。あなたはどう思いますか?
Watch One Family's Journey Through A Life-Changing Face Transplant | National Geographic
Cleveland Clinic’s Third Face Transplant Patient | Katie Stubblefield| Cleveland Clinic
Face transplant patient shares story of survival and recovery| FOX 8 News Cleveland
その後のリハビリテーションに取り組む彼女の姿が映し出されています。