わたしたち 小さき弱き者
わたしたちは、
この宇宙、地球においては、ほんの「小さき弱き者」。
もともと人の祖先は、地球上で、最も小さき弱き者でした。
生き残るために、人だけが大脳新皮質を発達させて今日に至りました。
近年、
「人」が作った科学、化学物質は、病気を治している一方で、生態系を狂わせ、それが当の「人」にも害を与えています。
「人」が作り上げた環境によって、
「人」が利だけでなく害をも受けています。
身体も脳も気持ちも、人の暮らし全般は、生態系の影響を受けています。
そんななか、ずっと幸せに元気に暮らしたいけれど、それには何が必要なんでしょう?
WHO憲章では、
「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に良好な状態であり、
単に疾病または病弱の存在しないことではない」とあります。
つまり、病気でないこと=健康、ではないと。
病気になっていなかったら、また病気を治したらよい、というわけでもないのですね。
しあわせで心も身体も元気で社会的にも健全でないと、健康とは言えないと。
わたしは、健康を生態系として捉えるのがよいと思っています。
「エコヘルス」と呼んでいます。
宇宙、地球の山・森林、海・河川、田畑、地面・土、気候、空気、人の集落、植物、動物、昆虫、細菌、食物連鎖などの生態系。
わたしたちの身体の中外の境目に住む常在菌もまた、
生体と共存関係の微小生態系をつくっています。
皮膚にも粘膜にも、口腔、上気道、膣、肛門から大腸、などのいわゆる入口・出口、消化管は内なる外ですから小腸にも。
わたしは歯科医師です。
口腔内の常在菌叢も実は生態系をつくっているんですよ。
常在菌は、外来の有害な菌の感染などの害から守ってくれるパートナー菌です。
なので、やっつけるべき菌ではないのです。
いわゆる虫歯菌や歯周病菌も常在菌であって、わたしたちに必要なパートナー菌なんです。
虫歯も歯周病も、実は特定の菌による感染症とは違います。
生態系、バランスが大事なのです。
先日のニュースで、虫歯や歯周病の原因菌が、親の口移しや食器などの共有からうつるわけではない、という発表をご覧になりましたか?
実に長い間、タブーとされてきました。
ようやく、ようやくです。
わたしの患者さんには、何十年、そうじゃないと言い続けてきました。
生を受けて生活を営む以上、わたしたちは無菌では生きられません。
常在菌はわたしたちの身体に必要だからこそ、住むものなのです。
大きな生態系のなかの小さき弱き者のわたしたち。
暮らしのなかで身近にできることから、エコヘルスを始めたいですね。
かといって、人はなかなか正義や理論だけでは動かされないことを知っています。
気持ち良いこと、満足すること、利があるとわかるものを望むものです。
大丈夫、エコヘルスにはそれがあると思います。
エゴではない、共存共栄の心地よい暮らし。
もともと最も小さき弱き者だった「人」だけが、大脳新皮質を発達させてきました。
せっかく授かった大脳新皮質を有効活用して、健康的で心地よい暮らしを見直してみたいですね。