褥瘡

僕みたいな総合病院でしか働いたことのないような内科医が訪問診療を始めるに当たっていくつかの壁に直面することがある。
との一つが褥瘡との戦いである。

当然、病院勤務医時代にも褥瘡というものにお目にかかったことはあるが、ソッコーで形成外科の先生に院内コンサルトし、処置は看護師さんにお任せをしていた。

訪問先の施設職員や、居宅の介護者から「先生、ここの褥瘡なんですけど」と患者さんのおむつをめくりあげて見せてもらうたびに「あー、なるほどね」と言ってはみるものの内心では「これは良くなってるのか?何か処置いんの?外用は何使えば良いの?ゲーベンって何?フィブラストって誰?ユーパスタって美味しそうだな!」とプチパニックである。

正直なところ、施設であれば施設職員さんに「こういう時に他のドクターはどんな感じでやってます?」と聞いてしまうし、看護師さんの経験が豊富であれば適切に指示をくれる。

問題は居宅だ。介護者は家族とういう素人である訳だし、必要となれば訪看さんに具体的な指示も出さなきゃいけない。そして何よりご家族で褥瘡素人丸出しになっては不安を与えてしまう。
ご家族にとって頼れるのは目の前の僕だけであり、そいつがこれまで内視鏡しかやったことのない「褥瘡なんか分かりません」では済まされないのである。

褥瘡について勉強しよう。ちゃんとやれよ。ゲーベン1択で逃げるんじゃあないぞ。

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