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ほくろでお悩みの方へ 【原因から治療までわかりやすく解説】

記事をご覧いただきありがとうございます。愛知県あま市にあるはだめ皮膚科です。


この記事の内容は、公益社団法人日本皮膚科学会を中心に作成された日本皮膚科学会ガイドライン 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版や「病気が見える」をベースに、実際の診療での知見を組み合わせたものになります。


この記事が「ほくろで悩む患者さんのQOLが上がるきっかけ」になったら嬉しいです。最後に、スキやコメントいただけると大変嬉しいです。


医療者向けの情報を一般の方に向けて、わかりやすく発信することを目的としています。


ほくろとは

「ほくろ」とは、一般に小型(数mm~1cm以下)の母斑細胞母斑という細胞が増殖することで生じる良性の腫瘍の1つです。医学用語では母斑細胞母斑、色素性母斑と呼ばれています。ヒトの成長過程において、できてくるものを後天性色素性母斑、生まれつきあるものを先天性色素性母斑と分類されます。後天性と先天性を比べると、後天性が多いです。


このほくろと皮膚がんは見た目だけでは区別がつきにくく、気になるホクロは皮膚科にて診断を受けることが大切となります。

ほくろのできる原因

ホクロは皮膚の中に点在している色素細胞になりきれなかった「母斑細胞」という細胞が増殖し、腫瘍化した皮膚のできものだと考えられています。実はなぜできるのかという詳しいことは不明であることが多いです。ほくろには、先天性と後天性があります。

メラノサイトとメラニン色素が皮膚内の1箇所に集まり、増殖して腫瘍化するのですが、どうしてそのようなことが起こるのかは分かっていません。病理学的に申しますと、皮膚奇形に分類されるため、本来は上記のようなものを原因とするわけではないのではないかとは思います。

ほくろの症状

メラニン色素とメラノサイトが一箇所に集まり(このメラノサイトが変化し、母斑細胞と呼ばれます。)色素細胞になりきれなかった母斑細胞が増殖して生じてくる腫瘍なのですが、後天的の場合は、紫外線が影響しているのではないか?と言われていますが、はっきりとは分かっていません。

通常の大きさは6mm以内であることが多く、色は「肌色・褐色・黒色」で、形状は盛り上がっているもの、平坦なものなどがあります。

ほくろの診断方法

「ほくろ」は良性の腫瘍の一種ですが、悪性と見分ける必要があります。正確な診断の為にダーモスコピー検査(医療用拡大鏡検査)を行っています。(ダーモスコピー検査は、できるだけ皮膚科専門医が良いかと思います)

悪性黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんの初期は「ほくろ」と見分けがつきにくいことがあります。がんの可能性が疑われる場合は組織検査を行い、あった場合は手術等の高度な医療が必要となりことがあります。

後天性のほくろの分類(Ackerman提唱分類)

ほくろの分類方法に、Ackerman(アッカーマン)提唱分類という分類方法があります。その分類によると、後天性のほくろが4型に分類されます。

1. Unma母斑(ウンナ)

思春期以降くらいから20〜30代に主には体を中心に出来ます。表面は粒々した顆粒状で桑の実のようです。母斑細胞は表皮と真皮の間にあり、部位や深さによってレーザー化手術のいずれかで切除します。

2. Miescher母斑(ミーシャ)

赤ちゃんの頃に見られる事は非常に稀で小児になった頃にできてます。形状は平坦な病変として出来てきて、だんだん膨らんできます。病変の多くは1cm未満で半球場に隆起(もり上がる)する丘疹。形状は中心部では黒く、外側に行くに従い、茶色く薄くなっていきます。表面は、つるりとして光沢があり、毛が生えていることも多いです。部位はUnna母斑よりやや深く、切除方法はレーザー治療か手術によって行います。

3. Clark母斑(クラーク)

手のひらや足の裏など、とにかく全身に生じます。薄く平らな「ほくろ」で直径は5mm~12mmと様々です。色状は黒褐色で形状は楕円形です。母斑細胞の深さは曖昧で、輪郭や境界線も不明瞭です。

4. Spitz母斑(スピッツ)

ほとんどが幼少期に発生します。全身のどこでもでき、急激に大きくなることが多く、赤色のほくろであることもあります。こちらの種類は転移や一定以上の拡大は見られない事が多いですが、メラノーマとの鑑別が難しいので発生したら早めの受診が必要かと思われます。


この他のほくろの形状には

その他(青色母斑)

青みがかって、やや盛り上がっています。硬く直径も10mmを超えるほど大きいものもあります。幼少期にできる事が多く、治療としては手術による切除となります。

その他(獣皮様母斑)

出生児から存在するほくろで,10cmくらいになることもあります。悪性化する事は少ないと言われていますが、悪性化するリスクが0ではないので、定期的な受診が望まれます。


ほくろの種類(組織学的分類、色素性母斑)

「ほくろ」は、母斑細胞ができた位置により「境界母斑」「複合母斑」「直皮内母斑」に分けられます。もともと、母斑細胞のもととなるメラノサイトは表皮の基底層に存在していますが、母斑細胞になると位置が変わる場合があります。

境界母斑

表皮と真皮の接合する部分にできる「ほくろ」のことです。ここから、複合母斑となります。複合母斑になる前の一時的な状態のほくろです。この種類のほくろは小さく薄く、ほとんどは目立ちません。

複合母斑

境界母斑と真皮内母斑の混合形が複合母斑です。表皮と真皮の接合する部分、そこより深い真皮内にも母斑細胞が存在しています。子供さんのほくろの多くはこの複合母斑であると言われています。境界母斑よりもやや黒く濃いほくろが多いです。

真皮内母斑

真皮内に母斑細胞ができた「ほくろ」のことを指します。成人の場合は、このほくろの種類がほとんどです。真皮内母斑は黒い色で半球状に盛り上がっています。境界母斑や複合母斑から、真皮内母斑へとなる場合もあります。

先天性のほくろの分類

1. 小型色素性母斑

  • 成人最大径が1.5cm以下

  • 色は、正常な皮膚色から黒色

  • 扁平〜隆起

2. 中型色素性母斑

  • 1.5cm~20cmの大きさ

  • 硬毛を伴います

3. 巨大型色素性母斑

  • 20cm以上の大きさ

  • 剛毛を伴う事が多いです。

  • 成長とともに拡大


ほくろ 治療法

直径数ミリ程度のほくろの場合

直径数ミリくらいの小さなほくろの場合は

  • 電気、レーザー、液体窒素などで焼きとる方法

  • メスやパンチなどでくり抜く方法

があります。悪性が疑われるときは組織を病理検査を行います。くりぬいた後は特に縫合は行われない事が多く、軟膏などを塗っていきます。

数ミリを超えたほくろの場合

数ミリを超えてくる大きめのほくろの場合、紡錐形に切除し、そこを縫うのが一般的です。2、3回に分けて切り取ることもあります。あまりに傷が多いと周囲の皮膚から局所非弁と言って皮膚を持ってきて、傷を塞ぐこともあります。これもできないほど大きい場合は、皮膚移植することもあります。

あまりに巨大なほくろの場合

あまりに巨大なほくろの場合レーザー治療や何回かに分けて、切除するなどを行います。このほくろ(母斑細胞)の皮下に袋(エキスパンダー)に生理食塩水を注いで、皮膚を予め伸ばしてから切除することもあります(エキスパンダーは取り出す)。2016年12月からご自身の皮膚を取り、培養して、表皮をつくり、移植するのが保険適応となりました。


ほくろと間違いやすい「皮膚がん」

ほくろは、黒っぽい天井の良性腫瘍の1つ、色素性母斑(母斑細胞性母斑)を指しています。ほくろだと思っていたものが、実は皮膚がんであったということもあります。見た目がよく似ているものに

  • 悪性黒色腫(メラノーマ)

  • 基底細胞癌

  • 有棘細胞癌

があります。この中でも最もほくろと間違われやすい悪性黒色腫についてご説明します。悪性黒色腫は転移しやすいので、早期発見をし、確実に治療する事が大切です。悪性黒色腫を疑う所見としては以下のようなABCDEで表されます。

A:asymmetry

左右非対称、不規則形

B:border irregularity

境界不整

C:color variegation

色調が濃淡多彩

D:diameter

大きい、直径6mm以上

E:evolution

形状が変化していく。例えば大きくなって行ったり、表面が隆起してきたり、色調が変化したりする事があります。

悪性黒色腫は日本人の場合、足の裏にできやすいと言われています。たまにはご自分の体をじっくり観察し気になるほくろは皮膚科へご相談ください。変化(大きさ、形、色、盛り上がり方)には特に注意してください。


ほくろと間違いやすい「良性腫瘍」

良性腫瘍にもほくろに間違いやすいものがあります。

脂漏性角化症

40代以降に現れる事が多い良性腫瘍です。中には30代の方でも現れる事があります。別名として、老人性いぼ(老人性ゆうぜい)と呼ばれます。身体中どこにでもでき、シミが盛り上がったものです。主に加齢とともに出現し、80歳以降ではほぼ全ての人に見られます。

軟性線維腫

主に首、脇の下、体幹などにできます。色は肌色で柔らかいです。皮膚から少し飛び出しているような感じ、加齢とともに増加や巨大化します。

神経線維腫

こちらは、1型と2型があります。

  • 1型は年齢に応じて、皮膚や神経系、骨などに多種病変が出現します。常染色体有性遺伝疾患だが、50~70%は孤発になります。カフェオレ斑が特徴です。

  • 2型は約4万人に1人の割合で発生、NF2遺伝子を原因とする常染色体有性遺伝。約半数は孤発です。カフェオレ斑は数個以下で神経症状も見られます(めまい、耳鳴り、難聴など)。神経鞘腫が特徴です。


さいごに

もし、ほくろの色や形が気になる、少し違和感があると感じたら、一人で悩まずに皮膚科を受診してみてください。クリニックや病院の選び方がわからない方は、まず悪性腫瘍指導専門医の認定医の先生が近くにいないか調べてみてください。もしお近くにいない場合は、次に皮膚科専門医がいるクリニックを調べてみるとより良いと思います。

執筆:愛知県あま市 はだめ皮膚科
https://www.hadame-hihuka.info/

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