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というわけで、今回は仙腸関節です。
初めに行っておきますが、お勉強の内容をまとめたものになりますので、かなり雑多です。


仙腸関節はその名の通り、仙骨と腸骨から成る関節で、医学的には強直性関節炎などのSpA(spondyloarthritis:脊椎関節炎)で問題となることが多いとされます。
ただ、SpAは決してありふれた疾患ではなく、特に高齢者ではOA(osteoarthritis:変形性関節症)の結果としての仙腸関節痛を考えなければなりません。

◆診察のポイント

・仙腸関節にピンポイントで圧痛があるか(one finger test)
・側臥位になって腸骨を垂直方向に押し、圧痛があるか
・Gaenslen test(ゲンスレンテスト):健側の股関節・膝関節を屈曲位で固定し、患側の股関節を下制することで疼痛が生じる
・Patric test(パトリックテスト):患側の股関節を屈曲し、踵を健側の大腿に交差させるように乗せ、健側のASIS(上前腸骨棘)を固定したまま患側の膝関節を開排することで、疼痛が生じる
・Newton test 変法:伏臥位で患側の後腸骨稜を手掌で押さえ、疼痛を誘発する
・Thigh thrust test(サイスラストテスト):患者は仰臥位に寝かせ、自身は健側に立ち、患側股関節を90°に屈曲させる(地面と垂直)。自身の片手で患者の仙骨を背側から支え、患側の膝から垂直に圧力を加え、患側の仙腸関節を圧迫する。
(参考:Thigh Thrust Test | SIJ Pain Provocation | SIJ assessment (physiotutors.com)

※ASIS:上前腸骨棘、腹側から触って腸骨の一番出ているところ
 PSIS:上後腸骨棘、背側から触れる腸骨稜の最下端。一番出ているところでもある(ハズ)。

ところで、骨髄穿刺の第一選択で「後腸骨稜」が第一選択と紹介されることが多い気がしますが、正式名称ではないのでしょうか?
あまり解剖の本で後腸骨稜という名前が出てくることは無いように思います。
「上後腸骨棘」を目指した方が穿刺しやすいですし、どうなんでしょうね……?

Patric Test 陽性は「仙腸関節痛」なのか?

先ほど述べたように、Patric testは股関節を開排する動作を行います。
それにより、(おそらく)大腿部が仙腸関節を圧迫し、疼痛を誘発するものです。
ただ、同時に股関節も動いていることから、当然ながら股関節由来の疼痛も誘発することになります。
そこで提唱されているのが、
患側の腸骨を固定した状態で行うPatric test」です。
これにより、仙腸関節が圧迫されず、
 ・仙腸関節由来の疼痛:誘発なし
 ・股関節由来の疼痛 :誘発あり
となり、より「仙腸関節痛 or 股関節痛」の鑑別が可能になります。
(参考文献、あったら貼り付けようと思います)


機能障害としての仙腸関節痛

(参考:日本仙腸関節研究会 YouTube 仙腸関節障害の診断とブロック法 (youtube.com)

おそらく逆説的な解釈になると思いますが、
機能障害としての仙腸関節痛とは、
CT・MRIなどの画像検査で異常のない仙腸関節痛
であると言えます。
だからこそ「機能障害」なわけですが。

そんな「機能障害」は、僕ら総合診療科で診察することも多くなります。
そして担当医がヤブだと
「心理的・社会的な要素が……」
などと言って、的外れな介入が為されてしまうわけですね。
不幸の始まりです。

仙腸関節痛は腰椎疾患に比べて、
 ・one finger test 陽性(8割)、特にPSIS 
 ・鼠経部痛(腸骨筋の関連?)
   ・膝立てしてもらい、ASISの内側に腸骨筋を触れる
 ・仙結節靭帯の圧痛(半分強)
   ・坐骨結節のやや頭側。下肢を内旋して背側から誘発。
 ・長後仙腸靭帯の圧痛(PSISのやや尾側)
とのこと。

また痛みの出る動作としては、
 ・正座は大丈夫だが、座位が痛む(おそらく、仙結節靭帯の圧痛による)
 ・仰向けが痛い(PSISに圧力がかかるためか)
 ・患側を下にした側臥位が痛い(単純に仙腸関節に圧力がかかるためか)
 ・寝返り(股関節の開排を伴うため?)
 ・立ち上がり(何故でしょう。教えてください)
 ・朝方に痛む(これも何故? SpAの動作開始時痛と同じ?)
とのこと。

仙腸関節痛に対するブロック

参考:超音波ガイド下仙腸関節ブロック (jst.go.jp)

ブロック治療は
 関節後方靭帯ブロック > 関節腔内ブロック
で有効性が高いとのこと。
というより、仙腸関節は奥に行くにしたがって外側にえぐれるような形をしており、なかなか直接アプローチをすることが難しいのだと思います(エコーだと、骨が邪魔で見えにくいハズ)。

さて、☝の「関節後方靭帯(ブロック)」とは、すなわち後仙腸靭帯のことで、コレは縦に長い靭帯であるため、疼痛部位を把握し、その高さに打つことが必要なようです。
注射は(機能障害であり)炎症を伴わないので、ステロイドを使わずに局所麻酔薬を使います。
針は23Gカテラン針。
プローブを後方にtilt
動画ではブラインドでやっていますが、今はエコーガイド下でやるのが一般的です。

仙骨・腸骨の位置関係は、下記動画が分かりやすいです。
(参考:仙腸関節を前方と後方から観察してみました。チームぱくチャンネル 【エコー攻略ガイド】 基礎から応用まで全て分かる!仙腸関節篇 其の1 (youtube.com)

基本的には長軸法でブロックを行います。中枢側から外側に向けて注射するので、術者は健側に座り、モニターを患側に置いて注射をするのが望ましいでしょう。

①PSISの高さで水平にプローブを当て、仙骨と腸骨を描出します。この時に仙骨・腸骨間にあるのが多裂筋です。
②さらに尾側にスライドさせると、腸骨が減高し、後仙腸靭帯が描出されます。下記の動画では、おそらくこの辺りで注射をしています。
仙腸関節内注射 (youtube.com)
③仙腸関節と後仙腸孔を描出します。これは、誤って薬液が後仙腸孔に流入しないようにするためです。
④長軸法で描出し、後仙腸孔の外側から仙腸関節付近を狙ってブロックを行います。
⑤下肢脱力がみられることがあるため、1時間安静にしてから帰っていただく。

仙腸関節ブロックは比較的安全な手技ですが、感染が現在進行形で存在する場合は禁忌です。
また、臥位安静を保てない人(小児や認知症患者など)も実施困難でしょう。


というわけで、今回は仙腸関節についてまとめてみました。

これは1000%聞きかじった知識なので、(いないと思いますが)これを見て真似をしないでください。
それでは、また次回!

(今回のお勉強メモです)



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