【意味がわかると怖い話・39】たくさん兄弟
僕には兄弟がたくさんいた。
そのため食事時は戦場と化す。
我先にと兄弟よりも食べ物を口に運びこむことが大切だ。
我が家では遠慮や思いやりなんか通用しない。
そんな物で腹は膨れないからだ。
兄弟が多く、この狭い家に閉じ込められた僕たちは生きるため必死なのだ。
さあ今日も食事の時間だ!
兄弟に負けるまいとモグモグと口に食べ物を詰め込む。
胃の中に入ればどれも同じだ。
僕はとにかく目の前の食べ物と思われる物を口の中へと押しやる。
幾日か経った。
あれ?なにかおかしい……。
兄弟たちと競い合うような喧騒が感じられなくなってきている。
僕はまわりを見渡した。
兄弟たちが少なくなっている。
兄弟の数が減り僕たちはいつの間にか静かで落ち着いた食卓を手に入れていた。
初めて静かに食事をとった。
こんなに落ち着いて食事をとることができるなんて。
僕は感動した。
口に運んだカニの味をゆっくりと味わう。
今まで僕にとって食事は生きるための活動でしかなかった。
それが今ではどうだ!
これはこんなにも旨いものだったのか!?
僕は人生で初めての味覚を得た。
僕はさらに感動した。
兄弟よありがとう。
【ネタバレ】
僕とは水槽に入れられたザリガニである。
生まれたばかりの彼らは飼い主にろくに餌を与えられず共食いを始めた数少ない生き残りなのである。