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【怪異譚】バルーンアート

  時々、大道芸人として、バルーンアートのステージなどをしている。

 現場での経験談として、先輩芸人から聞いた話だ。

 知っている人もいる方も多いと思うが、バルーンアートで使う細長い風船は硬く、口で膨らませることが極めて困難だ。
 なので、芸人の中には、一度に複数本をまとめて口で膨らませるという技を見せる人もいる。
 そこまでいかなくても、お客さんに風船を渡し、口で膨らませてと言って、お客さんの方が出来ずに、それが困難だということを分からせる、ということはステージ手法でよくあることで、私も実際に行ったことが何度もある。

 その日も、先輩は、そのようにして、何人かのお客さんに風船を渡した。
 「あんまり、無理しないでください。力みすぎると頭の血管、切れますよ」と軽口を叩いていると、一人のお客の様子がおかしい。
 必死に膨らませようとしている顔は、紫色になり、異常なほどに咳き込んでいる。
 「お客さん、無理しないでください。大丈夫ですか」と声をかけた時には、白目むき出しで、どう見ても、異常だろと思い、スタッフの方にお願いして、救急車を呼んでもらったという。

 気が気でないままにステージを終わらせたものの、そのお客さんが気になり、救急車で運ばれた病院へ。

 幸い、命には別状はなかったが、原因を聞いて、先輩は驚愕した。

 ラテックスアレルギーという天然ゴム由来のアレルギーが原因だったそうで、大道芸で使っていたバルーンが、合成ゴムでなく、天然ゴムを使っていたためアレルギーが起き、呼吸障害となったという。

 あまりにも少ない症例のため、発症する人は少ないらしいが、それでも用心のためにと、その後お客さんにバルーンを渡すときには、アレルギーの危険性などを一通り聞いてからというスタイルに変えたということだ。 

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武@ニイガタ
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