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【ふしぎ旅】猫山アイス
新潟県阿賀野市に伝わる話である。
昔、猫山に宮尾某という百姓が住んでいた。
ある日、前の小川で馬を洗っていると、馬がおかしな格好をして川の中へ入っていくので、力いっぱい手綱を引っ張って連れて帰り、厩につないでおいた。
それから、馬草を刈りに行こうと鎌を持って厩の前を通ると、奥のうす暗いところに目玉の光るものがいた。近づいてみると、ぬるぬるした動物で非常に生臭かった。
宮尾はこれが話に聞く河童だと思い、持っていた鎌で腕を切り落とした。
すると河童は悲鳴をあげて川の中へ逃げ込んでしまった。
その翌晩から、河童は「腕を返してください」と泣きながら、家の周りをうろついた。
あまりに、うるさいので「切り取ったものを、いまさら返してもしょうがなかろう」というと、河童は「オレは切り離したものでもすぐに接着する妙薬を持っている。その処方を教えるから返してください」と熱心に頼むので、宮尾はその腕を返してやった。
そして、打ち身と骨つぎの妙薬「アイス」の処方を教えてもらった。
これが有名な新潟市猫山宮尾病院の「河童相伝猫山アイス」だと言う。
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新潟県の河童の話の中では一番有名な話であろう。
現在も猫山宮尾病院は新潟市にある老舗の大きな病院として残っているということが大きな理由かもしれない。
また妙薬も平成元年までは製造されていたということで、伝説が形に残っている一例であろう
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名前の方も、猫の山に猫の鳴き声のような「ミヤオ」だから、可愛げがある。
とは言え、話としては河童の腕を鎌で切り落としたというものだから、妙な生々しさはある。
また、目玉が光り、ぬるぬるとして生臭いなど、怪物要素は十分にあり、あまり可愛らしくない。
それでいて、腕を切り離しても血は出ていないし、人間の言葉を話すなど、後半は妙にユーモラスな話となっている。
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そもそも、どうして、河童の秘伝の薬があるのかと言えば、河童は相撲が得意だから、相撲につきものの打撲、骨折などの対処を知っているだろうという考えかららしい。
だとすると、この話は最初は、普通に薬として売るよりも、霊験あらたかな薬とした方が売れるだろうという広告の宣伝文句のようなものだったのだろう。
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その話を真剣に受け取った者が、どういう風に河童に教えてもらったのだと、詰め寄ったので、妙に生生しい説明をつけくわえたというあたりが、真相だったのではないだろうか。
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他の河童にしてもそうだが、河童は厩に現れがちである。
そうでなくても、馬が水の中に河童によって引きずり込まれるという話が多い。
一説には、河童はもともとは水神様であり、古来は水神に供え物として馬を捧げていたから、その名残ではないかと言われている。
雰囲気的には、牛などでも同様の話がありそうだが、軽く調べてみるとそこまでは無さそうだ。牛には尻子玉がないのだろうか?
河童が、どのような動物を襲ったのか?
この辺りも興味深いところではある。
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