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『インサイド・ヘッド2』が大人気の理由とは?感情科学とアートが紡ぐ生き方ガイド


『インサイド・ヘッド2』が話題を呼んでいる背景には、感情科学の最新知見とアートの見事な融合があるのではと思います。この映画は、幼い子どもも、思春期の子も、大人も科学者も見応えがあるものになっていると思います。
感情科学を専門とする立場から、映画がどのようにして私たちの感情を巧みに描き出し、生き方をガイドしているのかを解説します。

今回のテーマは、「感情をコミカルに描いているのが面白い」という話です。

シンパイ (Anxiety)
シンパイは、未来を計画し、準備するための重要な感情です。私たちがまだ見えていない危険から守る機能があります。
映画では、オレンジ色(プルチックの感情の輪の警戒がオレンジ)で表現され、電気のように常にアンテナを立てているデザインがその性質を象徴しています。
不安が強すぎると暴走し、パニック発作を引き起こす可能性もありますが、この映画ではシンパイがどのように私たちの日常生活を支えているかが描かれています。

ハズカシ (Embarrassment)
ハズカシは、社会的なミスを防ぎ、他者との距離感を調整する役割を果たします。
ピンクのカラーで表現され、フードで顔を隠すデザインは、ことわざ「顔隠して尻隠さず」を想起させます。このキャラクターは、他人の目を意識する思春期にとくに目立つ感情です。

イイナー (羨望、憧れ Envy)
イイナーは、自分が理想とする人物を真似ることで学び、自分を成長させる感情です。ターコイズのカラーで描かれ、デザインモチーフはきのこです。このキャラクターが示すのは、他者への憧れを通じて自己成長を目指すというものです。羨望と嫉妬は似た感情ですが、映画ではイイナーのみがとりあげられています(当初、羨望と嫉妬を双子にするという案があったそうです)。

ダリィ (Ennui)
ダリィは、大人っぽく見せたり、無駄なエネルギーを使わないようにする感情です。紫色で表現され、思春期特有の「まあね」という態度で親との距離感を保ったり、好きな人であっても「すかした態度」で大人っぽく見せたりといった役割があることが示唆されています。
『インサイド・ヘッド2』では、専門家からみても最先端だなと思う感情科学と、それを分かりやすくコミカルに伝えるクリエイティブが見事に融合しています。
単なるエンタメ映画ではなく、科学からの生き方のガイドだと感じました。

著者は、感情認知や脳科学や認知行動療法を専門とした児童精神科医です。また、日々の日常生活にメンタルケアを応用すべくVRや動画やテキストなどの開発をしています。
今回は、幼い子どもがなぜ面白いと思うかを解説しました。今後も続きが書ければと思っています。


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