『インサイド・ヘッド2』と認知行動療法:コアメモリーと信念がどのように私たちを形作るのか
ディズニー&ピクサーの映画『インサイド・ヘッド2』を観て、「私は良い人」という花が何を意味するのか、疑問に思った方もいるかもしれません。ここでは、認知行動療法を専門とする精神科医として、この映画に隠された心理学の深層に迫ります。映画が描く「中核信念」と「コアメモリー」の概念を解説し、私たちの心にどのように影響を与えるのかを探ります。
「私は良い人」の花が示すもの
映画の中で、「私は良い人」というのを表す「白い花」が登場します。これに関連するのが、認知行動療法で言う「中核信念」です。中核信念とは、自分自身についての幼い頃に作られ得た自分自身の中心的な信念やセルフイメージを指します。例えば、「私は能力が高い」「私は人から好かれている」「私は価値がある」といった信念がこれにあたります。
中核信念が与える影響
「中核信念」は私たちの自己評価や感情に大きな影響を与えます。例えば、「私は能力が高い」と信じる人は、日常生活の中でその信念に基づいて行動しますが、失敗や問題が起きるとその信念が揺らぎます。テストで失敗したり、仕事がうまくいかなかったりすると、「私は能力が低いんだ」と考えて落ち込むことがあります。このように、中核信念は私たちの感情や行動に深く関わっているのです。
条件信念とその影響
「中核信念」に関連して生じるのが「条件信念」です。条件信念とは、「もし〜なら、〇〇だ」といった形で、特定の条件が満たされることで自分の信念が証明されると考えることです。例えば、「朝早くから練習すれば試合で成功するはずだ」「一人でより多く練習すれば、自分の能力が高いと思われる」といった考えが条件信念にあたります。
映画では、「条件信念」が、「中核信念」である「私は良い人」の花よりも簡単に形成されることが示されています。例えば、オレンジのラインで表されるシーンでは、幼い頃からつくりあげてきた中核信念があるので、それに比べると、条件信念がわりとすぐに形成される様子が描かれています。
コアメモリーの役割
映画では「コアメモリー」という概念がでてきます。コアメモリーは、感情ごとに色分けされた記憶で、ライリーの人格形成に必要な記憶が集められています。これらの記憶が彼女の行動や感情にどのように影響を与えるかが、物語の中心にあります。
認知行動療法でいえば、中核信念や条件信念に関連して、出来事がきっかけとなって、「自動的にでてくる考え」である「自動思考」が感情と結びつくので、自動思考と関連しているといえるかもしれません。
夢と最先端科学
また、劇中には「夢」に関するシーンもあります。現在の科学では、夢はなぜ見るかは明らかになっていませんが、一つの説として夢は「将来をシミュレーションして、危機を防ぐために見る」と考えられています。映画では、試合でのさまざまなシーンをシミュレーションし、危機を回避する様子が描かれています。このように、映画は最先端の科学的知見も取り入れており、精神科医としても非常に興味深い内容となっています。
まとめ
『インサイド・ヘッド2』を通じて「中核信念」や「条件信念」といった心理学的概念を理解することで、自分自身や他人の感情や行動をより深く理解する手助けになります。ぜひ映画を観る際に、これらの心理学的要素を意識してみてください。映画が描く心の世界は、私たちの内面を映し出す貴重な洞察を提供してくれるでしょう。