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アトピー肌で,保湿する方 しない方の水分量を測ってみた

 ここ数年,保湿のニーズが高まり,比較的高価な設定でも売れる保湿剤市場では,各メーカーが新商品を次々に発売してくれています.
 美しい人がより美しくなるための化粧品の世界においては,様々な保湿成分,美容成分を配合した製品を,欲しい人が欲しいだけ使ってくださればよいのですが,アトピー性皮膚炎や皮膚の疾患などの病的な肌に合う保湿剤を選ぶための情報が,あまりにも少ないと感じています.
 そこで,アトピー性皮膚炎患者であり,皮膚科医の自分の肌を有効利用し,まずは,保湿剤の軸となるヒルドイドシリーズが,実際どれくらい保湿力があるのかを,角質水分計という機械を使って測ってみました.

計測方法 にのうで 保湿ぬる方 ぬらない方

  リアルな日常での保湿に近づけるため,ふろ上がりの22時頃に,「にのうでの内側」の片側に保湿もう一方には何も塗らないという状態にして,翌日の10時(半日後),18時(20時間後)に水分量を計測.20時間もつなら,1日もったことになるでしょと思い,自分勝手に決めました.そして,どうして「にのうでの内側」かというと,太陽の紫外線があたりにくく,袖に囲まれている保護された部位で,測定もしやすいという便利なところであり,世界中で僕一人だけですが,にのうでがその人の肌の水分保持能力のポテンシャルを表すのに,最も適切な部位だと思っているからです
 例えばある日の22時に,ヒルドイドソフト軟膏を,右にのうでに優しくぬって,左にのうでには何も塗らない.翌日の22時には,ヒルドイドソフト軟膏を左にのうでに塗って,右にのうでには何も塗らない.そうやって,一つの保湿剤につき,原則3日ずつテストしました.
 保湿剤の計測の最大の難しいところは,外気の湿度に大きく左右されるというところなので,秋の11月から12月上旬に実施しました.

さすがの安定感 ヒルドイドソフト軟膏

 黄色の線(control)は,保湿しなかった方の水分量です.角質水分量は,30をきっていると「乾燥しているな」という感覚で,アトピー性皮膚炎などで皮膚炎がある部分は10をきります.皮膚が弱くない人は,だいたい40以上あります.
 初日と3日目では,保湿しなかった肌で16-22程度しかなく,やはり自分の肌は保湿をさぼると,30以下の乾燥肌になるんだなと実感しました.2日目は保湿しなかった肌でも30-40程度あり,調子のよい日もあるのだと感じました.
 ヒルドイドソフト軟膏はみなさん納得の,安定の保湿力が数値としても表れていて,乾燥する日でもそうでない日でも,10-15程度の水分量の増加をもたらし,ヒルドイドソフト軟膏の安定した保湿力が確認できました.20時間後までしっかり保湿の持続力も確認でき,30をキープできています.

 ヒルドイドソフト軟膏 安定の長持ち保湿力

ばらつきあるが,保湿力高いヒルドイドクリーム

 ヒルドイドクリームは,ソフト軟膏とローションに比べ,硬い保湿剤で重厚感があります.塗り広げるときに広がりにくいこと,白残りしやすいことが欠点です.でも,べたつきとぬりごこちのバランスが好きという方も多い,中間的な質感テクスチャーです.
 2日目には,安定した保湿力で,20-30の水分量の上昇を確認できましたが,初日と3日目の20時間後には,保湿しなかった方とほぼ互角となってしまいました.もしかしたら,ぬりむらができたり,とれてしまったのかと考え,4日目5日目の追試を行いました.
 4日目はテキトーではなく,めっちゃ丁寧に塗ったからなのか,30-40の水分量の上昇が確認でき,5日目には,肌の調子のよいときにも関わらず,10程度の水分量の上昇を確認できました.
 
 ヒルドイドクリーム ばらつきはあるが,安定した保湿力

 この辺まできて,保湿をするということは,本当に肌に水分の膜を張っていることになるんだなと,実感できます.

 いままで患者さんに,「保湿保湿」といってきて,本当にしっとりしてくる人は,ちゃんと塗っているんだろうなと想像するだけでしたが,前日の保湿がこんなにも,感覚的なだけでなく,ちゃんと数値的に差がでてくるものであることが実感できました.

これがおまえの本当の力か ヒルドイドローション

 ヒルドイドローションはソフト軟膏,クリームに比べて,圧倒的なのび,ぬりやすさをもっており,単なるアトピー患者として初めてヒルドイドローションをぬったときの感動は今でも忘れません.保湿剤の革命がおこったと思いました.
 ただ,やはりローションなので水分が多いため,ぬりごこちだけで,保湿力の持続力があまりないのかと勝手に思い込んでいました.ところがこれが,いい意味で裏切ってくれた結果になりました.
 初日と2日目,しっかりと乾燥した肌を10-20程度水分量を上げてくれています.そして,20時間後の肌もしっかりキープしてくれているのが確認できます.これには驚きでした.

ヒルドイドローション ローションなのに大健闘

他のローションの保湿力はやはりこんなもん

 これまで見てくださった方の中には,「保湿剤なら,結局何ぬっても同じじゃん,おもしろくない」と思う方がいらっしゃると思います.そこで,どこのローションとは明記しませんが,某ローションを試してみたところ,初日,3日目では,塗った方と塗らなかった方での差がほとんどなく,みなさんが感じる化粧水のイメージにしっくりくるデータになったかなと思います.水分だけでは,顔を洗ったのと同じようになり,すぐに角質から抜けていってしまいますね.

結論 やっぱり保湿はちゃんと,効果がある

 ヒルドイドシリーズは,これだけ世間の評価が高いだけあって,どのタイプをみても,保湿力が高く,ローションでさえ,1日は十分にキープされることがわかりました.この結果からは,保湿力の高いものをぬったり塗らなかったりするのではなく,ローションでいいので,毎日習慣をつけるということが効率的であることが分かります.もちろん,ソフト軟膏,クリーム好きであればそれでOK.そして,某ローションなどのさっぱり系のものは,中にキープする水分として使ったり,脂性肌で逆に乾燥させたいときに使ったりと,別の用途に重宝します.
 それぞれの特性を究めて,使い分けられるようになれるといいですね.

注意 湿疹があるところは,また違う結果になると思います

 最後に注意としては,今回はいちアトピー性皮膚炎患者の肌で,非皮疹部を使ったこころみでした.皮疹部,つまり,さまざまな程度の湿疹の部位で試した場合にどうなるか,その情報を僕はまだ,見たことがありません.

 自分の感覚でいえば,かいてしまったばっかりの皮疹部には,水分を多く含むローションのようなものはただただしみて痛いだけのもの,100%油性がよいのだと思います.そう考えれば,やはり,湿疹局面がまだまだ多い人の皮膚には,ヒルドイドソフト軟膏のようなエモリエント油の割合の多いものが合うと思います.

 やけどでめくれた皮膚に,水をつけるととんでもない痛みで,ワセリンをのせると痛みが楽になりますね.すりむいた傷でも同じですね.

 湿疹がある程度落ち着いた乾燥肌には,「基本ヒルドイドローション,たりないと感じる,すね,おなか,うでには,クリームか,ソフト軟膏を追加」というのが,ヒルドイドの基本というところでしょうか.

 

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