見出し画像

2025ヘルスケア・ライフサイエンス注目領域

あけましておめでとうございます!
2024年も大変お世話になりました。ヘルスケアからバイオからITからディープテックまで幅広く投資させていただき、一般社団法人JHIHでも多数の企画を通じてエコシステムへの貢献を自分なりに進められて、とても充実した1年でした。ご縁があった皆様ありがとうございました。

2025年の個人的な目標として、投資先の支援に繋がるネットワークと知見を更に深めつつ、発信活動の中では文章を書いて残すということにより取り組むことにしました。というわけで、年明け1件目として2025年に個人的に注目しているヘルスケア・ライフサイエンス関連のテーマをいくつかご紹介させていただきます。去年は①AIの実用化が進む ②フェムテックは研究や企業連携が本格化③疾患特化のプラットフォームが増える、の3点をこちらのForbesの寄稿で述べさせていただきました。今年はどんな1年になりそうか。ぜひみなさんの感想やお考えも聞かせてください。

では早速参りましょう!


toC向けAIヘルスコーチ


ウェアラブルの普及が進みAIや大量データの解析技術も発展する中、デジタルツインと究極の個別化医療の実現が現実味を帯びてきているかと思います。中でも個人的に注目したいのは、toCビジネスモデルで個人の健康管理をサポートしてくれるAIヘルスコーチです。このような構想自体は以前から叫ばれていたもののなぜあえて今年特に注目トピックとして挙げさせて頂こうと思ったのか—

▶ アメリカでの先行トレンドとして、Amazon Health等toC向けの便利なサービス、Sam AltmanによるヘルスAIコーチ会社の設立等が話題になっているところで、日本にも波が来ると思っています。参考:

▶ 日本でもピル処方、皮膚科、漢方、メンタルヘルス等の自由診療中心に便利なデジタルヘルスサービスに自費課金する流れが来ています。直近でも話題の高額療養費の改訂等も受け、予防意識は高まり、自分で自分の健康を管理するために保険外でもお金を払うという感覚が徐々に増すのではないでしょうか。

▶ ウェアラブルの台頭を通じて使える個人の健康データが蓄積×ビッグデータ解析技術・AIの成熟という観点からも、改めて波がきていると感じます。

余談ですが最近久しぶりに人間ドックを受けて、あまりにも非効率的で、予防医療や個人を主体とした健康管理にはなんて改善の余地があるんだろう…と感じたのも一因です。笑 健診という日本特有の健康データのアセットをレバレッジすることも可能な領域なので、長寿国の底力も見せたいところです。まずはアーリーアダプター/富裕層向けに普及し、時期を見てマス向けのインフラになることに期待します。

AIヘルスコーチはもちろん、ウェアラブルデータの活用やコンシューマー向け医療サービスなどのキーワードがピンとくる方ぜひお話しさせてください!

ヘルスケアagentic AI

Agentic AI自体は色んな方が最近注目されているので今更話すこともと思いますが、ヘルスケア領域どうすれば普及が加速できるか考えているところです。NVIDIAのサミットでもagentic AIが取り上げられたり業界全体として注目度が高まっていますし、

直近ではLayerX福島さんのこちらのブログもとても勉強になりました!

米国での内訳になりますが、agentic AIの予備軍となるような医療事務効率化系AIのベンチャー投資は非常に伸びています。臨床(緑)や創薬(ピンク)と比較し、紺の医療事務効率改善ツールの投資比率が案件数べ-スで特に伸びていることが下の図からも明らかです。臨床で診断や治療に使われるAIと比較し規制ハードルも低いため、挑戦しやすい領域になっているのも一因でしょう。("low hanging fruit"と下記資料でも述べられています)

SVB The AI-Powered Healthcare Experienceより

例としては、対患者向けのチャットボットやスケジュールツール、カルテ記載支援、保険請求等医療ジム支援ツール等が挙げられます:

SVB The AI-Powered Healthcare Experienceより

国内でも当然医療現場の事務作業を軽減するようなagentic AIが普及すると読んでおりまして、特に今年は注目して投資活動行っていきたいと思っている領域の1つです。

この際日本で難しいと思っているのが病院DXのペースが非常に遅いということです。赤字経営の病院が多い一方新しい取り組みへの腰は重く、なかなか経営改善や人件費の削減が見込めるようなソリューションでも導入が進みづらいです。このような状況を鑑みると、勝ち残るプレイヤーは以下2点の特徴を兼ね備える必要があると思っています。

▶2段階に分けて推進していくこと
1段階目としてはco-pilotという立ち位置で、現在既に過重労働で疲弊している医療従事者、医療事務スタッフをサポートするようなツールをから始め、その先に2段階目としてagentic AIに置き換えていくような座組です。初期導入フリクションを下げるプロダクトで入りつつ、最終的にはagentic AIまで到達できる開発力が必要となってくると思います。

▶様々なco-pilot & agentic AIソリューションのパッケージ化をすること
導入ハードルの高さから、最終的には数少ない大きなプラットフォームがあらゆるソリューションを統合して病院にパッケージ化して提供するような時代になるのではと考えております。すでに病院への営業チャネルがあるプレイヤーが非常に強みを発揮するところですので、M&Aを通じてソリューションの手数を増やしながらアップセルして病院全体のDxを担うということも十分に考えられるかと思います。

女性の健康領域のディープテック

女性の健康領域では、ここ数年ずっと福利厚生やオンライン診療等デジタルヘルス寄りのフェムテックが比較的話題ですが、個人的には女性の健康に関するディープテック(バイオテック・ライフサイエンス)技術に今年は特に注目したいと思っております。

そもそも女性の健康領域のイノベーションのボトルネックとなっているのが、本領域の基礎研究が足りていないという点です。2年前に書いた記事でもこんな統計を引用しています:

Women have been excluded from health data for too long. As a result, women are misdiagnosed up to 50% more often than men, are more likely to be dismissed without treatment and are also 50 to 75 percent more likely than men to experience an adverse drug reaction. It was not until 1993 that the National Institutes of Health (NIH) finally required their research to include women and only in 2016 that it required researchers to consider sex as a biological variable in preclinical studies of animals and cells. Combine all that with the paucity of female researchers and data scientists, and it’s obvious that the data gender gap is one of the most critical hurdles in improving women’s health.

(要点の訳)
- 女性は男性より50%多く誤診断されやすい
- 女性は男性より50-75%多く薬剤の有害事象を発症しやすい
- 臨床研究や治験に女性も含めたり性差も考慮することが必要要件となったのはここ数十年の話
- 女性研究者が不足していることも大きな一因

”Data & AI in femtech: How can innovators effectively close the gender data gap?”

本質的に女性の健康を改善しようと思うと、診断の速度を上げる・新しい治療法を開発する等ディープテックのイノベーションが切に求められていると思います。具体的には更年期領域の創薬、IVFのアウトカム改善、婦人科がん検診の効率改善、周産期のリスク検知サービス等に関心があります。ぜひ、これら以外でも、女性の健康×ディープテックに取り組む皆様、お話しさせてください!!

バイオディフェンス

最後のトピックはディフェンステックの領域です。デュアルユースを推進していこうというトレンドはここ1年でメディアでも見られてきているかなと思いますが(経産省のリンク)、いよいよ防衛省が防衛イノベーション科学研究所という施設を設立するなど、本格的にスタートアップ連携に力を入れ始めているところです。中でもライフサイエンス領域との融合という観点では、いわゆるバイオディフェンスという領域に注目したいと思います。

こちらが防衛省が注目しているディフェンステック技術領域の表になります。バイオの領域だと、バイオテロに対するセンシング技術、誤情報・誤認識から国を守るブレインテック等が挙げられています:

防衛省「安全保障分野における産学官の研究開発 エコシステム構築」より抜粋


現状は明らかにデュアルユースを謳っているバイオテックスタートップあまり国内では見られないのかなと思いますが、政府がますますバイオテック×ディフェンステックの支援を進めていく中で、一定政府の支援も受けながら成長していくようなポテンシャルがあると思っております。ぜひこのようなデュアルユースの文脈を一緒に作りたいバイオテックのスタートアップの皆様、お声掛けいただければと思います。

該当領域や周辺領域で活動される皆様、ぜひお気軽にお声掛けください。美味しいコーヒー飲みましょう☕️それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

PS 本記事はニュースレターとしても配信しております。メールボックスに直接受け取りたい方はぜひこちらからご登録ください👉 https://substack.com/@healthcaredayori

いいなと思ったら応援しよう!