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自治体と宗教施設・団体との災害時協力に関する調査

 本格的な出水期を迎えます。避難所不足が懸念される中、宗教施設が避難所になれるのか、新聞社やテレビ局から問い合わせがあります。政教分離原則があるから無理では、という誤解もあります。まずは、以下の調査報告の主要な部分をシェアします。

稲場圭信、川端亮(2020)「自治体と宗教施設・団体との災害時協力に関する調査報告」『宗教と社会貢献』第10巻第1号, pp.17-29.

調査の概要調査対象  全国の自治体(市区町村)1,741 全数調査
調査時期  2019年12月~2020年2月
     (2019年11月時点の状況について回答依頼)
有効回答数 1,123(回答率64.5%)

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調査結果
宗教施設との災害協定の締結および協力関係の概要
 災害協定を締結している自治体は121で、回答した自治体の10.8%にあたる。指定避難所は661宗教施設であった。協定は締結していないが協力関係がある自治体は208で、回答した自治体の18.5%にあたる。指定避難所は1404宗教施設であった。宗教施設が収容避難所として499施設、一時避難所として1566施設指定されており、合計2065宗教施設が指定避難所となっている。協定締結と協力関係を合わせると、災害時における自治体と宗教施設の連携は、自治体数で329、宗教施設数で2065にのぼることがわかった。以下の表の通りである。
      協定締結、協力関係、避難所指定の宗教施設数

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 協定締結や協力関係もなく、検討もしていない理由宗教施設との協定締結や協力関係もなく、検討もしていないと回答のあった自治体は689であった。検討していない理由としては、「現在の避難所で被災想定人数を収容可能」が30.8%、「避難所となりうる宗教施設が無い」が25.1%であった。

災害時に宗教施設・団体と連携しない理由
 災害時に宗教施設・団体と連携した経験がないと回答した自治体は1001であった。連携しない理由としては、「連携を必要とする災害が無かった」25.5%、「既存の避難所で対応可能」が6.5%であった。

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近年の災害時における宗教施設・団体との連携の内容
 近年の災害時に宗教施設・団体と連携した経験があると回答した自治体は109であったが、連携の内容としては、「一時避難所」を回答した自治体が83(76.1%)、収容避難所を回答した自治体が27(24.8%)、「救援・支援活動の受け入れ」を回答した自治体が11(10.1%)であった(複数回答有)。

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宗教施設・団体との今後の連携
 宗教施設・団体との今後の連携については、346(30.8.%)の自治体が「より積極的に連携したい」、61(5.4%)の自治体が「連携している現状を維持」、582(51.8%)の自治体が「連携は考えていない」、116(10.3%)の自治体が「今後検討する」と回答した。「より積極的に連携したい」具体的な内容としては、「一時避難所」を回答した自治体が155(44.8%)、「収容避難所」を回答した自治体が127(36.7%)、「救援拠点」を回答した自治体が30(8.7%)であった(複数回答有)。

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まとめ
 本調査で、自治体と宗教施設・団体の災害時協力の動きが広がっていることがわかった。また、政教分離の考え方が災害時協力の障壁になるケースはごく少数であることもわかった。
 災害協定を締結している自治体は121、指定避難所は661宗教施設で、2014年の調査時の95自治体、272宗教施設から大幅に増加している。協定締結と協力関係を合わせると災害時における自治体と宗教施設の連携は自治体数329で、2014年の調査時の自治体数303から1割近く増加している。
 収容避難所として指定されている宗教施設は499で、2014年の調査時の678から減少している。一方で、一時避難所として指定されている宗教施設は1566で、2014年時の1,425から増加している。このあたりの分析については、別途、論文としてまとめる予定である。

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*本調査は以下の研究費を受けている。
科学研究費基盤研究A「宗教施設と行政と市民の連携による減災・見守り」2019-2023(代表:稲場圭信)

表を含めて詳細は、以下をご参照ください。

稲場圭信、川端亮(2020)「自治体と宗教施設・団体との災害時協力に関する調査報告」『宗教と社会貢献』第10巻第1号, pp.17-29.
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/75539/


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