なぜ変われないのか
今まさに読むべき1冊だ。山本七平は、イザヤ・ベンダサンの名前で出版した『日本人とユダヤ人』がベストセラーになり知られるようになった。『「空気」の研究』や『日本人とは何か』など日本人論を展開した。本書『なぜ日本は変われないのか 日本型民主主義の構造』は、1975年から1976年にわたって連載された「日本型民主主義の構造」を編集して、2011年に一冊の本として刊行されたものである。今から45年も前の論考だが、今まさに読むべき1冊ではないか。
日本には「個」の組織化である「民主主義」の基礎であるべき、組織(システム)という概念がない。欧米をはじめ世界の多くの組織が合理的にできた「幾何学的組織」であるのに対し、日本は擬制の「組織的家族」であり、その目的は存続することにあると山本は指摘する。
このような組織(システム)なき組織的家族の日本では、総政治化と非政治化が約15年周期で繰り返されててきた。政治に関係なき限り、言論・表現・信教・職業選択・居住・レジャー等の自由が保障される官憲主義は、政治的問題となり得る面を非政治化するための統制である。この非政治化が、ある時には、総政治化(全体主義)を求めて動き出す。それは、日本には、個の組織化である民主主義がなく、擬制の組織的家族が存続することを目的としているからだ。
官憲主義も全体主義も、コインの表裏で、通常性(日常性)に立脚してはじめて人びとが動く。そうでない限り、現実に人びとを動かすことことはできないと山本は指摘している。では、このような日本はどのようにして変われるのか。社会変革につなげていけばよいのか。その方法論を山本は示していない。(山本は多くの著作をエッセイ風に書しており、論文として書いているわけではないので、明確なリサーチクエスチョン、調査方法、結論、インプリケーションといったワンセットが無いのを承知しており、そのことを批判しているのではない。)
自らが変わるしかないということか。ガンジーの言葉が頭に浮かぶ。
日本だけの問題ではない。『なぜ人と組織は変われないのか』では、変わらないのは、変化に対する防御システム(心理的なジレンマ)にあるとする。変化に対して自分を守ろうするメカニズムを解き明かにしている。
身近なところにも同じ問題がある。やはり、まずは自らが変わることか。
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