コロナシフト〜リアルなアメリカの現在〜①「人々の消費行動と大統領選挙のゆくえ」
こんにちは!私たちデジタル&フィジカルデザイン編集部では、「リアルなアメリカの現在(今)」を全3回のシリーズ連載として立ち上げました。アメリカ在住の方からのリアルな声に耳を傾け、コロナ渦におけるアメリカの課題やデジタルシフトによってもたらされた消費行動の変化、大統領選挙のゆくえを紐解いていきます。
第一回目のテーマは、「人々の消費行動の変化と、大統領選挙のゆくえ」。まず最初にインタビューを承諾頂いた「Mike Uesugiさん(以後Mikeさん)」についてご紹介します。(※このシリーズは個人の見解も含まれるため、一つの考察として捉えて頂ければ幸いです。)
Mike Uesugiさんプロフィール
Q:Mikeさんのお仕事の経歴と、現在カリフォルニアで取り組まれている業務について教えて下さい。
Mikeさん:私のファーストキャリアはAppleです。4年ほど在籍し、IBMに転職して2年ほど働きました。その後1993年に独立してシステム関連の会社を立ち上げ現職となります。独立当時はシステムコンサルティング(アメリカにある日系企業のシステム関連)に携わっていました。それと同時にまた10年ほど前から、別会社でソーシャルリワードという会社を高校の同級生と立ち上げました。ソーシャルメディアのインフルエンサーを育てるような事業です。様々な企業の反応をSNSで追うためのプラットフォームなどを構築しています。
アメリカ大統領選挙、現地から見てどうだったのか。
今回のアメリカ選挙は、アメリカ建国史上最高の投票率(73.7%)と言われています。1900年以降で最高と言われるほどの投票率と、バイデン候補勝利にあった背景を探ります。
Q: アメリカ大統領選挙から数週間が経ち、ほぼバイデン候補が次期大統領になるのではと日本では報道されています。日本から見ると今回の大統領選は大混乱しているように見えました。実際の現地での様子はどのような状況でしたか?
Mikeさん:現地でもバイデンがほぼ勝つだろうという雰囲気があります。今回なぜバイデンに勝敗が上がったかの予測をしていたのですが、「コロナ渦」というのはひとつのキーワードであると感じました。コロナによって、たくさんの人が職を失い、生活苦になったからです。苦しい状況下に置かれている人が多い中で、政府の「救済の少なさ」が課題のひとつでした。
1回目の支援はすぐにありましたが、2回目の支援が予定されていたにもかかわらず多くの人が期待していたものではなかったんです。その結果、倒産した企業もありました。トランプ大統領が率いる共和党はいわゆる「スモールガバメント(小さな政府/関与しすぎない)」という方針です。一方のバイデン候補の在籍する民主党は「ビッグガバメント(大きな政府/深く関与する)」という方針。国が困っている人に対して積極的な救済に関わっていく、という姿勢です。
正直な話、新型コロナウィルスが流行る前のアメリカであれば、ビッグガバメントである必要はありません。フリーランスや起業する人が多い国ですので、政府に頼らずとも自力で自走していける人が多いからです。しかしながら今回は自力での自走が難しく、政府から支援を求める人からの票が多く集まったのではないかという声を聞きます。トランプ大統領、バイデン候補共にスキャンダルは出ていましたが、そこまで大きく影響しなかったのはそういう理由もあるからではと捉えています。
Q: 新型コロナウィルスの影響が、今回の大統領選挙でも大きな影響をもたらしたのですね。アメリカの選挙活動は、テレビCMが中心なのでしょうか?
Mikeさん:テレビだけでなく、ネット、SNS、デジタルに関連するもの全て(※1)で行われていましたね。また、企業からの投資が多いと言われていたのはバイデン候補だと聞きました。現地にいても、様々な情報が錯綜していたので何を信じたら良いかわからない人は多かったと思います。
(※1)アメリカでは、SNSを駆使した選挙活動が活発化していますが、その中でゲームを選挙キャンペーンに積極的に取り入れているのが民主党。オバマ大統領のときにも、ゲームを使ったPR活動はありました。バイデン候補は「あつまれ!どうぶつの森」の中に選挙キャンペーンに取り込みましたが、ゲームを楽しむ層に呼びかけるとともに、「ゲーム・カルチャーにも理解を示している」という姿勢をアピールする狙いもあるとのこと。日本もこれぐらいフランクでカジュアルに政党に興味を持ってもらえるような取り組みがあると良いですよね。
POINT
・コロナ渦になり人々の生活への意識が変わった結果、政党の支持が変わった可能性がある
・アメリカの選挙活動はデジタルツールを駆使し様々な層に呼びかけている
イラスト版権元:<a href="https://www.freepik.com/vectors/usa">Usa vector created by freepik - www.freepik.com</a>
コロナで180°変わってしまった、アメリカの暮らしと働き方。
Q: 新型コロナウィルスによって日本でも働き方や生活スタイルが大きく変化しました。アメリカはコロナの影響がより深刻だと聞いていますが、カリフォルニアでの働き方や生活についてはどのような変化がありましたか?
Mikeさん:アメリカは二極化している状態です。保守的な人たちは、フルリモートで働くようなスタイルを選択しています。例えばある航空会社などはコールセンターもリモートでやっていると聞きました。その一方で完全にマスクをしないような人たちがいるのも確かです。
Q:フルリモートでの働き方は増えているんですね。その場合は基本、在宅でしょうか?
Mikeさん:はい、フルリモートの場合は基本在宅です。学校などはまだリモートの状態で開かれていないので、子供も親も大変です。通勤や通学が必要なくなり、働き方が大きく変わったため都会から田舎へ引っ越す人も増えています。ニューヨーク、サンフランシスコ辺りが物価も家賃も高いため、大変な状況と聞きますね。その辺りにいた人たちが、ニュージャージー、ニューハンプシャーなどに移動していく。その結果、州の支持政党が一気に変わるということもあるそうです。例えばカリフォルニアといえば、民主党支持者が多いんです。はたまたアリゾナ州は共和党支持者が多い。ただ、今回カリフォルニアから移動してきた人が増えたため、アリゾナに民主党支持者が増えたというような話も聞きますね。働き方、暮らし方が180°変わったことによる反動として、家にいることが増えた結果、鬱やDVなどの社会問題が増えつつあるのも課題に挙げられています。
Q:本当に大きく暮らしや働き方が変わりましたね。日本は非常事態宣言が解除されてからは、徐々に警戒が解かれ、ある程度は自由に消費活動ができるようになっています。アメリカでは、ショッピングモールやレストランは利用できますか?
Mikeさん:実はつい最近まで、ショッピングモールは閉まっていました。そのため、オンラインで注文して配送してもらうか、カーブサイド・ピックアップ(※2)などのサービスを利用するような状態でした。最近ようやく開いたのですが、絶対条件でマスク、ソーシャルディスタンスを徹底するなど、かなり厳しく制限しています。ただ、フードコートはすべて閉まっているので必然的に閉店しているところも多いですね。
(※2)カーブサイド・ピックアップとは、ネットで注文して店の前の駐車場で注文品を受け取るサービスのこと。車から降りることなく商品を受け取れるので、接触時間を避けることができるコロナ渦でのニーズが高まっている。もともとは、子供をもつ母親や足の悪い高齢者などに需要があったとのこと。米ウォルマートは6月11日、会員制倉庫店のサムズクラブで、車に乗ったまま商品を受け取れる「カーブサイドピックアップ」を米国内の全店に広げるなど、需要は高まっているようです。
画像引用元;https://diamond-rm.net/overseas/57523/
Q: お話を聞く限り、長期的に閉まっていた印象を受けます。ショッピングモールの経営は大丈夫なのでしょうか?
Mikeさん:少しずつですが、動き始めたのでこれから徐々に立て直してくるのではないかとみています。店舗での購入が難しくても、オンラインで注文・配送してもらうというスタイルが定着してきましたから。また、コロナが落ち着いたとしてもオンラインで完結できるようなサービスは普及していくと思います。お店に入らなくても持ってきてくれることの便利さに人々が慣れ始めているからです。
ちなみに、レストランもお店によっては入れない状態でした。そのため、外のパーキングにテントを貼って、その外のテントでサービスを受けるという形態になっているところもあります。そのような状態でわざわざ外で食べたいと思う人は少ないため、やはり全体的に厳しい状況でしょう。コロナで閉店しているお店は多いので、デジタルでの接点やアプリがないと顧客とも繋がることもできません。そのため、個人経営のお店は厳しい状況下におかれているように見受けられます。そんな中、アプリなどでユーザーとつながっているチェーン店(スタバなど)は売上がそこまで下がっている印象は受けません。
Q:なるほど。ということは、現在のアメリカでの生活においてアプリなどオンライン上で利用できるツールはとても重要な役割を占めていそうですね。
Mikeさん:アメリカでアプリはないと生きていけない、といっても過言ではないぐらいマストな状態です。それぐらい普及していますし、人々の生活に溶け込んでいます。
Q:お話をありがとうございました!
第一回目のまとめ
新型コロナウィルスにより、大統領選挙や人々の消費行動に大きな変化が現れていること、アメリカのリアルな”今”を感じ取れるお話でした。アメリカはすでにデジタルシフトがかなり進んでいるように見受けられます。今回伺ったお話を元に、第二回目ではアメリカで必要不可欠なアプリやサービス」はどのようなものかを具体的に伺えればと思います。
次回の第二回目も是非ご覧ください!