アバター接客が、社会問題を解決するコミュニケーションとなる?「AvaTalk」の開発秘話をインタビュー。(前編)
こんにちは!本日のデジタル&フィジカルデザインのテーマは「アバター接客」についてです。近年、非対面・非接触を叶える画期的な技術として、企業が導入・検討し始めています。アバター接客の中でもひときわ群を抜いて突出しているのが、HEROES株式会社の提供している「AvaTalk(アバトーク)」。
各業界から導入希望のラブコールが止まない「AvaTalk」を提供されている、HEROES代表の高崎さんにお話を伺いました。前編・後編の2回に分け、以下の内容をお聞きしていきます!
[ インタビューサマリー ]
・「AvaTalk」の構想、立ち上げの経緯や課題
・ユーザーに受け入れられると感じたタイミング
・アバターのデザインはどうあるべき?(後編)※2/18(木曜公開)
・アバター接客のニーズが高まる業界やサービスとは(後編)
・HEROES、今後のビジョン(後編)
HEROES株式会社 高崎さんプロフィール
アバター接客とは、どのようなものか?
アバターに扮した人が、お客さんと遠隔で会話をするというのがアバター接客の基本的なサービスです。コロナ渦において非対面・非接触が求められたり、雇用創出の点でも、ここ1〜2年で急速に認知と拡大が始まっている画期的な技術。リアルな人がアバターに扮して会話をするため、AIでは対応しにくい「リアルタイムで円滑なコミュニケーション」を行うことができます。
アバター接客「AvaTalk」の構想が始まったきっかけは、「広告代理店時代の医療プロジェクトで感じた課題」だった。
Q:私自身、ワコールのパルレ(※1)での体験がきっかけでAvaTalkを知りました。コロナ渦で非対面・非接触が主流になりつつあり、ユーザーや企業にも「アバター接客」という技術そのものの認知が始まっている段階だと感じています。AvaTalk自体は、いつ頃から構想がはじまっていたのでしょうか。また、そのきっかけがありましたら教えてください。
高崎さん:HEROESの創業は2017年の3月で、今年で丸4年になります。私は2016年12月末まで広告代理店に在籍し、主にデジタル周りのクリエイティブに関わるプロデューサーをしていました。
広告業界は20年ほど在籍していましたが、プロジェクトを通じて「社会が作られる上で、人と人とのコミュニケーションが重要である」ことを強く意識するようになりました。日常会話を通して人間関係が生まれ、やがて大きなコミュニティやマーケットになっていく社会構造を考える上で、とても大切であると。
時代が移り変わる中で、携帯電話の登場によりSNSが普及し、よりグローバルな形で世界と繋がることができる「コミュニケーションとテクノロジー」が掛け合わさっていく流れがありますが、もう少し人間的に踏み込んだ、「バリアフリーなコミュニケーションを提供する場所」を作りたいなと思うようになりました。
(※1)ワコールのアバター接客パルレと体験記事
Q: 広告代理店時代のプロジェクトを通じて、人と人とのコミュニケーションが重要であるということを実感されたとのことですが、具体的なエピソードがありましたら教えてください。
高崎さん:広告代理店時代の後半3年間に携わった、ある病院のプロジェクトが大きなきっかけでした。がん患者の術後ケアや、社会復帰して元の生活に戻るためのプラットフォームを作るという内容です。このプロジェクトに関わったことで、心を閉ざした人や抱えている悩みを相談できるプラットフォームがないことに気づいたんです。FacebookやTwitterは元気な人や、自分のPRをしたい時に発信できるSNSである一方、センシティブな話を相談しにくいですよね。「より人の心に寄り添える場所を作りたい」という思いを確信したんです。その後に広告代理店を退社し、HEROESを立ち上げました。ヘルスケアや教育などの分野においてのコミュニケーションを円滑にできる場所を作る、というミッションを持っています。
Q: その想いを元に、HEROESを立ち上げられたのですね。そこから、AvaTalkにどのように繋がっていったのでしょうか?
高崎さん:会社を立ち上げてから、半年ほど経った頃にAvaTalkの前身となるアバターコミュニケーションの原石に出会いました。ヘルスケアなどの分野で活用できるのではと思い、2018年1月に開発着手しました。
ファーストアイデアは、「お互いがアバターで自分の容姿を隠す」というもの。コミュニケーションはコトバだけではなく、表情やカラダの動きも重要であると考えております。話している人の動きとアバターが連動することで、話しやすい、伝わりやすいコミュニケーションが成立すると考えました。そして、2018年の秋頃にPCのβ版をローンチしました。
Q :AvaTalkの構想から、β版ローンチまでのスピードが非常に早いことに驚きました。
高崎さん:ローンチは早かったものの、PCのスペックに左右されるなど、普及させにくい状態でした。それでも、大きいPCを2台持ち込みながら、導入を進めたかった医療業界の世界に売り込んでいきました。
Q:その当時、何か反応はありましたか?
高崎さん:アバターではなく、メールやLINE、Skypeでもいいのでは?と受け入れられる雰囲気ではありませんでしたね。プロジェクトメンバーと議論を重ねる中で、「PCのスペックに左右されない状態でのサービス提供」と、「人々にアバターのコミュニケーションが受け入れられるのか・必要とされるのか」という課題と仮説が浮かびました。
それらを確かめるために、アバターが接客をする立ち飲みバーを実験的に立ち上げることにしたんです。
実験的に始めたアバター接客の立ち飲みバーの、想像以上の反響に驚く。
Q:アバターが接客をする立ち飲みバー、というコンセプトが面白いですね。具体的にどのような内容で実験されたのでしょうか?
高崎さん:2019年の4月頃から中野ブロードウェイの一角で、アバターが接客をする立ち飲みバー「AVASTAND」を実験的に開始しました。「聞くに聞けない、言うに言えないアバトーク」というコンセプトです。自宅にてアバターに扮した店員が、中野のバーにいるお客さんと会話するサービスです。中野という場所柄もあり、オープン後から想像していた以上にお客さんに受け入れられたんです。
Q: どのような人がアバター店員だったのでしょうか。
高崎さん:大学生、主婦、高齢者、芸人の卵、声優志望の方など、老若男女問わず応募がありました。自分を表に曝け出さなくてもいいという意味での需要が多く、アバターで働きたいと言う人のニーズも感じました。
Q: 想像以上の反響ですね!この実験で得られたことはありますか?
高崎さん:半年間で延べ5000人の方に来店してもらうことができました。友達が少なかったり、女性の一人客が多かったですね。気楽に話せる場所がない、人と話すのが苦手だけれどアバターなら目を合わせなくていいから話しやすいなどの具体的なニーズを得られることになりました。また、男性は家などのクローズされた空間でやってみたいという声がある反面、女性はオープンだからこそ気軽に話せるという声もありましたね。平均滞在時間も60分〜90分ほどで、相手がアバターだと会話が苦手な人であっても長い時間会話できるというという結果も非常に大きな収穫でした。
AvaTalkがサービスとして加速する、Withコロナ時代へ。
Q:「ユーザーに受け入れられるか」という観点を検証するために始めた立ち飲みバーで、さまざまな角度から「リアルな声」を感じられたというのはサービス立ち上げにあたって非常に大きな成果ですね。
高崎さん:はい。この実験で手応えを感じたことから、2019年の年末にAvaTalkのアプリ版をリリースしました。お互いがアバターになり、情報交換や悩みなどを話せる場所を作ったんです。ただ、アプリ版は想定していたよりも数字が伸びなかった。その改修などを進めていくタイミングで、コロナ渦に突入したんです。緊急事態宣言で非接触という言葉が浸透し始めた頃に、アバターの立ち飲みバーがテレビや新聞で取り上げられたことによって、アプリ自体の流入も増えました。
Q:数字で伸び悩んでいたということでしたが、非対面・非接触でのニーズと、AvaTalkがマッチングしたんですね。
高崎さん:様々なタイミングが重なりましたね。以前から中野のAVASTANDの様子をご存知であったワコールの方から連絡があり、その流れで昨年10月にワコール様のパルレ(※1)が導入されることになりました。そこから様々な企業や自治体からお問い合わせを多くいただくようになり、現在は実験なども含めると20プロジェクトほど進行しています。
(※1)ワコールのアバター接客パルレ
Q: 最初の構想から、アバター接客にたどり着くまでの流れが非常に面白かったです。時代のニーズに合うように改良を重ねていた点も印象的でした。次回は、アバター接客のデザインやニーズを深堀してお伺いできればと思います。本日はお話いただき、ありがとうございました!
後編では、以下のテーマからアバター接客のデザインやニーズを深堀してお伺いしていきます。
・アバターのデザインはどうあるべき?
・アバター接客のニーズが高まる業界やサービスとは
・HEROES、今後のビジョン
後編もぜひ、ご覧ください!
また、2021年2月に「アバター接客の体験」についてのセミナーを行いました。HEROES様のAvaTalkを活用されているワコールパルレのサービスについての話になります。こちらもぜひご覧くださいませ。