土地にお金をつぎ込んだほうがいいという話
セール品やアウトレット品など、新品でも安く買えたり、フリマアプリやオークションサイト、リサイクルショップなどで中古品になると驚くほど安く買えたりしますよね。お金は大事に使いたいものです。
そして、お金を大事に使うということでは民間企業は常に収益を上げないといけないという宿命を背負っていますので、非常にシビアにお金を使います。
それを踏まえて、お金をできるだけ土地につぎ込んだほうがいい、という話をします。
基本的に土地はセールにならない
高級宝飾品のブルガリや高級時計のパテックフィリップは、とても値段が高いものですが一切のセールをしません。それでもたくさんの(お金持ちな)人が欲しいと言います。セールになったら買おう、ということではなく、注文をしたり購入順の列に並んだり(ラーメン屋さんではないので物理的に並ぶわけではないですが)するわけです。中古、つまり最初の所有者が手放したあとのそれも、そもそもの需要量に対し供給量が少ないため、相応の価値をもって相応の価格で取引されます。むしろ定価よりも高く取引されることも珍しくありません。このようなものに対し、セールして売り切ろうとするような動機は生まれませんね。
住むのに安全で便利で快適な土地も同じようなものだと思います。需要に対し供給は多くありませんから、必然的に良い場所であれば先着順になりますし、お値段も高いでしょう。しかし、状況が変わらなければ待ってても安くなることはありませんし、もし現所有者が売りに出せば相応の値段、もしかしたら買ったときよりも高い値段で売れることでしょう。そのような土地を値下げしてまで売ろうということは、例外はあるでしょうがほとんど出会うことはありません。
ユニクロやGAPなどの洋服は、もともと安いのに季節ごとにセールをします。うそみたいなお値段で買えてうれしいですが、これは定価での供給が需要を上回っている状態です。1000円のものを1000円出して買ってもいいよ、という人が全員買っても、まだ品物があるので800円なら買ってもいいよという人にも買ってもらうためにセールをするのです。
やや安全上のリスクがあったり、不便だったり環境が悪かったりする土地は、近隣のより条件の良い土地と比べて値段を下げないと売れません。ところが土地の場合にはセールがあるかと言うと、ほとんどの場合セールにはなりません。それはなぜかと言うと、土地は一点ものなので売り出しの時点で適正な価格がついているからです。最初から、近隣のもうちょっといい土地よりも低い値段が付いてるんですね。
つまり、セールにはならないのです。ですから、お得になるまで待つという選択肢はありません。その土地が良いと思ったらその値段で買うしかないのです。
お得に買う方法は無いのか
では、売り出し中のどの土地の値段もその土地の価値に見合っているとして、お得に買う方法は無いのかというと、ゼロではありません。もちろん「売り出し中の土地の持ち主に近づいて友達になって、友達価格にしてもらう」とか「その土地の悪評をこっそり広めて値下がりするのを待つ」などのような非現実的な方法ではなくです。
お得であるということを「一般的に取引される想定価格よりも、その土地が安く買えた」と定義します。例えばひとまとまりの10区画の土地が売り出されていて、9区画までは5千万円だけど10区画目だけが4千万円だとしたら、それはお得だと言えるでしょう。では、そういう土地を買うにはどういう条件が必要でしょうか。
「自分(と家族)だけが特異的な選好基準を持っているので、一般的には避けられるような条件について気にならないか、むしろ好意的である」
土地をお得に買う条件は、ほとんどこれしかないです。
どういうことかと言うと、極端な例で言えば、職業が住職なので墓地のすぐ隣の土地でも気にならないよ、であるとか、音楽家なので家は完全防音で建てるから騒音著しい工場に隣接してても大丈夫、とかですね。これらは極端にしても、子供が大好きなので幼稚園の目の前の土地がむしろ好ましい、であるとか、地下ガレージを作るのが夢だったので斜面の土地がちょうどいい、とか、いろいろあると思います。
みんながこのくらいの値段なら出してもいいという想定が土地の価格になるわけですから、みんな(想定されるのは普通の考え、嗜好、生活、行動を持つ一般的な人たち)が好ましくないなと思うような条件の土地は必然的に値段が低くなります。その、好ましくないなという条件が気にならないかまたは好ましいと思うようであれば、あなたはお得に土地を買うことができます。
誰しも同じ考えを持っているわけではありません。ほかの一般的な人と比較して、自分がどのような特異な趣味嗜好考え方生活スタイルを持っているかをよく検討すれば、自分ならではのお得な土地に出会える(ときがある、土地は一期一会なので必ずあるとは言えませんが、そういう土地に当たる可能性が増える)と思います。
土地に全力でお金をつぎ込むべき理由
総予算が5千万円だとします。さすがに土地に4千万円で建物に1千万円という比率にはできませんが、それでもできるだけ土地にお金をかけたほうがいいです。なぜなら、土地は減価償却しませんが建物はそれをするからです。土地に耐用年数はありませんので(権利ですからね)、いつまで経っても悪くなったり目減りしたり古ぼけたりはしません。つまり、そこにかけたお金は住んでる限りずーっと資産であり続けるわけです。
と言って、これは財テクの話ではないので、資産をたくさん持っていたほうがいいということではありません。土地は、何度も言うようですが、掘り出し物はなくて、買った値段がその土地の価値と言っていいです。状況が変わらなければ、その価値は将来にわたり一定です。しかし建物は、買った時がいちばん高くて、だんだん値段(価値)が下がるものなのです。ならば、予算の中でできるだけ土地にお金をかけたほうがいいですね。
つまりこういうことになるかと思います。
①総予算の中でミニマムに家を建てる金額を出す
②残りで目いっぱいの金額の土地を探す
③ギリギリいっぱいの土地があればそれにする、残りの金額で足りなかった場合には(a)家を建てる金額を減らす(b)予算を無理してでも増やす
という感じがいいです。最終的には③の(b)が一番いいと思います。
家はミニマムで?と民間企業の考え方を導入すれば
ローコスト住宅は最後の選択肢になります。家もできるだけお金をかけたほうがいいんです。大手住宅メーカーはさすがにいいものを作っています。中堅メーカーでも負けずとがんばっているところもありますし、地元工務店でも優秀なところがあります。施工をどこに任せるかという話でまた詳しくやります。
さて土地にお金をできるだけかけたい、されど建物にもできるだけお金をかけたい、となると、総予算というものがありますから両立はできないことになります。
そこで、土地を買い建物を建てることを、民間企業の事業だと考えます。
民間企業というのはざっくり
・売るものを用意する部門
・売り上げを立てる部門
・会社を継続させるために考える部門
の三つで成り立っています。
ではあなたが土地を買い建物を建てる時に、それぞれ何に当たるのでしょうか?
あなたが社長を務める新居株式会社は、あなたに「住まう」という価値を販売します。顧客のあなたはその代金として毎月(とボーナス月)に支払いをします。顧客としてのあなたは新居株式会社に定額の支払いを約束しているため、社長としてのあなたはできるだけ目減りしない(うまくすればより大きな)価値をあなた自身に提供し続けないといけません。社長のあなたの最も大きな責任は新居株式会社が永続的に続く(ゴーイングコンサーン)ことです。倒産は許されません。価値が思いのほか上がったら、売却はあるかもしれませんが。
というわけで、会社を経営するんだと考えると、一つの重要な点が見えてきます。会社とは設立がゴールではなく、何かの目的があって設立した会社がそのゴールに向かって発展的に継続するということです。新居株式会社とは、家を建てたところがゴールではないということです。
そして多くの会社がそうであるように、経営とは最初にあるお金(資本金と創業時の借入金)だけでするものではありません。売り上げがあり、利益が出ればそれをまた会社の設備などに投資していくのが普通です。あのamazonも、Appleも、最初はガレージから始まりました。最初から今のamazonやAppleの規模でスタートしたわけではありません。新居株式会社も、ガレージとは言いませんが、ミニマムな構成でスタートすればいいのです。
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