【43】日本酒はどうして同じ形のびんが多いのか【SDGs】
先日、とある居酒屋に行ったときの出来事。
日本酒とおつまみを注文し、何気なく店内を見渡してふと思ったんです。
一升びんがずらっと棚に並んでいる姿ほど美しくて奥深いものはないと。
同じ形状のびんが整然と並んでいる統一感。
秩序を保ちながらも、ラベルにはお酒への想いがたくさん込められていて、実は十人十色。・・・着物みたい!
酔っていないと絶対にこんなこと思い浮かびませんが・・・
?
そもそも、日本酒や焼酎ってどうして同じ形のびんが多いのだろう・・・?
ワインやウイスキーなどの洋酒は色んな形があるのに。
今回は、そんなふと舞い降りた疑問「一升びん」についてお話します。
日本酒の容器の歴史
通い徳利
庶民も日常的にお酒を飲むようになった江戸時代。
当時、日本酒は大きな樽に入れて酒屋に卸していました。
お金持ちは樽ごと買えますが、貧しい庶民はその日の分だけしか買えません。。。
酒屋はそんな貧しい庶民のために徳利を貸し出し、そこにお酒を入れて販売していました。このことから『通い徳利』や『貧乏徳利』と呼ばれていたそうです。
一升びんの登場
一升びん入りの日本酒が初めて登場したのは、1901年(明治34年)のこと。この頃はまだガラス製ではなく陶器製のびんを使用していました。
当時の日本は産業革命の真っただ中。インフラが整い、さまざまなものが機械化され急速な近代化を成し遂げた激動の時代。
ガラス製の一升びんもまた機械化によって大量生産に成功。瞬く間に拡がりを見せます。
そして1965年(昭和40年)には、日本酒のほとんどが一升びんで流通するようになりました。
時代は移り変わり、現在は技術の進歩やライフスタイルの変化などにより、日本酒の容器は一升びんを抜いて半数近くを紙パックが占めています。
びんの魅力
前述の通り、昨今の日本酒の容器の普及率は一升びんは紙パックに追い抜かれてしまいましたが、一升びんには様々な利点があります。
おいしさを長時間保ってくれる
ガラスびんは密閉性が高く、容器のにおいや味がお酒に移る心配がありません。そのためお酒本来の味わいをいつでもどこでも楽しむことができます。
ちなみに一升びんの9割は「茶色」と「緑」。
この色にも、れっきとした理由があります。
日本酒が劣化する原因のひとつ「光」。
茶色や緑のびんには、紫外線の吸収を高める鉄分が含まれており、その効果を利用して光からお酒を守っています。
「おいしいお酒を飲んでほしい!」
そんな思いが茶色や緑のびんには込められているのです。
画期的な『丸正びん』
もし、お手元に一升びんがあったらびんの下部をご覧ください。こんなマークがついていませんか?
このマークが付いているびんを「丸正びん(まるしょうびん)」といいます。これは国が定める計量法の基準に適合した「特殊容器」の証で、一升びん以外にもビールびんや牛乳びんにも丸正の刻印があります。
丸正びんは日本工業規格(JIS)の規定のもと、形や材質など細かな基準が定められています。特殊容器の使用が認められているお酒は、容量を一本一本計らなくても一定の高さまで液体を充填すると、1.8Lになるよう設計されています。
環境にやさしい一升びん
自治体によって異なるかもしれませんが、びんは資源ごみの日に出しますよね。燃えるゴミなどは、ゴミ処理場で処理されますが、一升びんは洗ってリユース(再利用)します。
※私の住む福岡では、一升びんやビールびんは市が回収する資源ごみの日ではなく、買った先の酒販店、地域の集団回収、またはクリーンセンターに持ち込むよう義務付けられています。
収集された一升びんは、「びん商」という業者に引き取られ、洗浄します。きれいになったびんは、びん問屋に納められ、酒蔵が買い取り、販売、消費、そしてびんは回収され・・・というサイクルを繰り返しています。
一升びんは、全国各地を旅しつづけているのです。
このように一升びんは効率、品質、環境、さまざまな面でメリットがあります。
最後に
家飲みのスタンダードとなりつつあるRTD飲料。
それに比べびんは「重い」「割れやすい」「捨てるのが手間」など、敷居の高い容器(=飲み物)になっていることは認めざるを得ませんが、この記事を読んで、少しでもびんへの理解や愛着を持っていただけると幸いです。
ありがとうございました!