【04 青山】 死ぬまでひとり飯
恭子の彼氏とサウナで
ばったりあった日からも
恭子はいつも通りだった。
土曜と日曜のこの時間は、
彼氏よりも俺を
優先してくれているらしい。
間違っているよ、なんて言わないさ。
お湯を沸かし、酢を少々。
卵をその中へ落とす。
まだ布団にくるまったままの
可愛い小悪魔が目を醒さないよう
ゆったりとした時間が流れる。
まだだよ。
お気に入りのKitchenAidへ
入れておいたマフィンが
香ばしい匂いを放つ。
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バター溶かし、
黄身とゲランドの塩を混ぜると、
最高のソースができる。
いい出来だ。
シンプルな料理はいい。
めんどくさい調味料が不要だ。
人間関係もそう。
少しの素材と少しの工夫、
それだけで幸せがあることを
教えてくれる。
焼いたベーコンを
焼けたマフィンの上におき、
茹でた卵を
氷水で冷ましてのせる。
先ほど作ったソースを載せると、
それは出来上がる。
そして、陽が沈む前に、
またねって言って
この家を出ていくけど。
きっと
またね、はもう来ないだろう。
今日は特別に、
恭子の嫌いなトマトを添えて、
俺は家を後にした。
閉じたドアの向こうで、
彼女が起きてくる音に
後ろ髪を引かれながら。
うるさい太陽が
独りで寂しそうに見えた。
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