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激熱ビート

Hi-Fi RUSHをクリアする。
どんなゲームでもそうだが、操作に慣れるまでは大概つまらないものだ。なので個人的に慣れてからの楽しさが重要だと思っている。
本作はそういう意味で非常によくできたゲームだと感じた。はじめはビートに合わせて攻撃コマンドを入力しないといけない仕様に戸惑ったが、いざ慣れてくると身体が自然とビートと調和するようになっており、直感だけで動かせるようになっている。これが楽しく、ジャムコンボ(仲間との連携攻撃)を組み合わせることで後述の熱い展開に繋がってくるのも見事だ。
これはけっこうな発明なのではないかと思った。音ゲー自体はパラッパラッパーやスペースチャンネル5等々、昔から存在するが、スラッシュアクションと組み合わせるのは恐らく初めての試みなのではないか。少なくともここまでの規模で評価されたのは俺の知っている限りこれだけだ。

あとはやはりキャラクターが良い。まず不快な人間が存在しないところがとても好感触で、敵であっても愛嬌があるのでイラッとしないあたり胃に優しい。
軽妙で無駄な自信に溢れている主人公チャイに、チャイのツッコミ役を務めるハッカーのペパーミントに、上記の2人を仲裁する剛腕のマカロンに、謹厳実直故に彼らのギャグをあまり解せないために常に戸惑っているコルシカ(めっちゃかっこいい人)に、デジタル猫(?)の愛くるしい808に、言わなくて良いことを言うために口さがなくなっているロボットのCNMN(ロボット故に表情がないため、状況に応じていちいち水性ペンで書き換えている)と、俺も混ぜてほしいと言うことすら憚られる見事なチームである。
主人公が軽妙なため、過度にシリアスになりすぎず、どこまでも明るく、「俺に任せろ!」の一言で状況を引っ張っていく様にこいつがリーダーであることの説得力が感じられた。
味方陣が特に良い。名作の条件は味方が全員好きになれることだという基準を持っているが、このゲームの味方は全員好きになれるし、とても愛せる。
それに貢献しているのが、小気味よいダイアローグと味方なしでは成り立たない戦闘だ。全員が全員個性的で、会話もクスッと笑えてしまうようなものが多い。ステージ設計味方を駆使しないとクリア不可能な仕様になっており、戦闘も同様にそれぞれのスキルを用いなければならない。
ゲームをやっているとよく「お前も手伝えや!」となることが多い。ゲームはインタラクティブな性質を持つものなのでプレイヤーが全部こなさないといけないのは分かっているが、それでもさすがに没入感を削ぐレベルの仲間の怠けぶりはいただけない。
その点本作は仲間との協力が必要不可欠だ。
こうしたディテールを積み重ねていくことで彼らがチームであることの実感を如実に得られ、ラストの激アツな展開に繋がっていくのである。
俺は終盤、「みんなでラスボスを倒すぜ!」と敵地に殴り込み、The Joy Formidable(ザ・ジョイ・フォーミダブル)の『Whirring』がバックに流れる中、スモークを払い除けてアルマゲドン歩き(映画アルマゲドンに代表される、みんなで横並びになってスローモーションで歩く演出のこと。よくチーム感を醸成するために用いられる)をするあたりで最高にぶち上がってしまった。
俺は仲間仲間と軽薄に口にするコンテンツが嫌いだ。それはただセリフだけで仲間と口にするだけで、その実感が伴わないことが多いからだ。
しかしこのゲームに関しては紛れもなく彼らは仲間であり、それが上記のシーンに象徴されている。
プレイ部分も大事だが、俺は何よりもここが刺さった。どこぞの身内で学芸会やってるだけの◯◯◯トにも見習って欲しいものである。

このゲームには細かいパロディや小ネタが盛り込まれているが、個人的にはサメの着ぐるみをきた主人公がステージ下から飛び上がって登場し、仁王立ちしたまま不動の姿勢を貫くマイケル・ジャクソンのパロディが面白かった。



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